旅と夏、ときどき人

この夏は何もかもが違う。

学校へ足繁く通う子どもたち、私を含む大学生は毎日パソコンと何時間も見つめ合っている。
街へ出ても、人と人の間にはビニールやアクリル板での隔たりができ、人の往来は少ない。
家族や友人と遠くへ行くことは他者に許されず、家に閉じこもる日々。

みんな、不安なのだろう。この一世紀ほど、現代を生きている私達の誰もが経験したことのない、まったく未知のウイルスとの闘い。先が見えない。
みんな、わからないのだろう。これから先、どう生きていけばいいのか。

私は割と楽観的なところがあるし、きっとどうにかなるだろうと思ってしまう。ちゃんと対策はしているし、それでもかかるなら仕方がない。

ただ、大好きな街が消えてしまうことだけが遣る瀬ない。

私は旅をするのが好きだ。旅先で自分の気の向くままにあちらこちらを訪ねてまわる。行く先は時には山や川であったし、時には繁華街だった。そして、一人そこの空気を吸って、そこにいる人々や自然を感じて、満足して帰ってくる。
そんな旅をよくしていた。

しかし、コロナウイルスの影響でそれは満足にできなくなってしまった。
緊急事態宣言の発令や県外移動の制限、何よりも周りの目がある。こういうとき人というのは怖くなるものだなと感じた。

ニュースでは観光業の困窮が報じられる。訪れたことのある土地でのインタビューがされていることもよくある。

見るたびに苦しい。日本中に守りたい場所は沢山あるのに、少しでも支えになれたらと思うのに、なかなか叶わない。遠くから消えゆく様子を見ているしかないのだ。

今政府はGoToトラベルキャンペーンを行っている。感染状況を見つつではあるが、私もこの前キャンペーンを使って旅をした。
記念すべき第一回目は、私が旅を好きになったきっかけの場を訪れることにした。

結論を先にいうと、すごく楽しかった。
旅というのはこれほどまでに開放的で、これほどまでに満足感を与えてくれるものであったかと自分でも驚くほどだった。

もちろん人は少ないし、以前なら聞こえてきたであろう、親子連れや観光客が遊ぶ声は聞こえてこない。
しかし、店員さんやホテルの従業員さん、警備員の方などは暇があるのか、普段以上に長くゆっくりと話すことができた。
それが私のコロナ禍の旅での満足感をとてつもなく高めてくれた。

自粛で、人との繋がりを感じる機会が減ってしまったと思っていたが、そんなことはないのだ。

少し日常から抜け出してみれば、人というのは変わらず温かいものだ。そう思えた夏だった。

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