イライラする挨拶代わり #毎週ショートショートnote
「お前が魔王か?」
不躾に扉を開け放ち、勇者が入ってきた。
「貴様に名乗る義理は持ち合わせておらん」
「チッ、まずは挨拶代わりだ! 喰らえ!」
勇者は懐から何かを取り出し、天に掲げた。刹那、閃光が走る。
「くっ、魔道具か小賢しい……」
閃光が収まる。奇襲でも仕掛けてくるかと思ったが、勇者の方に動きはない。
「魔王弱体化の宝珠だ! 王国宮廷魔術師軍団特製だぜ!」
なるほど、人間たちがコソコソと開発していたという魔導具か。人間らしい、姑息な技だ。
しかし、一体どのような効果なのだ。今のところ異常は感じられない。魔力が阻害されているわけでもなければ、身体の動きにも……いや、なにか違和感がある。
「貴様、一体何をした」
「おでこに指を近づけたときのムズムズを2時間継続する魔法が込められてるのさ! これで集中できな――」
喋り終わるのを待たずに、最大火力の闇魔法で葬った。魔導具もしっかり跡形もなく破壊してやった。どうせ奴は復活するだろうが、しばらくは静かになるだろう。
……元を壊しても効果は消えないか。まったく苛つく仕掛けだ。顔をしかめながら、我はまた玉座に座り直した。
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たらはかにさんの以下の企画に参加しております。
まおゆうモノにしてみましたがいかがだったでしょうか。カッコいい魔王が書けていたら嬉しいです!
勇者と魔王の物語というのは、今回初めて書いたのですが、やっぱり楽しいですね。いずれまたしっかり書いてみたいです。
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