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作家志望者には大沢在昌『小説講座売れる作家の全技術: デビューだけで満足してはいけない』を併読してほしい【読書感想文】平山瑞穂『エンタメ小説家の失敗学~「売れなければ終わり」の修羅の道』

Kindle Unlimited 読み上げ。

なかなか辛い内容だけど、途中でやめられなかった。

共感し同情できる部分もあるし、自己正当化したり責任転嫁したりとみっともないところは自分にも思い当たるフシがありもするし、著者のことを好きにはなれなさそうだけど、他の作品を読んでみたくもなった。

これって、良い純文学作品に出会ったときの感想に似ている。

これをフィクションにすればよかったのでは?とも思うが、作家が語り手の小説もすでに書いていて、しかも不評だったらしいので、やはりフィールドの選択を間違えたということに尽きるのかもしれない。

たぶん著者ほどの才能と機会に恵まれていなくても、楽しんで書き続けていられる作家は5万といるだろうし、著者以上の才能と機会に恵まれながら、もっとひどい目にあった人も5万といるだろう。

この作品が「釣り」や嗜虐的な露悪趣味ではないのだとすると、自戒を込めてものすごくエラそうなことを言わせてもらうなら、著者に足りないのは感謝の気持と一貫性だと思う。

90点。

ところで、本書で何度も言及されているデビュー作にして代表作『ラス・マンチャス通信』は、発表以来ずっと気にはなっていて、読もう読もうと思いながらその機会がなかった作品だ。

日本ファンタジーノベル大賞のネームバリューもあるが、タイトルと装丁のクオリティが高く、想像力を刺激するものだったからだと思う。

Kindle版はその装丁がなくなっていた。

よくある話だけど、著者にしたら自分の子どもを引き裂かれるような感じなのではないだろうか。権利問題とはいえ、これも著者には不幸なことだろう。

でも私はこの度『ラス・マンチャス通信』を買った。このあけすけな失敗学の試みは、ある程度成功していると思う。


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