上級国民民主党
「不倫」という単語が好きだ。行為ではなく、その用字が好きだ。
「不」は否定を意味するものであり、「倫」は人の道を表すものである。すなわち不倫という行為は人の道に外れているということだ。
いつから使われている語なのかは知らないが、その行為にこの字を当てはめた人の感性が燦然と光り輝いている。
もっとも現代人に至るまで、このような醜聞は枚挙に暇がない。いかに人の道に外れた者の多いことか。
国民民主党の党首が不倫していたという今回のスキャンダル。
国民民主党の運営、特に政治への関与にブレーキがかかるのは当然のことである。
彼はこれによって党首を辞めることもないようだが、かつて同様の行為によって議員辞職した者がいることを鑑みると、彼は人の道に外れても問題になることのない上級国民の仲間入りをしたということだろう。さしあたり国民民主党の躍進は、彼個人においてはこれだけの利をもたらしたといえよう。
しかし僕は彼の行為よりもむしろ、それを重大視しない姿勢があることのほうに違和感がある。個人の問題だとか政治には関係ないなどとことさら矮小化し、本人さえ非を認めていることについての報道に対しても足を引っ張るなとでも言わんばかりの言説も目にする。
人間の一部は、自分が支持するものにあっては、その個人的な不祥事には簡単に目をつむるということだ。これ、裏金もらっていたのだとしても、この人ならばいいんだと言ってのけるのだろうな。こうして上級国民は作られていく。
不倫はけっして小さなことではない。
文字どおり人の道に外れることだ。
それを行うばかりか、それを許容するのが、一部とはいえ人間の在り様である。
もはや人ではないのは、僕のほうなのかもしれないな。