インド特許データベースMCPaIRSを使ってみました:レコード収録

インド特許データベースの紹介です。

DOCDBというデータベースの上に、Human用の操作インタフェースを構築した、欧州特許庁が運営するEspacenetは、多くの方がご存じかと思います。このEspacenetでアジア圏の特許を検索してみてください。インド特許なんて、ほとんど収録されていません。ASEANはさらに悲惨で、タイ特許なんて全期間で僅か13件しかヒットしません。(最近まで12件でした・・・)

二次大戦前には、欧州の人達はアジアに大きな興味を持ち、多くの国を植民地化したことが知られていますが、戦後はアジアへの興味が薄れてしまったようです。特許情報に関しては、アジアは欧州人の興味対象外になってしまいました。

世間の多くの海外特許(日本以外の特許)商用データベースは、DOCDBが情報源となっていることが多いことはよく知られています。このためインドをはじめとするアジア諸国の特許は、商用データベースへの収録率が低く、網羅的に検索することが容易ではありません。

このような中で、Molecular Connections社ではインド特許専用のデータベースであるMCPaIRSを開発し販売しています。インド各地に拠点を持ち、インド特許が電子化されていないころから、4つの特許庁から発行される印刷物を自ら電子化し収録したという、かねてよりインド特許情報の収録には定評が高いデータベースです。

今回ジェトロ・ニューデリー、およびMolecular Connections社のご厚意で、MCPaIRSを試用させていただけることになり、簡単に評価を行ってみました。

■   公開特許レコード収録

特許データベースには優れたな検索機能・性能も必要ですが、まずはレコードが収録されていてこそ。公開特許レコードの収録を評価してみました。

西暦2000年から今年までに公開された特許の収録件数を、公開公報発行年を横軸に取ってグラフ化しました。比較したデータベースは、InPASS・PATENTSCOPE・MCPaIRSの3種です。

IP India(インド知財庁)が運営するInPASSデータベースには、2005年以降に公開された特許の情報しか収録されていません。さらに2006年頃までは電子情報の収録にも漏れが目立つようです。

WIPOへはIP Indiaから特許情報が提供されます。このためPATENTSCOPEの収録はInPASSを超えることはありません。毎年のように、InPASSより若干収録件数が低い状態が続いています。IP Indiaから提供される情報にもれがあるのか、WIPOによる収録にもれがあるのかは不明です。

現地特許庁から入手した「紙情報」を電子化して収録したMCPaIRSは2006年以前もInPASSより高い収録を達成しています。インドでは2002年特許法改正により出願公開制度が導入されたとのことであり、MCPaIRSと言えども2003年以前の件数は極わずかですが、これが実際に発行された案件の全数なのだと思われます。2023年に新しく発行された案件の収録タイムラグを除くと、MCPaIRSの収録はInPASSの収録に劣っていないようです。

噂レベルの話であり実情は不明ですが、インド特許情報をMolecular Connections社から購入して自社の特許データベースに収録しているところも多いと聞きます。これらの商用特許データベースでも、MCPaIRSと同様の高い収録が期待できそうです。

ちなみに、元情報をどこから購入しているのか不明ですが、Questel社サイバーパテントでも、MCPaIRSと同様に高いレコード収録率であることを確認済みです。

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レコード収録についてはここまでとします。次回はInPASS・PATENTSCOPE・MCPaIRSそれぞれの、文字列検索について紹介します。

アジア特許情報研究会/アイ・ピー・ファイン 中西 昌弘