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【着物コラム】着物を通して考えるフェミニズムの事

こんにちは、着物コーディネーターさとです。

先日、とても久しぶりに着物のスタイリングのご依頼をいただき、
その際に伺ったお話で色々な事を考えました。
(今月中に公開予定だそうなので、こちらでもお知らせしたいと思います)

さてさて、今日は表題にフェミニズムという単語を使いましたが、
私自身、自分がフェミニストだと思ったことはありません。
しかし、着物を実際に着て過ごしていて、考える機会は多かったです。
今日は私が着物を通して考え、これからも考え続けなければならないと感じているフェミニズムの事を書きたいと思います。


着物は、男性と女性の形式がまったく違います。
つまり、例外なく性別の表現があると言い換える事ができますよね。
(コレは洋服でも同じことが言えると思いますが…)

実際、男性の着物は着付けも比較的簡素で、かつ動き易いですし、
女性の着物は帯や裾の形状の問題で動きづらい、と感じることが多いです。
これが着物の「美しさ」に結びついている部分も多々あります。

着物の美しさの表現のコードとして
「男性は男性らしく」
「女性は女性らしく」

という概念が存在する事を、私は否定できません。
洋服と比較すれば男女の形式の差こそ少ないかもしれませんが、
洋服と比較して「男性っぽい」着こなしを女性がする事、
また、その逆も許容されているとは言い難いです。

この概念をポジティブに捉えている人も勿論多いです。
「着物は着るだけでお淑やかになれる」等、まさにそれですよね。

「男性は男性らしく」「女性は女性らしく」の内のみで発展し、変容することなく続いている事が、
「伝統の継承」と深く結び付いている側面もありますよね。

男女差の表現のコードは、歌舞伎や能とも類似していると私は感じます。
それは衣服やヘアメイクだけでなく、身体表現にも使われていますよね。
男性である役者さんが女性の役を演じたりするので、当たり前だとも思いますが、
着物を着用した際の「動きの制限」と共通する部分が多いと思います。

これらの「男性は男性らしく」「女性は女性らしく」の枠組みって、
着物が発展、発達、浸透した時代の社会の枠組みと同じだったと私は思うんです。

着物には、洋服で言う「コルセット廃止運動」のような、大規模なファッションの変革は起こりませんでしたしね。
それが結果として男女の形式の差や分断を生んでいるだけで、
何かが悪かったとか、誰かが悪いとか、そういう話では全く無いと私は思っています。

これはあくまで私の個人的な感覚ですが、
日本って男女の法的な平等は、ある程度は法整備が進んだものの、
本当の意味でのフェミニズムってまだまだ浸透していないんだと思います。
男女の「役割分担」の平等については、まだまだ発展途上ですしね。

だから、欧米につられて「メンズライク」な洋服は市民権を得ているけど、
着物に関してはおいてけぼりです。
着物を着ていると、ただ着ているだけで「女性の役割」を求められる機会が多い事も、
このあたりと関連していると思います。

これは少し前に書いて大変反響の大きかったコラムなのですが、
着物を着ているとホントに多いんですよ、「おしとやかな女性」の役割を求められること。
でも、男性の皆さんも、私と似たご経験をされているかもしれないですね。

私はこういった「着物の男女差」を綺麗に均等にする事は、
現段階では大変困難な事だと感じていますし、それが正解とは言えないと思っています。
それは着物の世界の外側でも発展途上なのに、着物世界に落とし込まれるのが難しいだろう、という憶測と、
前述したように、伝統的な表現のコードと通じる点がとても多いという事
などが理由です。

でも、女性の着物ってホントに花柄が多いんですよ。
逆に、男性の着物はシックで、悪く言えば地味な物が多い。
これに不自由さや選択肢の狭さを感じている人、結構多いんじゃないかな?
と私は感じています。
単に市場が狭いから選択肢も狭くなりがちなのですが、
それ以上に、「これはこう在るべき」という概念がずっと続いていたので、
その概念の外の事を、製造・販売する側が気にも留めていない可能性も有ると思います。
現代の和服の文化=礼装の文化なので、形式が重要だから、余計にですね。

それでも、現代の着物ブランドで
「選択肢の少なさ」の改善に挑戦しているな、と感じるブランドも存在しています。
(フェミニズムと一緒くたに語られると先方に迷惑かもしれないので、あえてここではご紹介しません。)


私は着物が好きです。
それはシンプルに美しいと思うから、
アジア人の体型や雰囲気にぴったりだと思うからです。

それは「女性は女性らしく」の概念と重なる部分も勿論あるのですが、
これからの社会の動きには添わないな、と常々感じています。
変容しないのも着物の魅力なのかもしれません。
けれど、そのまま変容せずに捨て置かれてしまう可能性もありますよね。

本当に変わらないままでいいのでしょうか?
私は、とてもそうは思えないんです。

とは言え、私の考えもきっとこれから変容していきますし、
色々な考え方があり、色々な意見があります。
でも、答えを今すぐ出すことが最重要なのではなく、
繰り返し考える事が一番大切なのだと考えています。