てるてる坊主のラブレター #毎週ショートショートnote

「お前さん、何をさっきからウジウジしてるんだ」
　僕が小学生の頃から机にぶら下がっているてるてる坊主が、いつものように話しかけてきた。
「うるさいなぁ。ほっといてくれよ」
「ははーん。さては、恋だな」
「てるてる坊主に何がわかるってんだ」
「馬鹿言うんじゃねぇよ。俺だって昔はブイブイ言わせてたもんさ」
　ぶら下がっているだけのくせにいつの間に……というかどうやって遊び回ってきたんだか。
「いいか？　恋愛っつーのはな、思いの丈をバァーンとぶつけてドカンとズギュンといきゃぁなんとかなるもんさ」
「適当なこと言いやがって」
「まあ騙されたと思って、恋文でも書いてみな。いっちょ俺がアドバイスしてやっから。相手の子の名前は？」
「……雨宮さん」
「おいおいそりゃぁ最高の相手じゃねぇか。俺の十八番の殺し文句で決まりよ」
　どうせろくなもんじゃないな、と思いながら、とりあえず聞くだけ聞いてみることにした。
「んじゃ行くぞ、ちゃんと書き取れよ？　えー……『雨宮さんを晴宮さんにしてみせます。一緒にぶら下がりませ――』」
　聴き終わる前に、僕は書きかけの紙をビリビリと破いた。
　てるてる坊主は、不満そうにしながらゴミ箱に捨た紙を吸い上げていた。

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　たらはかにさんの以下の企画に参加しております。
　今週のお題は【てるてる坊主のラブレター】でした。

　キュンと来る甘いお話になるはずが、なんだか変なことになりました（笑）
　それにしてもてるてる坊主君、誰を相手にブイブイ言わせてたんですかねぇ。