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積読消化&太陽黒点観察

 先週末は剣道の強化稽古があり、午前11時から午後3時半までみっちり稽古漬けでした。ゲストの先生方もお迎えして細かい指導もしていただき、息子はもちろん私にとっても勉強になることばかり(チャンバラシーンの描写にたいへん役立つのです…)。
 ゲストの女性の先生が非常に清々しい、凛とした方で格好良かった!ブロンドのポニーテールでスラッとしておられるのに、惚れ惚れするほど力強く敏捷。言葉の端々に聡明さが感じられ、指導力も素晴らしく。『精霊の守り人』シリーズのバルサを思わせるような方でした(言わずと知れた上橋菜穂子さんの人気シリーズですけれども。大好きなんです)。
 ブロンド女性は無理があるけど、女性剣士のお話、いいかも…ちょっと書いてみたいかも…などと想像を巡らせておりました。

 さて、少し時間ができたので、積読状態だった本をいくつか読了。先日購入した『キャリー』(新潮文庫)、友人より借りた新海誠『言の葉の庭』(角川文庫)と小池真理子『月夜の森の梟』(朝日文庫)。

 『キャリー』面白かった!読み出したら止められなくなり一気読みでした。

狂信的な母を持つ風変りな娘──周囲の残酷な悪意に対抗するキャリーの精神は、やがてバランスを崩して……。超心理学の恐怖小説。

アマゾンより引用

 キャリーは精神的に常軌を逸した母に抑圧され、学校ではスクールカーストの最低辺で侮蔑や嘲笑の対象となっている少女。だが、キャリーには隠された力があって…という舞台設定がすでにゾクゾクさせる。
 ただ、恐怖小説というほどのホラー要素はありません。少女が大人の女性になろうとする多感な時期をホラー小説の形を借りて象徴的に描いてあり、それが実に巧み。冒頭のエピソードがそれを強烈に明示しているところが上手いなぁ、と感服します。血が繰り返し強調されるところも、女性性に否応なしに翻弄されるキャリーの心理状態を表しているかのよう。キング、男性にもかかわらず実に繊細にそこのところを描いています…(奥様がだいぶ助言なさったそうですが)。
 
 日本でも知られていると思いますが、アメリカの高校では最終学年にプロムナード、通称プロムと呼ばれるフォーマルダンスパーティがありまして。映画やドラマで見るような、12年生のカップルたちが着飾ってリムジンなんかで会場に乗り付ける、あれです。
 ちなみに、お金がすっごくかかるんです。男子はバイトしてタキシード代やリムジン代を稼ぐんですよね。まぁリムジンでなくたっていいんですが(女子もヘアメイクやドレス代でお金がかかるんだけれど)。男子はそこでいいところを見せようと頑張るらしい。
…ずいぶんと時代錯誤な印象なんですが、アメリカの高校生にとっては一世一代の晴れ舞台なのだそうです。私アメリカの高校生でなくて良かった…(心の声)
 話は戻って『キャリー』ですけれども。物語のクライマックスはこのプロムの場面。すべての緊張が頂点に達し、崩壊する。壮絶で強烈なカタルシス。
 どこかで、何かが違っていたならば。キャリーの怒りと嘆きを聞きながら、読み手はそう思うに違いない。
 奇をてらったホラー小説ではなく、思った以上に繊細に、誠実に、少女の悲しみと周囲の人々の悲しみを描き出した作品だと感じました。

 ところで、以前の記事に『キャリー』と宮部みゆきさんの『クロスファイア』に共通したものを感じるというコメントをいただいたのですが、私もそう思いました。ストーリーはまったく異なるのですが、異能を持つ女性が、女性ゆえの苦しみを抱えて葛藤する部分が似通っているなぁと。主人公が男性だったら、また男性ゆえの苦しみを抱えるのでしょうけれども。
 ただ、女性はそもそも男性に比べ身体的には圧倒的に弱い立場です。そこに異能という男性(というか人類)を凌駕する力が与えられると、男性以上に深刻な葛藤が生まれるのかなと感じます。元々身体が強い男性(弱い男性ももちろんいるにしても、大抵の女性よりは強い)がより強くなるのと、そうではなかったはずの女性がとてつもなく強くなるのとでは、やはり意味合いが異なるなぁと。望んでそうなるのならいいですが、欲しくもない力だったとしたら…。社会的な軋轢は途方もない。
 キャリーはその軋轢に耐えきれず社会から完全に逸脱する道を選び、『クロスファイア』の主人公は社会に留まろうとしたという点に違いがあるのかなぁ、などとつらつら考えました。
 
 あ、しまった。『キャリー』だけでもうこんなに長くなっている…。
 新海誠『言の葉の庭』、映画は未見なのですが小説はすごく良かった!新海監督、小説も上手いんですね…(震え)。繊細に積み上げられていく言葉が胸に迫りました。キャラクターが皆複雑な内面を持ち、静かな魅力を放っているのもよかった。読後感がとてもいい物語でした。おすすめ。
 小池真理子『月夜の森の梟』は、小池さんがご主人を闘病の末亡くされた直後からの心情を綴られた作品。悲しみ、憤り、孤独、虚しさ、それらを静かな、飾り気の無い言葉で綴っておられます。その穏やかさや静かさが、読了後も心のどこかに響いているような作品。伴侶を、大切な誰かを失うという悲しみの大きさ。生きている限り避けては通れない喪失に、どう向き合ったらいいのか。
 小池さんは、それに答えはないとおっしゃる。悲しみにはひとつとして同じものはなく、特効薬もありはしない。ただ、何かにふと心が和む瞬間は必ずある。寂寥の中にも陽が差す瞬間がある。そうぽつりぽつりと語ります。喪失を経験した人にもそうでない人にも、そういうものなんだよ、とやさしく語りかけるかのような作品でした。

 話は変わって、先週からニュースになっていた太陽フレア。巨大黒点が現れて通信障害などが生じるかも、と言われていましたね。日本でも北の方ではオーロラが見られたとか。
 当地ではオーロラは見られませんでしたが、黒点は観測できました。
 毎度お馴染み、逆さ双眼鏡の術〜!!

 下の方の黒っぽい部分が黒点。ゴミではありません。

 おおーボケていますが確かに見える!
 これだけ巨大だとはっきりわかりますね。滅多に見れない現象なので、たいへん興味深かったです。

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