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詩人は何を思うのか/港の人

北村太郎 港の人

詩人に会いたいと思った。
言葉と共に生きる人に。
詩で命を表現する人に。

現在詩を愛読書にするために。

「荒地」のことも北村太郎のことも、ねじめ正一の小説「荒地の恋」で知った。内容的には、田村隆一の4番目の妻と北村太郎との恋愛関係を巡って展開していく。昭和の詩人やその背景が上手く書かれている。テレビドラマでは北沢太郎という名前で豊川悦司が好演をしていた。「荒地」の同人には、田村隆一や鮎川信夫など名前だけは知っているが作品を知らない人がいた。

現代美術や現代音楽に比べて現代詩は私には理解が難しく、知りたいと思いながら手付かずのままだった。耳で感じることや目で感じることに比べて、「言葉で感じる」ことは意味があるだけに難しい。小説『荒地の恋」をきっかけに戦前から戦後にかけての詩人のことを知りたいと思い北村太郎晩年の詩集「港の人」を買った。北村太郎には多くの詩集が発刊されているが、比較的手に入りやすいのと、タイトルで選んだ。また「港の人」は、発刊の前年に不治の病に罹り、自らの死を意識した詩作であり、死を意識する年齢に近づいた私には比較的理解しやすいのではないのかと思った。

1~33までの番号が振られた作品は、小難しい言い回しがなく、現代詩初心者の私にも読みやすい。しかし分かりやすいわけではない。作品の中に入って行くには少しの緊張感と集中力がいる。

3度ほど読み返していくと徐々に徐々に言葉が心に沁み込んでくる。詩作の背景も見えだす。詩人の心を感じ始める。遠く近くに死が顔を出す。透明で薄くもろいクリスタルの質感、磨かれた言葉。詩作を続けてきた人ならではの言葉の響き。

詩が面白く撚れていくが、瀟洒な感じがする。教訓めいた言葉はなく、北村太郎の日常から派生する〈もの〉や〈こと〉に反応した言葉が、想像力の翼にのって広がる。詩を感じるままに読む。読むままに感じる。これが詩を読むときに大切なことだと気づく。

後少し読み込めば、生涯の愛読書を手に入れられそうだ。そう思わせる「港の人」ははやり素晴らしい。
ところで「詩」とは何だろうと思ってします。詩を読みながら、詩とは何かを考える。これも北村太郎がくれた幸せな時間かもしれない。


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