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【着物コラム】男性浴衣を着用して感じた「和服の身体表現」と社会の関係性


こんにちは、宮寺理美です。

先日、中古品で超いい感じのストライプの浴衣を発見し、
よく見ないで購入したら、なんと男性物の浴衣でした。笑

幸いな事にサイズが夫にピッタリだったのですが
あんまりにもいい感じのストライプで一度着用してみたくなり、
どうせ外出する予定もないし!せっかくだし!
と自分の中で色々な理由をつけて、
「男性の浴衣を、女性の私が女性のままで着用する」
という事を実践してみました。


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(写真が反転しているので、現実世界とは襟合わせが逆です)

一度、胸を潰して着用してみたのですが、
なんとも中途半端な感じになってしまったので
あえて胸を潰さないで「女よ」感を出してみました。
もっとコスプレっぽくなるかなぁと思っていたのですが、
意外に「メンズファッションです!」と言い切ってしまえば
まぁまぁ通じるかな、という雰囲気にまとめられたと思います。
自画自賛になっちゃうけど、結構可愛いと思いました。笑


着てみた感想、メリット・デメリット


Twitterアカウントには既に投稿したのですが、着てみた感想をザックリまとめてみます。
あくまで私が着た感じの感想ですが…

【メリット】
・着付けが簡単
・帯で背中を覆われないから涼しい、快適
・おはしょりがないので下半身の開放感に繋がるのか、身のこなしがラク
・着付けが短時間で済む

【デメリット】
・女性の和服は衣紋を抜いて着用するので、首の周りが少々邪魔に感じる
・骨格の都合上、どうしても裾の形がキマらない。台形になってしまう
・身幅の問題で女性が着るとどうしても下半身が不恰好になる
・外出していないの憶測ですが、袖の形状の都合でカバン選びに悩みそう。
・男性浴衣に合う履物って何だろう…?と悩みそう。

項目の数がデメリットの方が多くなっちゃいましたが、
体感としては凄く楽!!でした


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男性浴衣を着用して感じた「和服の身体表現」と社会の関係性


少し前に、
「フェミニズム」という観点で書いた記事の中でも少し触れましたが、
和服の表現のコードの中に「男は男らしく」「女は女らしく」
というコードがある(と私は思っている)んですね。

性別が違えば体の形も違うので、
着付けの形式や服の形が違うのは当たり前でもあり、性別の表現と被る部分も勿論有りますよね。

実際に男性の浴衣を着用してみて、
和服の形状って「男性らしい身のこなし」「女性らしい身のこなし」とセットになっているなぁ、と改めて感じた次第です。



これはあくまで私の自説ですが、
長い長い歴史の中で、ファッションは、
身分を明らかにする=自分がどんな人なのか明らかにする
という役割も担っていたと思います。
事実、皇帝は皇帝の服を着て、庶民は庶民の服を着ていましたしね。

私は、礼装の着物のルールにも「社会的な立場を明確にする」という役割があると思います。
独身女性は振袖、既婚女性は留袖、などなど、
自分の社会的な立場で着物を選ぶという側面がまさにそれです。

着物の原型が定まった江戸時代の背景にあったのは、封建的な社会制度です。
明治時代以降は洋服が流入し、
時代が進むにつれて庶民にも洋服が浸透していったので、
着物のルールには、近代の社会制度は基本的に反映されていないんですよね。
第二次世界大戦後、着物は礼装としてマーケティングされていたので、
全く反映されていないのではなく、グラデーションの部分はあるけれど、
現代社会に適しているとは言い難いな、と私は感じます。


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現代社会でも服で自分が何者であるかを表明する事はよくある事ですよね。
ビジネスの場ではスーツを着ますし、
前述したように、結婚式では自分の社会的な立場に合った着物を着ます。
でもそれって、各個人で決めているというよりは、
公共性や社会性という要素で選ぶ事が多いですよね。

男性の浴衣を、女性の身体・女性のマインドのまま着てみた時に感じた率直な感想は、
「こんだけ着付けラクならこっちの方がいいわ!」でした。笑
それが公共的に、また社会的に容認されるのか?というのはまた別の問題ですよね。
でも、こんな選択肢があってもいいんじゃないかな?
と私は思いました。

あなたは、自分で着る服、社会が決めた服のままでいいですか?
私はちょっとつまらないので、たまに遊びでこんな服も着てみようと思います。