見出し画像

書籍「組織を芯からアジャイルにする」第1章で心に残ったフレーズ 〜探索〜

 「組織を芯からアジャイルにする」第1章。心に残ったフレーズは何で、なぜ心に残ったのかを考えてみました。

 この記事のきっかけとなったお題はこちら。

未知の領域を探索するということ

私たちは何を探索しなければならないのか。
対象は「解決策」だけではない。

「組織を芯からアジャイルにする」第1章

 人類に残された最後の開拓地である広大な宇宙において、未知の領域を探索する宇宙船USSエンタープライズ号。その乗員ほどではありませんが、私たちも日々過ごす中で新しいものを見聞きしています。見聞きしたことが昨日まで知っていたことや経験したことと大きく違っていれば、その内容の良し悪しに関わらず強く記憶に残ります。そして、昨日と比べて大きく変わったことが持つ意味を咀嚼して明日の自分に織り込みます。しかし、見聞きするほとんどのことは昨日までと大きく変わらないもの、大きく変わったとは感じられないものがほとんどです。

 私たちにとっての未知の領域は、どこにあるのでしょうか。

現状維持バイアスと探索のマインド

 人の心理的な傾向には現状維持バイアスがあり、明日からの自分の考え方や行動を変えることを無意識のうちに避けています。それは、怠けているとか物事の捉え方が間違っているとかそういうことではなく、そもそも、新しいやり方は取り入れたくないし、新しい考え方は自分には不要だと思いたいのです。なぜなら、昨日までと異なる何かに変えていくことは、昨日までできていたことができなくなるリスクを抱えることであり、怖いからです。

 現状維持バイアスは、人類がこの地球上で生き残ってくるために必要だった仕掛けであり、現在まで脈々と受け継がれながら進化してきた私たちの大切なスキルです。おそらく、未来を生きるエンタープライズ号の乗員も現状維持バイアスを無くしてはいないでしょう。それでも、現状維持を目指さず未知のものを自ら探索しようとする。そのマインドはどこから生まれてくるのでしょうか。

私たちの組織で探索しなければならないこと

 私たちが宇宙を探索するのは、まだ少し先の未来です。広大な宇宙を相手にするには人類の技術とマインドが未熟すぎます。

あなたの組織で探索しなければならないことは何だろうか?

「組織を芯からアジャイルにする」第1章 
組織の芯を捉え直す問い

 私たちがどこかの組織に属する期間は30年〜40年。その間、組織の周りを取り巻く環境や状況が変わらないのであれば、昨日までうまくやってきたやり方を今日やれば、たいていのことはうまくいくはずです。昨日までと同じマインドで同じやり方を今日も明日もやった方が良いでしょう。

 ところで、エンタープライズ号は地球を含む複数の星で構成される惑星連邦に所属しています。惑星連邦を取り巻く環境は、未知の文明、未知の宇宙空間です。行く先々には、今いる場所と時空が違ったり、意思疎通が困難な生命体がいたりします。そのような環境に身を置くのであれば「昨日までと同じようにやっていく」のは危険すぎます。「何がどうなるか分からない今日の状況に対応していく」ことが乗員全員に求められます。これ以上ないほどの不確実性です。自らの将来だけでなく惑星連邦全体の将来が変わるかもしれないほどに不確実性が高いからこそ、エンタープライズ号の乗員は現状維持バイアスを克服し、未知のものを自ら探索して対応しようというマインドで臨むのです。

 幸いにも私たちが所属する組織は、その大小や種類の違いこそあれ惑星連邦が置かれている環境ほどの不確実性はありません。そうであっても、業種や業界を問わず、周りを取り巻く環境や状況は変わり続けていて不確実な要素が多々あります。私たちが組織に属する短い時間軸で捉えてみても早いペースで変わり続けています。消費者やユーザーが体験することの種類の多さや質に加えてその内容の変わり方、求められるスピード感、関係し合う組織の数や関係性、さらに何がどう変わっているかが関係者に伝搬する速さや広がりやすさなど。置かれている環境や接する相手の状況が変わり分からないことが出てきたら、それらが探索の対象であり、私たちにとっての未知の領域です。

