アメリカ テキサス州ボカチカ村、スペースXの宇宙基地へ
ボカチカ村
テキサス州の片田舎。リオグランデ川を挟んで対岸はメキシコだ。かつてはメキシコ湾岸のリゾートビーチの喧騒とも無縁な、静かな村だった。そんなボカチカ村の住民に騒がしいニュースが届くようになったのはいつ頃からなのか。
2012年、スペースXの民間発射場の候補に挙げられた。
2014年、スペースXのロケット打ち上げ基地の建設場所に選ばれた。
2018年、大規模な工事が始まった。
ここからは一気呵成だ。イーロン・マスクのおしゃべりと同様、もう止められなくなった。
アメリカ南部テキサス州。上流のエルパソから河口まで、リオグランデ川がアメリカとメキシコの国境である。
海はメキシコ湾。
ボカチカ村は海沿い。
衛星画像は2024年11月21日。アメリカとメキシコの国境線を表示している。ズームイン。
ボカチカ村は右下。
地域のほとんどが海、潟、湖沼、運河の水系である。野生生物保護区、州立公園のエリアがある。水系の部分を見分けるためのデータ処理をしてみよう。
中央がボカチカ村。右のボカチカビーチの隣に発射場。ボカチカハイウェイが通っている。
ボカチカ村の変貌
ボカチカ村がどのように宇宙基地に変化させられてきたのか、過去の画像を見てみよう。
参考衛星画像は2010年12月10日。
50戸足らずの住居で構成された小さなコミュニティだった。
参考衛星画像は2016年2月3日。基地の建設地に選ばれた後。すでに村はずれが整地されている。
参考衛星画像は2018年12月22日。この年から工事が始まった。工事事務所や宿舎らしきものが建っている。
参考衛星画像は2021年6月16日。開発・製造用の建屋があらかた完成している。史上最大のロケット、スターシップの飛行実験は2019年から始まっていた。
この年イーロン・マスクは独自に、ボカチカ村、宇宙基地、周辺地域からなるスターベース都市構想を発表。
参考衛星画像は2022年3月18日。この年スペースXは、月や火星への飛行をめざすスターシップの打ち上げ許可をテキサス州で取得した。
一方、村の住民は、スペースXがコミュニティのあらゆるもの、住居、道路、ビーチ、保護区、州立公園などを自分たちの思うがままに使おうとしていると抗議している。
発射試験は爆発的燃焼をともなうので、住民には当局から避難が呼びかけられた。
確かに住民の言う通り、周囲はすべてスペースXによって埋め尽くされてしまった。これがスターベースの実態なのか。
参考衛星画像は2023年6月3日。
参考衛星画像は2024年6月12日。中央の建屋は開発・製造設備をまとめたものか。
おびただしい車の数、新しい住宅群、全部スペースX関係だろう。
スペースXの宇宙基地
スターベースを詳しく見ていこう。
作業の段階によって要員の数が変動するからそのための宿泊施設じゃないかな。
ここは実験・製造現場だろう。
コントロール・センターなどの管理棟かな。
ここはロケットの構造物組み立て関係だろう。
ロケット発射場
参考衛星画像は2024年6月12日。 発射場はビーチの隣。製造現場からロケットの構造物や組み立て品などを搬送するために、たびたびハイウェイが通行止めになる。住民が抗議している理由の一つだ。
かなり雑然としている。工事中の施設もあるのだろう。右下が発射台。
これがチョップスティックス・キャッチをやるアームだな。逆噴射しながら地上に降りてくるロケットをこのアームで空中キャッチする映像には驚いた。10月3日の初めての試験で成功した。ロケットを回収・再利用するためスペースXにとってはマストの成功だった。
スターシップ
スペースXが開発・製造している全長121m、史上最大のロケット。1段目のスーパーヘビー。2段目の宇宙船がスターシップ。ロケット全体でスターシップと呼んでいる。
チョップスティックス・キャッチで掴んだのはスーパーヘビーの部分。
スターシップはアルテミス計画で月面に人を運ぶ月着陸船となる。また、火星に移住者を運ぶ宇宙船と予定されている。
注記)
a.衛星画像は、欧州宇宙機関 ( European Space Agency : ESA ) が運用する COPERNICUS ブラウザからスクリーンショットしたものを使用しています。
b.地図画像・参考衛星画像は、ESRI が運用する World Imagery Wayback からスクリーンショットしたものを使用しています。