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記事一覧

わたしは人形

わたしは人形

自分の人生を生きることは罪

自分の意思を持つことは咎

人の思うまま

振る舞うべき人形

わたしは人形

なりきれないガラクタ

出来損ないの人形は

ごみ箱へ

わたしは人形

魔法なんてない

わたしを作った人に

人形であれと

望まれたのだから

それ以外の在り方なんて

生き方なんて

許されない

許してと乞う声は届かない

生きたいという意思は貫けない

わたしは

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陶子

「気鬱ですな」

「は?」

最近娘の陶子の様子がおかしい。
ぼうっとして空ばかり見て、声をかけても上の空。
焦点の合わない虚ろな目で一日中じっとしている。
以前はよく弁の立つ、快活な娘だったというのに。

私は何かの病だろうかと思い、陶子を医者に診せた。その間も、何を言うでもなくただ私がするのに大人しく陶子は付いてきた。ふらふらと覚束ない足取りで。

「気鬱、といいますと?」

医者の発言が飲み

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ゆみちゃん

※死についての描写があるので苦手な方はご注意下さい。

ゆみちゃんはいらない子でした。

「どうしてこんなこともできないの」

「あなたが出来損ないだから、親が可哀想」

ゆみちゃんは、とても悲しみました。

がんばっても、がんばっても、

大人たちの言ういい子にはなれませんでした。

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白いくまさん

ある森の中に、白いくまさんがありました。

「やーい、しろくま!北極に帰れ!」

「違うよ、ぼくは、森のくまだよ」

「じゃあどうしてそんなにまっしろけなんだー!おかしいじゃないか!」

「ぼくは、生まれつきしろいのだよ。でも、それ以外は森のくまと、なんら変わりないよ」

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りんごの木さんとなしの木さん

あるところに、りんごの木さんと
なしの木さんが、ありました。

りんごの木さんは、
なしの木さんが、
きらいでした。

だって、なしの木さんは
わるいやつだって
ずっときかされてきたんですもの。

なしの木さんも、
りんごの木さんが、
きらいでした。

だって、りんごの木さんは
わるいやつだって
ずっときかされてきたんですもの。

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