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もう春でつね。
午後4時、校庭。踵で砂を弄り、ゴールを作った。校庭を縦に使うか、横に使うかはあの頃の永遠の議題でもあった。3階の音楽室からヲレを見下ろすのならば、校庭を縦に使ってサッカーをした方が全体を見渡せるのは明確だった。
サックス奏者の女は物静かで、ヲレに興味を持つかは定かではなかった。吹奏楽が好きなために、楽器を手に取ったのかも分からない。同調圧力が潜んでいるのはガキの周りばかりだったからだ。だからといって外界の喧騒に目を向けてしまうだろうか。音楽室はあまりにも閉鎖的であった。
ヲレは部活をサボって校庭へと駆けた訳であって、いつもならば女の目と鼻の先でピアノを弾いていた。ガキのヲレにはピアノを演奏することがシャバくてシャバくて仕方がなかった。美とか透明とか妖艶とかそんな感受性の渦中には居なかった。女も然りだと感じていた。女はパステルカラーのスウェットを好んでいた。韓流の流行りには疎い様で、固定的なカーストを流動しているようにも思えた。
ヲレは想像する。ワンツーがしたいのだろうと。しかし、パスとして処理したらどうなるだろうかとも。ヲレは忘れていた、初恋の女を。思考が穿孔していき、女のホログラムが霞んでいった。ゴールは5m程しか離れていなかった。トーキックでゴールを決める。ネットは無い。ボールは校庭さえも抜け、雲梯の下でスピードを落とした。
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