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グルームヘイブン レビュー(感想)

アークライトから日本語版が発売されている協力型のダンジョン攻略型ボードゲーム、グルームヘイブン。このゲームは世界最大のボードゲームサイトBoardgamegeekで総合1位を獲得するなど、外部評価はかなり高いです。

しかし、いわゆる欧州で主流(だった)ボードゲームの仲間かというとそうではないので、「総合評価1位だから必ず面白いとは言えないんだろうな」、「かなりボリュームがあるみたいだし、最後までやり切れるかな」と購入に乗り気ではありませんでした。

休日ではなく平日に集まるというソリューションを思いついたおかげで、プレイ時間が確保できて、やりきれそうな気がしてきたこと。その話にのってくれる友人が近所にいたこと。この2つの後押しがあり購入に至りました。

結論から話すと、(留保つきではあるが)Geek1位も納得の面白さを持ってます。ただし、このゲームはザ・『ハクスラ』であるという点に留意が必要だと思います。

今日も戦闘から戦闘、準備はさんで、また戦闘

このゲームは2つで構成されてます。「戦闘」と「戦闘の準備」です。それ以外の要素はほぼ皆無です。つまり、RPGにNPCとの交渉や謎解き、目標に向かったシナリオを求めるプレイヤーはこの部分でかなりがっかりすると思います。まさにハクスラ世界を冒険するゲームなのです。

そして戦闘が『単純なのに奥深い』

さまざまなレビューで触れられていますが、戦闘システムを説明すると

10枚前後の手札から2枚を選択して同時公開、その後決められた手番順で、選んだカードを解決。使ったカードは、捨て札(また使える)か、廃棄(そのシナリオでは使えない)に分けられ、捨て札回収のためには捨て札から1枚廃棄。カードがなくなったら、そのキャラクターは脱落。

手番は2枚カードを選ぶだけという単純さなのに、十分に戦略性が出せているのは十分に練られたカードバランスとモンスターの配置(マップ)によるものでしょう。

傭兵団くらいの関係性が『ちょうどいい』

パーティを組んでダンジョンに挑む協力ゲーム(敵プレイヤーはおらず、敵側の処理はルールに従って行う形式)の部分も、協力できる度合いが強すぎず弱すぎずで絶妙なバランスだと感じました。

手札を選ぶ段階では、具体的な出そうとする手札の数値や内容を具体的には言えないことになっており、「早めに動くよ。」とか「もう選択肢ないから近くしか攻撃できないよ。」みたいな会話をして、協力できるような動きを探ります。これは協力要素を少し妨害して、これしろ、あれしろと言えなくなってます(あるいはこうしたらいい?ああしたらいい?と他人任せにできないとも言えます)。

しかし、一度手札を公開した後は、どのキャラクター(敵含む)がどの順番でどう動くのか公開されますので、そのラウンドの行動を話し合って最適化できます。ここでは、協力を最大化してるのですね。もちろん、もう出した手札を交換することはできませんから、大幅な変更はできませんが、カードに選択できる余地がまだあるため、ある程度の補正は可能です。とは言っても補正くらいしかできないので、ここですごいすり合わせに時間が取られるということはないでしょう。

手札を決定してから、行動を調整するので、今できることがわかりやすい。協力ゲームにありがちな、解ってるやつだけがゲームを動かしてしまい、他プレイヤーの「やってる感」がなくなってしまうことがあまりありません。手札までは自分で決定しているのでやりたいことが決まっている=それをもとに話し合いができるからでしょうね。

細かいところでは、プレイヤーそれぞれに大目的や小目的があり、戦闘である程度の課題をクリアする必要があるものもあります。これにより非合理的な行動を起こす人も出てきて、設定上の『ならず者の町の傭兵団』的な不協和を感じられるところがあるのも協力に対する距離の取り方として、個人的に好きなところです。

ここまでは、メインが戦闘でその戦闘が楽しいという良い部分を挙げてきましたが明らかにダメなところも以下に記します。それらが『あばたもえくぼ』で許せてしまうのかは楽しめるかの大きなポイントだと思います。

煩雑さ

敵の行動値(イニシアチブ)と味方の値を比較してプレイ順を決めることや、それぞれのモンスターの行動の参照、HP管理等で、戦闘はかなりの煩雑な処理が必要となります。これらは外部アプリを導入することで手間を減らすことができます。しかし、ボードゲーム本体としての評価とすれば、この部分でかなり点数を差っ引くことになるでしょう。

helper(グルームヘイブンヘルパー)の助けを借りてのプレイであるため、特に戦闘に関しては元のゲームよりかなり快適にプレイしてしまっています。そのため、先に書いた高評価もアプリを使ったテンポの良さを加味したものだということは留め置かないといけません。

モンスターの移動判定の飲み込みにくさ

モンスターの移動規則は必ずしも直感的に動かせばよいものばかりではないため、ルールを把握して判定する人がしっかりしていないと「なんでこうなるの?」「こうではないの?」の裁定相談でゲームのテンポが著しく悪くなってしまうでしょう。

個人的にはモンスターの動き方のルールは遊ぶ上で分かりやすいルールですが、他の人のレビューを見ると難しいとよく書かれているのをみます。これはどのモンスターも非常に頭よく行動するため、逆に飲み込みづらいのだと思います。彼らはほとんどの罠を自分で踏みません!

結論

戦闘がゲームの中心で戦闘が楽しい、グルームヘイブンはこれに尽きると思います。戦闘の楽しさのためにチームプレイや成長要素、個性的なキャラクターが用意されていて、歯応えのあるシナリオがいつでもプレイヤーたちを迎えてくれます。同卓のプレイヤーの1人は「フロストヘイブンの日本語版が出たら買おうね」と、グルームヘイブンがまだ中盤なのに言っています。この遊び場の少ないゲームで、それを言わせるというのはいかに『戦闘』という推しの要素が面白いのかを物語っていると思います。

最初にも書いた通り、Geek1位も納得です。ここまで丁寧で物量のあるゲームを成立させたデザイナーに敬意を表したいと思います。また、日本語版を出してくれたアークライトにも感謝をしつつ、次のフロストヘイブンもお願いしたいと思います。

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