見出し画像

ダブルミーニングと打倒人間中心主義【タイトル】ネコが嫌いな人たち

雑誌『kotoba』2024年冬号に載っていた、加藤ジャンプさんのエッセイのタイトルである。

「ネコが嫌いな人たち」についてのエッセイだが、「ネコが嫌いな人たち」についてのエッセイのようにも思える。

これほど見事にダブルミーニングでありながら、本文でそのことに触れられていないというのは珍しい。

例えば、エッシャーの絵のような騙し絵を、騙そうという気がさらさらないのに描いたり見せたりする人はいないだろう。

ある種の企みなのか、天然なのか。

しかしグーグル翻訳したら一瞬で People who don't like cats. (注1)と出た。1秒の迷いもない(当たり前だが)。ダブルミーニングどころか、9:1ミーニングくらいじゃないか。迷う方がヘンなのか。

推測するに、ネコがエッセイの書き手になることは普通ないから、ネコがヒトの好き嫌いをうんぬんするエッセイよりも、ヒトがネコの好き嫌いをうんぬんするエッセイである確率の方が高い、とAI は踏んだのではないか。

しかしネコに好かれたいと思っているヒトは、ネコ嫌いなヒトの話なんかより、ネコがどんなヒトを嫌うのかを、ネコの気持ちをこそ、知りたいのではないか。

このタイトルを見て後者の意味に受け取ったヒトはしたがって、ただのネコ好きにあらずして、ネコと両想いになりたいヒトたちである可能性が高いと言えるだろう。

そしてはじめは気がつかなかった方々も、だまし絵のトリックに気がついたあとのように、もう二度とこのダブルミーニングから逃れることはできないであろう。

ようこそ、真のネコ好きの世界へ(誰だお前は)。


注1. 「ネコが嫌う人たち」→ People who hate cats
「ネコが嫌っている人たち」→ People who hate cats
「ネコが嫌いになるような人たち」→ People who dislike cats
と、どうやっても頑迷な人間中心主義から逃れられなかったのだが、「ネコが嫌う人間」でやっと People that cats hate と出た。というか、同じpeople という訳語をあてながら、「人」と「人間」という日本語の違いを認識しているらしいことにびっくりした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?