探索しないことを選択した未来

 一方で、昨日までやってきたやり方、学んできたプロセスや考え方など、大切で効果的だったものは組織に蓄積されていて今も有効です。多くの成功体験は今もまだ多くの人の記憶に残り続けています。手間のかかる探索など気にせず、組織や私たちの中にある「正しかったやり方」で臨み続けたくなるときがあります。

 もしも、エンタープライズ号が探索をやめたらどうなるでしょう。当面は平穏な状態が続くかもしれません。昨日と同じ今日、今日と同じ明日と…。しかし、いつの日か好戦的な種族が接触してきたとき、探索し続けていれば得られていたであろう知識を持たない惑星連邦は、為すすべなく退場せざるを得なくなります。

 翻って私たちの組織が、これまでのやり方や過去の成功体験に固執していったらどうなるでしょうか。まだしばらくはやっていけるかもしれません。しかし、それほど遠くない未来のある日、組織外からの接触(ユーザーのニーズにより適合する競合製品、イノベーションによる主要技術や製品の交代など)によって知識不足を強制的に気づかされることになったとき、挽回するための知識を得て実践するには時すでに遅く、提供していたサービスの終了、事業の撤退が視野に入ってきます。

前に進むための仮説と探索

 今日探索したことが明日役に立つとは限りません。もしかしたら的はずれな結果になるかもしれません。それでも、未知のことを明らかにすべく仮説を持って探索を続けていれば、未知の領域は減っていき、将来役に立つ知識を持ち帰ることができるはずです。継続して得る新たな知識は、目の前にあって見えなかった課題に気づくためのセンサーとなり、「今、目の前にあるこの課題は、あの空間で接触した生命体が発した音声の意味するところと同じなのではないか」、「あのとき解読した文書に書かれていたことはこの課題についての手がかりになるのではないか」と、私たちが対応するため一歩を後押ししてくれます。  

 私は、所属する組織が相対するものについて不確実なことを明らかにするために、仮説を立てた上で探索するアプローチを継続していきます。「どうですか?」ではなく「こうですか?」と問いかけられるように。
 周りを見渡せば、直接的に相対するものだけでも、顧客、上位の組織、自組織内のチームやメンバー、連携して業務にあたる他組織など多岐に渡ります。さらに、いずれもスピード感を求められるものばかりです。心が怯みそうになりますが、エンタープライズ号が未知の領域にワープ航法で突き進む姿を思い浮かべれば、気を楽に持って前に進めます。

時間軸の長さ、そして「組織を芯からアジャイルにする」へ

 将来、時空を超越する技術を手に入れられれば、多くの課題は、課題に気づいたその時々に適切な解決策を見つけられるでしょう。しかし、そのような技術を持たず限られた短い時間を生きる私たちにとって、昨日と今日の変化から目をそらし続ける時間的な余裕はありません。

 組織の周りを取り巻く環境や状況は、組織の時間軸よりも早いペースで変わり続けています。組織内の状況や組織が接する相手についても10年前間何も変わらないということはあり得ません。たとえ何も変わっていないように思えても、日々見聞きしたことによって考えたり記憶したりした様々なこと、考え方や物事の捉え方など、自分自身も相対する人たちも変化しています。

 書籍「組織を芯からアジャイルにする」には、組織をテーマにしたタフクエスチョンが散りばめられています。どういうことなのか、どうすれば良いのか、と自ら問いかけても答えが出てこないものもあるかもしれませんが、それも「探索」の一環なのだと私は思います。

 あなたの組織を取り巻く環境や状況など周りが変化する時間軸と、あなたの組織が変化する時間軸は、どちらが長いですか。周りの時間軸の方が長い、つまり周りの時間の進み方が遅いのであれば先んじて行動できているのだと思います。もしも、周りの時間軸が短いと感じることがあれば、あるいは組織の時間軸が長いと感じることがあれば、ぜひこの書籍を手にとってみることをおすすめします。

Engage!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?