【怪談】異様なおみやげ
資産家の祖父を持つTさんの話。
Tさんが高校生だった数年前、Tさんの祖父が上海から帰った際、お土産を持って帰った。
黒く、化石のようになった動物の頭蓋骨だった。
奇妙に伸びた角が特徴的で、歯はすべてそろっており、赤い顔料で奇妙な記号が描かれていた。
Tさんの祖父は得意になって言った。
「闇市で見つけたんだ。中南米の部族の、まじないに使う品らしい。商売敵を衰退させるのに使うんだと」
Tさんは祖父が持って帰った骨が気味悪かった。
金持ちの道楽というか、祖父はこういう事をよくするので、「ああ、またか」と思った程度だったらしい。
祖父は客間に堂々と飾った。
客人がその異様な頭蓋骨を見て驚くのを楽しんでいたようだった。
数カ月して、祖父は元気がなくなってきた。
顔は青ざめて、重い病でもかかったように生気がなくなった。
しきりに手をかゆがって、いつも手をさすったり、掻いたりしていた。
Tさん達家族は心配したが、「何でもない」と医者嫌いの祖父は突っぱねた。
次第に祖父は白手袋を着け始めた。
体調も悪いようで、いつも自室にこもりきりになった。
ただ事ではないとTさんの父と、親戚で祖父を病院へ連れて行った。
身体に異常はなかったが、白手を外して医者も家族も驚いた。
祖父の手は、無数のさかむけができていた。
普通のさかむけとは異なり、生皮が、指の付け根までめくれて、肉が露出し、所々血がにじんで膿んでいた。
「手荒れだよ。大したことはない」祖父はそう言ったが、そもそも祖父は手荒れとは無縁に皮膚が丈夫だった。
医師からステロイド薬を処方されたが、一向に良くならなかった。
祖父も段々と弱っていく。
とうとう「神頼み」ではないが、懇意にしていた知人の占い師に見てもらった。
その占い師は、客間の頭蓋骨を見て即答した。
「これですよ、原因は」占い師は顔をしかめて言った。「会長さん、これは南米の呪物に間違いありません。ただ、用途を勘違いなさってます」
「勘違い?」Tさんの祖父が聞いた。
「ええ。これは相手に送り付けるんですよ。所有者が呪われてしまいます。この骨には邪神が宿っていて、生贄として所有者の皮を剥いで食べてしまうと言われています。これを買ったのは闇市ですか?なるほど、売りつけたやつは、今頃良い思いをしているかも知れませんね」
それを聞いて、Tさんの祖父はすぐに頭蓋骨を捨ててしまった。
それからすぐに祖父の体調はよくなり、さかむけも消えてしまったそうだ。
「今回ばっかりは懲りたよ」荒れた痕がひどく残った手をさする祖父を見て、Tさんは外国で変な呪物だけは買うまいと心に誓ったそうだ。
【おわり】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?