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縁の下から支えたい【さすかるインターン生・古川日菜さんインタビュー】

2022年6月、福島県いわき市で産声をあげた「さすかる」。
さすかるは、地域活動において個別的になりがちな分野や領域に横串をさし、地域のさまざまなひと・もの・ことをかけ合わせ、新たな価値や文化を持続可能な形で構築していくことを目的に結成された編集チームです。

昨年夏、寺澤亜沙加・前野有咲が中心となり、さすかるの最初の事業として、領域横断型インターンシッププログラム「さすかるインターン」を実施しました。各地から7名のインターン生がいわきに集まり、8月〜9月の約1ヶ月半、各インターン先で自分と地域に向き合いながら活動を行いました。

初代さすかるインターン生の7名は、いわきで何を体験し、どんなことを感じたのか。インターン生一人ひとりに、「さすかるインターン」を通して得た学び、参加後の変化について伺ったインタビュー記事をご紹介します。

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今回紹介するのは、NORERU?インターン生の古川日菜さんです。高校まで陸上部に所属しており、大学ではジェンダー論を専攻している古川さんは、スポーツ・ソーシャルインクルージョンの観点から、「共生のまちづくり」を推進するNORERU?のインターンに取り組みました。地方で暮らすLGBTQ+の方のヒアリングを通じて、たくさんの人を縁の下で支える存在でありたいと、今後のビジョンを掲げています。

NORERU?インターン生・古川日菜さん


自分の関心ごとから取り組んでみたい

私は郡山市の出身だったのですが、親戚がいわきに住んでいたので、幼い頃からよく通っていました。姉がたまたまTwitterでさすかるインターンの情報を見つけて、私に教えてくれたのがきっかけとなり、さすかるを知りました。

当時大学3年生でしたが、働くビジョンややりたいことがみえず、将来に向き合えていなかったんです。大学に進学してから、新しい環境に身を置くのを避けていた自分と向き合うためにも、変わるならこの夏休みかもしれないと思っていました。

働くビジョンは持てていませんでしたが、大学のゼミでジェンダー論を専攻するなど、関心のある領域はいくつかあったので、自分の興味関心を棚卸しする機会になりました。NORERU?の募集概要を見ていた時に、スポーツの視点だったら自分でも考えられると思い、NORERU?のインターンに応募しました。

NORERU?インターン生の2人

幼少期から地方で暮らしていて、地方のジェンダー観にはずっともやもやしているところがありました。また、スポーツの世界では出生時に割り当てられた性別が絶対的な力を持っており、トランスジェンダーの方は大会の出場すら危ぶまれるような現状があるというのも課題だと感じていました。NORERU?やサイクルスポーツを通じて、ジェンダーやセクシュアリティに関係なく、誰もが楽しめるスポーツのあり方を考えていきたいと思っていましたね。


個人の体験から浮かび上がる課題

インターン期間は、主にヒアリングを中心に取り組みました。LGBTQ+の方も暮らしやすいいわきを目指して、ジェンダーやセクシュアリティについて話す交流会やイベントを開催している「さんかく」のメンバーを中心に、いわきや地方で暮らして感じることや課題についてインタビューを実施しました。

インタビュー自体がはじめての体験だったので緊張もしていたのですが、一人ひとりにじっくりと話を聞けたと思います。抱える悩みや思いを表現する土壌が整っていなかったり、周囲に伝えてもうまく伝わらない経験が多かったりなど、個々人の体験にスポットを当てたからこそ、具体的な課題や地方で生きるリアルを知ることができました。

相手の言葉にじっくり向き合いました

インターン中は、課題やスポーツに対する具体的なアクションまで考えられませんでしたが、よくある「スローガン」で終わらないように、自分にできることを探していきたいです。セクシュアリティ診断に取り組んでもらった後でインタビューを行っていたのですが、これまで関心がなかった人が自分ごととして考えるきっかけにつながっていたと感じています。今後はツールなどを用いて話しやすい雰囲気作りを心がけていきたいです。

自転車でまちをめぐりました

インターン以外の活動では、主に自転車を使っていわきのまちをめぐっていました。ふと、昔可愛がってもらった曽祖母に会いに行こうと思い立ち、滞在場所の古滝屋から、平窪にある曽祖母のお墓まで自転車で行ってみたこともありました。平窪に向かう道中、息を切らしながら上り坂をのぼると、あたり一面の景色を見渡せる素敵なスポットを見つけたんです。両親が運転する車に乗っていたら見過ごしていた景色でも、自転車で走れば気づくことができる。自転車は移動手段でもあり、五感を研ぎ澄ます手段でもあるのだと感じました。

サイクリング後のランチは格別


時には思い切りも大切

夏休みが終わってからは、所属するアカペラサークルやゼミの活動に打ち込んでいました。アカペラサークルでは代表を務めていたので、ライブ全体のプロデュースを行ったり準備を進めたりと、インターン終了後は息つく暇も無くめまぐるしい日々を送っていましたね。

アカペラサークルのライブ(中央左が古川さん)
サークル長を務めていました

ゼミの活動では、インターンで行ったヒアリングの経験をいかし、テーマを恋愛にしぼって聞き取り調査を行っています。ジェンダーに関するさまざまな課題やトピックがある中で、自分の関心や研究テーマをさらにつきつめていきたいです。

インターン当初、働くビジョンが見えずに苦労していましたが、交通インフラに関わる企業に就職が決まりました。インターンを経て、自分は課題や困難を抱える方を縁の下で支える人でありたいと思ったからです。直接的に社会課題に関わる仕事ではなく、通勤・通学など、日々の「移動」から暮らしをサポートしたい。郡山で経験した東日本大震災や、単身赴任していた父への思いなど、自分のこれまでを振り返る中で視点が変わっていきました。

頭で考える前だけでなく、現場に飛び込む経験や自分でやってみる経験が、納得感をもった選択につながります。私がさすかるインターンへの参加を決めたように、今、進路選択で悩んだり立ち止まったりしている方には、一度思い切って行動してみてと伝えたいですね。