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文章化することで失われるもの、朗読することで失われるもの【読書感想文】若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

読み始めは東北弁が新鮮で、まさにジャズのように思え、芥川賞は新人賞だから自分史のような作品では後が続かなさそうだからいかがなものかとも思うが、そういう欠点を補ってあまりある作品だとまで思えたが、途中でAudible に切り替えたらその魅力がすっかり消えてしまったので、我ながら驚いた。

ナレーターがうますぎて、本当にふつうの、なまった老女の自分語りのように聞こえてしまうのだ。

語りから文章に変換することで失われるものはたくさんあると思うが、逆に文章から語りに変換することで失われるものがあることには、これまであまり気がついていなかった。

あるいは冒頭とクライマックスがこの作品の真骨頂で、いわばそのふたつが両A面シングルで、それ以外は文章で読んでいても退屈に思えてしまっていたのかもしれない。 

ラフトは予定調和に思えたが、そうせざるを得ないだろうとも思う。

類似の体験をした同世代の人口は多いだろうから、存在意義はあるし、受賞もむべなるかな、ではある。

たぶん観ないと思うが、映画がどんな事になっているのか、他人事ながら心配だ。ジャンルが「ドラマ/コメディ」ってなってるんだもの。




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