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『フォビア』3巻

元々ゴトウユキコが好きで、やっぱりこのひと漫画うまいな、うまいちゅうか「心に刺さる」漫画の描きかたが出来る人だなぁと。
特にやっぱ表情の描きかたとそれを挟み込むタイミングが抜群ですね。
しかも、あからさまに「おかしくなった後」のいわゆるホラー的ウギャーなシーンじゃなく、「おかしくなってきている」という段階の「人間の顔」の挟み込み方が絶妙。それは恐怖症ホラーというこの題材にもピッタリだしいい人選だったんだなぁと改めて。

原作の人はよく知らなかったんですけど、基本はギャグの人だと知って「ああなるほど!」と。
ホラーとギャグが凄い近い所にあるのはもう当たり前な話ですけど、その両方を扱える人がやっぱり自分の中で一番好きな漫画家(いがらしみきおとか楳図かずおとか)なので。
視点を変えれば滑稽にも見える人間心理の追い詰められ方と、それが「枠をはみ出してしまう瞬間」に特化した描き方は確かにギャグ漫画家さんのそれだと思いました。
ただホラー特化の人ではないので、なんちゅうかいわゆる「仕掛け」というか「ギミック」というか、意外なオチとか展開みたいな「わっ!」というアタックを求めるとちと食い足りないと感じるかも。
その代わりにしっかり人間ドラマを描こうという漫画なわけで。

それが一番いい形で完成されてるのが【死】のエピソードだと思いました。
特に最後のオチ。
ホラー的な文脈じゃなく、人間ドラマの部分から持ってこられた「意外なオチ」は、ちょっと虚をつかれてグッと来てしまった。
キャラクターを役割重視で駒っぽく扱う事が多いホラーではたぶん辿り着けない展開で、このエピソードだけでもこの布陣でこの漫画が作られた価値があったんじゃないかと思ってしまうくらい、それくらいいいオチだと思いました。
ちゃんと登場人物を「人間」として描いてるからこその表現はメチャクチャ良かったです。

あと表紙の絵も凄くいいと思ったんだけど、これ【死】の主人公だよね?
あのホームのシーンの「その瞬間」だと思うんだけど、すげえいい表情。
もっとホラーを打ち出す表紙の方が売れやすそうではあるのに、この表情を表紙に持ってきてるのもしっかりとした意志を感じました。
ええ漫画やないか。

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