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一次創作小説まとめ・カナリアのベルカント

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一次創作小説まとめ
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キャラクター設定 カナリアのベルカント

カナリアのベルカント CharacterDesignみたび サロセイル・エカ=メル  地下都市・シェルターに住む男性。自由人を自称しており、定職には就いていない。資産だけはあるらしく、推しであり恋人でもあるトアの動画によく金銭付きのコメントをつけているし、時折公開される欲しいものリストでちょくちょく物を贈っている。恋人として受け取ってくれないから、余計にリスナーとして押しつけたくなるとは彼の発言。  飄々とした自信家であるが、その性格からトアの熱烈なファンからは好かれていた

現実世界に夢中になる

title by Hiver(http://genseinimauhiei.nobody.jp/hp2/9.html)  地球という惑星が宇宙に開かれたのは、教科書に載るぐらいには昔のことである。なんでも、ひとりの女性が地球を訪れていた宇宙から訪れていた人物と接触したことがきっかけだとかなんとか。地球史の教科書をひもとけばいくらでも載っていることだ。  今では外宇宙とのやりとりが多く、空には大きな船がいつだって飛んでいる。友好都市として、地上で活動できなかったりする種族のた

隣人のジレンマ

title by 蝋梅(https://roubai.amebaownd.com/) 「君が着飾ることをしないで、飼ってるペットを着飾らせるのかい」 「こっちの方が再生数高いから……あと、そろそろ動画を上げないとペナルティがくる……」 「ペナルティねえ……元々動画投稿は趣味人の行動のはずが、こうして職業化して、あまつさえ定期的に動画を上げなくてはペナルティが課せられるなんてねえ。エンターテイナーの仕事を辞めて、やはり私の星に来ないかい?」    君に何かを課したりしないし、

スカーレットの色をした朝

 マクシミリアン=イルデブランドは鍋を火にかけていた。  特に友人であるドルノ族たちの特有の言語、竜語(ドルンノード)で綴られた書籍の翻訳依頼があるわけでもなければ、製本の依頼があるわけでもない。至って平々凡々平和な日々だ。  季節は冬に入ろうとしていた。サンハ=ユアニルはただでさえ冷涼な気候のサンク・キタテウェルトの中でも山の麓にある街であるからか、冬に入るのも早い。短い夏の間に生産されたトマトたちを、大量にざく切りにしすりつぶす。それを鍋で煮詰めるのだ。刻むのもすり潰し器

プリズム色をした悪夢

 サロセイル・エカ=メルは旅人を自称しているだけあり、多くの惑星を移動してきた。そのなかには、平和な惑星もあれば、戦乱に満ちた惑星もあった。たような種族で構成されている惑星もあれば、単一種族で構成されている場所もあった。病魔に苦しむ星もあれば、安穏を享受する星もあった。  彼が生きてきた長い時間の中で、多くの知的生命体種族を「恋人」と称してその惑星に居場所を作ってきた。これは、サロセイル・エカ=メルが地球に来る少し前の話である。 「おっと」  まるで小石に躓いたような軽い

あるいは鉄線の向こう側

 ひょい、と軽いノリで飛んだサロセイル・エカ=メルの足が次の足場に到着する前に、黒い線がその足を掴もうとする。変幻自在に歪む黒がゆったりとした紺色のワイドパンツを掴む前に、サロセイルは服ごと足を切り離してしまう。流石にそれは思い至らなかったのか、黒い線の親元の人物は目を見開いたようであるが、そんなことなど知ったことじゃない彼は足場を蹴り飛ばして宙を飛ぶと、服と足をまるでビデオテープを逆再生するように復活させる。  誰もいない街中を縦断する黒を見ながら、サロセイルはこの街は面白

ミラーボールプラネット

title by alkalism(http://girl.fem.jp/ism/)  惑星外から人が来る事なんて珍しくなくなった。僕らだって他の惑星に行くこともあるのだ。外の惑星には、人の形を取っていない存在も多い。獣のような姿だったり、魚が喋っていることだって不思議ではない。知性ある生命体はなにも二足歩行をする愚かしい生き物とは限らないのだ。より便利に発達するために他者に寄生する生命体だって存在した。まあ、そういう生命体はだいたい戦争に発展するのがオチなのだけれども。

立てば芍薬

 惑星によるが、地球にあるかつて日本と呼ばれた土地のように季節のある星は存在する。とはいえ、暑いか涼しいか、寒いか暖かいかくらいのはっきりと別れていない所の方が多い。  暑ければ暑いなりの楽しみ方が、寒ければ寒いなりの楽しみ方があるものだとサロセイル・エカ=メルは笑うのだけれども。  この時、サロセイルは熱い惑星にいた。その惑星は銀河群のなかでも恒星に二番目に近い惑星だった。恒星に近いだけあり、驚くほどに暑く、屋内でも汗みずくになるほどだ。水は貴重なものであるためになかなか

それは昔も言われていたかもしれない

 トアは人気のある動画配信者だ。だからといって常に引きこもっているわけではないし、動画配信者同士の繋がり以外にも友人はいる。統一管理機関が人間として健全な精神性を持つために友人関係は必要である――そう規定されてから、人々には幼少期から友人となるべき人がふたり与えられていた。トアもその時の友人たちとは縁を切ることなく、長く今まで友人として接してきた。そのうちの一人は長く病魔に悩まされ、脳以外を機械化させて延命することになったりしたが、基本的にはどちらもいわゆるヒトの体をしている

降る銀は百色

title by alkalism(https://girl.fem.jp/ism/)  星間連絡船はたいていが乗合形式だ。大型種族用のものもあれば、小型種族むけのものもある。本来とは別に小さな形になれる種族は、大抵小型種族向けのものに乗ることが多い。理由は簡単だ。安いのだ。  地球の基準にして全高六メートルまでの小型種族向けの星間連絡船にサロセイルは乗っていた。サロセイルが向かう惑星は、該当する銀河系の中でも端の方にあるためか、連絡船の中にひとはまばらである。それでも、屈

バレンタインに愛を込めて

 かつての地球に存在したというバレンタイン。それはなんだかんだと続いている。人間というものは、面白いと感じた文化を受け入れていくもので、継承していくものだ。バレンタインは特に日本と呼ばれる地域でひどく発展をした文化であるらしいが、ようは意中の相手に贈り物をするということに変わりはないのだ。それが商業主義に乗ったチョコレートの販促だったか、そうでなかったかの違いぐらいだ。  今日の日付は地球で言えば二月十四日。バレンタインの日だな、とのんびり考えながら、サロセイルは賑やかな大通