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ヤドカリモドキ

本を読むと雄弁になる。人と話すと知らないリズムを刻む。相手の捉え方が表現が表情が語り方が私に乗り移る。ある時、何人ものそれが同時に乗り移って変な自分ができた。話せば変に抑揚がついて言葉の選出に一貫性がなく歪んでいて話の基盤が揺れているせいでまとまりのない自分だった。結構頻繁にあるから困る。でもその時の自分は自分でも明らかに変なので立て直しにかかる。
「誰の個性を借りよう。」その時の私が本物の私なんだろうと思う。私はたぶんヤドカリ。それも大層飽きっぽくて趣味の悪いヤドカリ。個性かの如く宿をひけらかす愚かで弱い生き物。


実際のヤドカリというものは海水のあるところであればどんな環境にも適応して生きていける強い生き物だそうです。
食べるものを選ばず「海の掃除屋」と呼ばれるほどなんでも食べる。
成長にあわせ小さくなった殻を捨て、奪い取ってでも新しい家を手に入れようとする弱肉強食の世界の生き物。
こう考えると、私のようなものをヤドカリと表現するのはなんともヤドカリさんに失礼なものだと少し笑みがこぼれます。
いつか安心の殻を脱ぎ捨てられるほどの自我を手に入れ、競争社会に物怖じせず強く生きられるようになりたいです。それでもきっと、私はヤドカリモドキかもしれませんが。
それでもいいなと、それもいいなと思います。


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