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ニコン銀座が半世紀の業務終了。パラスポーツ取材への協力をありがとう!

はじめましての”note”だけど、さようならの話題です。ニコン銀座・業務終了にまつわる話をします。
コロナとオリパラ延期で時代がニューノーマルというところへシフトしようとする2020年も、残すところあと2ヶ月半。私たちパラスポーツをモチーフとするNPOメディア・パラフォトを取り巻く社会の環境も変わろうとしている。

10月16日(金)、ニコン銀座のプロサービスセンター(NPS)が業務を終了した。新宿がニコンプラザ東京となり銀座での業務を統合して再開する。

日本屈指のカメラメーカーNikonは、コロナ禍以前から、カメラ業界トップの技術のせめぎあいのなか業務のスリム化を強いられていた。1968年(昭和43年)に開設された日本の写真文化の象徴、ニコン銀座が、ついにその半世紀をこえる時間の幕を閉じようとしている。

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パラスポーツ取材への支援
最初にその門を叩いた時の部署はプロサービスではなく場所も吾妻橋のアサヒビールタワーで、パラフォトはシドニーパラリンピック(2000年)以降、国内外の障害者のスポーツ(パラスポーツ)をニコンの機材協力を得て伝えてきた。カメラ技術の競争は放送・通信機器とともに夏のオリンピックに照準が合わせられているが、4年ごとのタイミングを中心に私たちの取材も、パラリンピック現地、国内外のパラスポーツ大会の撮影も含め機材協力を得てきた。プロ、ハイアマチュアのフォトグラファとジャーナリストによる取材キャンプが終わると性能や使用感、他社製品との比較とオープンにフィードバックするなど長く交流の機会を築いてきた。
「障害者のスポーツが健常者のスポーツと変わらない醍醐味をもっていることを知らせたい」と写真家たちが挑み、支援をもとめたことに応えてくれたのが当時吾妻橋にいた柿本完爾さん、村松登さん、お二人が退職されてから、少し時間が開くけれど、銀座プロサービスセンターを訪ね、アテネ2004のサービスデポの経験もある高山幸明さん、若山匠さんら知識豊かな皆さんらと出会った。

過酷な環境での撮影に耐えるニコンのカメラは、NASA宇宙開発や北極圏など過酷な環境での使用に耐える素晴らしい性能が頼られている。
IOC(国際オリンピック委員会)は、スポーツの醍醐味を伝えるパートナーとしてメディアと手を組んだ。64年東京オリンピック以降、ニコンはスポーツ報道の最前線で世界中のフォトグラファの発信をサポートしている。

MPCでのサービスデポ
関係者以外にはあまり知られないが、オリパラのメインプレスセンター(MPC)には、ニコン、キヤノンの公式な修理サポート、古くはコダックなどフィルム提供もあり写真配信が円滑に支えられている。大会期間中カメラマンは自前の機材の修理、代替え機や最新機の提供をうけることができ、撮影技術と感性を思う存分に発揮し発信することができる。
オリパラに始まるスポーツ大会への「サービスデポ」はパナソニック、ソニーなども含め日本の技術と世界を結ぶ象徴の現場だ。MPCのサービスデポに日の丸はないが日本の物づくりが世界中のフォトグラファとスポーツ報道を支えていると実感でき、いつも誇らしい気分になる。

動画やSNS(ソーシャルメディア)が全盛となったいま、新たなアート表現が感動をもたらすなかで、カメラは貴重な言葉や瞬間を鮮やかに再現するアートツール、ソフトとしての精度を高めている。
とくにパラスポーツは始まったばかりで、人間の可能性を新たに伝え、スポーツが国際社会の課題解決へ向かうための道のりをこの先に切り拓いていかなければと思う。日本の質の高いカメラ技術が競い、新たなスポーツ表現のサポートが続けばこんなに嬉しいことはない。

しかし来年に延期された東京2020では、ライバルのキヤノンがオフィシャルスポンサーとなったため、スポンサーではないニコンがMPCへのデポを出せない可能性があるという。IOCやTOCOG(東京組織委員会)はフォトグラファの利便性をどう考えるのだろうか。それでも銀座があれば、世界のフォトグラファたちはMPCではなく銀座でサポートが受けられたのだが、感染対策で大会開催の行方が不透明な現時点では延期に対応した動きがとれなかったのかもしれない・・。開催へ始動となれば、サービスデポとして期間限定のニコン銀座復活はないのだろうか。世界中の話題になるだろう。
その時は、自国開催ならではの直接サービスやニコン独特なフレンドリーなコミュニケーションで、北京、パリ、ミラノ、ロサンゼルスへにむけて多くのファンのユーザーを増やすチャンスとなるかもしれない。

プロサービスの継続
NPSは10月23日より新宿へ移転しプロカメラマンへの機材貸与などの業務は継続するものの縮小となる方向性となっている。もちろんスポーツ以外のモチーフへの対応も山積みだろう。
銀座からなくなってしまうのは寂しいけれど、長い歴史もあり魅力的なものを作り続けてきたニコンなので、こういった状況を乗り切って素晴らしいものづくりとサービスで世界中の写真家をサポートしてほしいと切に願う。

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「銀座NPS最後の日」ということで筆者と写真家の山下さんと2人で訪れた。銀座を去るニコンを惜しむ写真家たちが詰めかけているかも?なにか近隣での催しがあるのかも?とよぎったが、行ってみると、ふつうにスタッフの方が出迎えてくれ、1Fのショールームは一部機の材だけが残され2階の写真展示は終了し、引っ越しの準備が始まっていた。

ニコンサロンでは、十勝の風景をモノクロで撮影した三浦健司さんの写真展「十勝晴れ」が開催されていた。銀座最後となる写真展はショールームが17日(土)の業務終了後、10月20日(火)まで開催されている。

銀座松屋では6月に延期となっていた第43回中古カメラ市が10月20日まで開催されている。地域を去るニコンプラザへ別れを告げるファンの集客を狙ったのだろうか。

(写真 2020年10月16日16時ごろ 山下元気 カウンターでの記念写真はNPS若山匠さんにシャッターを押してもらいました。)

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