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旅の経験をより深く濃いものにしてくれる、一冊。

「旅に出たいな」と思い立つとまずは本屋に立ち寄る。

ガイドブックのコーナーで気の向くままに憧れの、また気になっていた街の本を手に取りめくりながら妄想旅をしてみる。そしてそのなかで現実的、具体的にとれそうな休みの日数と予算を思い浮かべながら次の旅先の候補を絞り込む。


そして日程や旅先が決まり、あれこれ必要なものをリストアップしながら準備を始めるのだが、「準備の時間」というものがとても好きだ。できるだけ荷物は軽く、でも必要なものはしっかり詰め込んで。その厳選されたものの中で、毎回欠かせないのは意外におもわれるかもしれないが本だ。いつもこの3冊をいれている。


まずは1冊の文庫本。これは移動中に気ままに読む本。旅をテーマにした本や、乗り換えの間に一話が完結する短編小説、またはずっと前から読みたかったのになかなか手が出せなかった本を入れることが多い。

そしてもちろんガイドブック。スマホでも情報収集はできるが、通信状況が良くない場所や、ネットであふれすぎる情報のなかから、必要な良質の情報を検索することは難しい。

そして旅の時間は限られているので、ネットサーフィンに時間を割くくらいなら、街をあるく時間に充てたほうがいいと思うからだ。

最後に鞄に入れるのが、「指さし会話帳」である。これはシリーズ化されていて、この本だけでも世界一周ができるくらい、アジアからヨーロッパ、北南米、南太平洋の島国までそろっている。

「でも、英語ができれば十分じゃない?」というつっこみをいれたい人も多いだろう。
もちろん英語が通じる国は多いし、とくに観光地では事足りるとも言える。
でもあえて、その土地の母国語を知り、話してみることに大きな意味があると思うのだ。


想像してみてほしい。
街で歩いているとき、突然通りがかりの外国人が話しかけてきたとしよう。

英語で話しかけられることも多いが、その人は、拙いながらも一生懸命、日本語で話しかけてくれた。あなたはその外国人に対してどんな印象をもつだろうか。例え流暢に話せなくても、一生懸命に話そうとするその熱心な姿に心打たれるのではないだろうか。

それはなぜだろう。

それは、懸命に現地の言葉を使ってコミュニケーションを図ろうとする姿から、彼らの日本や日本人に対する強い興味や関心を、そしてリスペクトする気持ちを自ずと感じることができるからだ。

だからこそ、私が海外の国を訪れたときは、英語ではなく敢えてその土地の言葉で現地の人に挨拶する。

すると彼らは心の底からリラックスした屈託ない笑顔で、私の呼びかけに応えてくれる。

心を開いてくれたなら、そのままその言葉で挨拶を交わし、自己紹介する。そうすると彼らはすっかり心を許して、その土地の言葉で(理解できないほどのナチュラルスピードで!)応えてくれる。

内容は分からないのだが、とにかく受け入れてもらえたことがとても嬉しい。

ここまで来たのなら、会話を続けたい。

そしてこの土地で暮らす彼らのことの日常や家族、好きなことなど、もっともっと知りたいと思うようになる。そのときのコミュニケーションを助けてくれるのが「指さし会話帳」である。

この本には、コミュニケーションや共感のきっかけを生んでくれる様々な仕掛けがある。

〇特徴その1 カラフルなイラストが豊富。現地語の表記とカタカナ読みがついている。

イラストがあると言語を介さないでも、お互いにイメージが共有でき共感しやすい。また現地語の表記が載っていて相手に見せると理解してもらいやすいし、音として読み方が分からなくてもカタカナ表記があるから、そのまま元気に声を出して読んで伝えることもできる。言葉を教えあうというのも交流のきっかけになる。

お互いに目で見て、音で伝えあって、五感をフル活用しながら体感的に楽しくコミュニケーションを図ることができるのだ。

〇特徴その2 旅の様々な場面で使えるもの、自己紹介に必要なことば、お互いの文化について話しやすい構成になっている!

旅の出発・到着の場面で必要な会話、初めましてから自己紹介までの挨拶、また街中でショッピングしたり美味しいものをもとめてレストランや食堂を訪れたときの会話、さらには会話が盛り上がったときなどその街の文化全般について話ができるように音楽、演劇、映画、美術館などについて尋ねてみたいときなど盛りだくさんだ。

不自然な場面設定が多い会話帳ではなく、まさにその状況でその言葉を使えるというのが面白い。


突然だが、私は元々人見知りするタイプだ。
日本語ですら、初めて会う人と話すことは苦手なほうである。

でも、旅の醍醐味はやはり人との出会いだとおもう。

それは旅の途中、現地の人から聞ける情報はガイドブックよりも新鮮で、そのとき偶然その人と出逢ったからこそ行先が変わってしまうというのもまた面白い。そして旅を終え、後にその旅を振り返るとき、どんな美しい景色や美味しい料理よりも鮮明に思い出すのは人との出会いであると、私はいつもおもう。

人との出会いや交流は、旅の経験をより一層印象深いものにしてくれるものだからだ。

勇気を出して話しかけてみよう、もうちょっとだけ会話を続けてみよう、という気持ちを後押ししてくれるのが「指さし会話帳」だ。

これは私にとっての旅の必須アイテムであり、共に旅を終えた「指さし会話帳」はボロボロの状態になる。

途中で濡らしてしまったり、食べこぼしがあったり。それもまた、出会った人や交した会話の思い出とともにいつまでも捨てることができないものだ。

#読書の秋2022 #指差し会話帳

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