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小学生に説明するつもりで、「酵素」をロボットに例えてみた

糖質制限シリーズ書くのに疲れたので、ちょっと寄り道して酵素の話などしたい。
内容は、高校生物で単位を取った人なら知ってて当たり前のことだが、文系でも、子供でもわかるように、噛み砕いて説明してみたい。その分、学術的な精度が下がることは断っておきたい。

酵素について語れば長い話になるが、今回は以下の二点に絞って解説する。

1.酵素って、ぶっちゃけ何なのか。
2.食べたら健康になるのか。

酵素は、分子サイズの専門ロボット

人間のカラダ(細胞)を自動車修理工場に例えてみよう。ここではあらゆるメーカー、車種の、あらゆる修理を行っているとする。

簡単な想像をしてみてほしい。パンクしたタイヤを取り外した自動車がある。一緒に、交換するタイヤと、必要な工具類も置いてある。この状態で放置しておいたとすると、タイヤは自動車に取り付けられる時が来るだろうか・・・。当然、NOである。作業を行う職人なりロボットが必要だからだ。

ここにタイヤ取付専門ロボット、愛称トヨタくんが登場する。彼はものすごい精度とスピードで、あっという間にタイヤを取り付ける。ただし、他の仕事は一切できない。しかも、更に細かいことに、彼はヴィッツの左前輪の取り付けしかできない。右前輪を取り付けるためには、別のロボット、愛称マツダくんが必要だが、マツダくんもまた、他の仕事は一切できない。他にも様々な、無数のロボットが働いているが、みんな同様だ。例えばホンダくんは、キューブのフロントガラス交換しかできない、といったふうに。各々、専門の作業については完璧なプロフェッショナルだが、他の仕事は一切しないし、決して覚えることもない。

これらのロボットたちをまとめて酵素と呼ぶ。

つまり、酵素が何をする物質なのか、専門用語を使わずに、ひとことで語ることは困難だ。「酵素って何をするの?」は「花って何色なの?」と聞いているようなものだ。

酵素は互換性がない

さて、ここで、他の生物から酵素を持ち込んだ場合どうなるか考えてみよう。先の例で、人間のカラダ、自動車修理工場に、植物の酵素(手芸屋さんの刺繍ロボットとしてみよう)を持ち込んだとする。刺繍ロボット、愛称ジャノメちゃんは、綿生地に薔薇の刺繍をするロボットだ。彼女もまた、素晴らしい精度とスピードを誇るが、他の仕事は絶対しない。さて、ジャノメちゃんは自動車修理工場で、仕事にありつけるだろうか。多分無理だろう。

こんな感じで、他の生物から酵素を「輸入」することが、どれほど無茶なことかわかっていただきたい。酵素を輸入する問題は、さらに深刻な問題があるのだが、それは後述する。

酵素は分子サイズのレゴブロック

さて、ここからは、酵素が「何でできているか」について説明したい。結論から言うと、アミノ酸でできている。

先のロボットの例に戻ろう。このロボットたちは、分解していくと、20種類のパーツ(アミノ酸)を複雑に組み合わせて作られている。20種類のレゴブロックだと思って欲しい。レゴブロックのひとつひとつは、単純な形をしていて、大きさもそんなに違わない(どれも数センチ四方に収まる)。だが、その組み合わせは事実上無限だ。レゴランドに行けば(いったことないけどw)、レゴで何が可能かがわかるだろう。だから、この分子サイズのレゴブロックで作られたロボットたちも、人間が到底把握しきれない膨大な種類がある。しかも、同じ働きでも、生物によって、構造は微妙に異なる。デンプンを分解するロボットは、仕事は同じでも、人間と豚では構造が同じではない。

酵素はすぐに壊れる

レゴブロックの大作がそうであるように、このレゴのロボットたちも、簡単に壊れてしまう。たいていは、ほんのちょっと構造が歪んだりパーツが欠けたりしただけでも、ロボットは動かなくなり(失活という)、ただのブロックの塊になってしまう。生体内で言えば、酸やアルカリ、高温(40度程度で壊れるものもある)、酵素を壊す酵素・・・などなど(壊れやすさと、壊れる条件は様々)。余談だが、研究機関などでは、実験に使う酵素は非常に丁寧に管理されている。高価な上に、簡単に壊れてしまうからだ。冷蔵庫から出しっぱなしで放置とか論外。

食べられた酵素はどうなるか

このロボットたちは、動物だろうと植物だろうと大腸菌だろうと、生物である限り、必ず細胞の内外に存在している。だから、食事を摂るということは、必ず同時に酵素も摂っているということになる。先に書いたとおり、酵素はとても壊れやすい。例えば、焼き肉にはたくさんの酵素が含まれているが、ほとんどすべてが、熱によって壊れているはずだ。

では仮に、丁寧に酵素を壊さないように取り出して、そっと飲み込んだらどうなるだろうか。・・・実際には大して変わらない。胃には胃酸がある。ここでまたほとんどの酵素が壊れる。さらに進むと、十二指腸で胆汁をぶっかけられる。胆汁はアルカリ性の劇薬なので、酸に強くて胃酸を通過できた酵素も破壊される。これはほんの一例で、どうしたって、食べた酵素は消化管で破壊される運命にある。

壊れてくれないとむしろ困る

だが、もしも、食べた酵素が破壊されること無く、生体に吸収されることがあるとしたら、それはとても危険なことだ。

刺繍ロボットのジャノメちゃんが、何かの間違いで自動車修理工場に採用されてしまったとする。基本的には仕事がないが、間違いが起きないとは言い切れない。例えば、修理中の自動車のシートが綿でできていて、ジャノメちゃんの仕事対象と認識されてしまった場合など。そうすると、頼みもしないのに、その自動車のシートは一面、バラの刺繍が施されてしまう。まぁそれはそれでステキかもしれないが、工場長は怒るだろう。

食べたロボットたちは、バラバラのレゴブロックになってもらわないと困る。そうなってはじめて、生体の栄養として再利用可能になるのだから。

まとめ

さて、ここまで読んでいただけた方にはもう分かるだろう。酵素は、生物(細胞)という巨大工場で働くロボットたちで、極めて専門的な働きしかしない。他の生物に食べられると、完全にバラバラに分解されて、その部品が再利用される。だから、酵素を食べることは、その部品(アミノ酸)を食べることと等価である。

ちなみに、アミノ酸は、酵素食品よりもずっと安価に購入できる。いわゆるプロテインがそうだ。もしあなたが酵素食品とか酵素ジュースとかを飲んで健康になったと思っているなら、プロテインに切り替えよう。健康食品メーカーの詐欺にこれ以上つぎ込むことはない。

※専門用語の正確性に関してはスルーしてください。プロテインとアミノ酸の違いがよくわかっているような方には、かったるい文章だったと思います。



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