見出し画像

葉だけの花束を作る

大学生のころ、男性に「葉だけで作った花束」を贈ろうとしたことがある。新宿駅構内の青山フラワーマーケットの前をうろうろし、店員さんにどうお願いすれば良いだろうかと散々悩んだ末、勇気が出ず未遂に終わってしまった。相手は今でいうミニマリストのような生活をしていて、後々残る物を贈るのが憚られた末の考えだったのだけれど、結局手ぶらで会うこととなり、珈琲だけでもと奢らせてもらいながら本人にそのことを話すと「ああそれは見てみたかったかも」と笑顔で返され、やはりダメ元でもお願いすれば良かったと後悔した。

その後大学を卒業し、縁あって花屋で仕事をすることになるのだが、「葉っぱだけで花束を作ってください」というオーダーは一度も受けたことがない。むしろそんなのが来たら即お断りだなぁと思いながら日々接客していた。今はカラーリーフの種類も増え、葉っぱと言ってもいろいろあるけれど、「値段相応の見栄えのある束」を作るのは難しい。そもそも、色とりどり・ボリューム様々な花を差し置いて葉だけを使う理由など、正直あまり思いつかないのである。

それでも、冒頭の出来事から15年ほど過ぎて尚、私の中では「葉っぱだけの花束」が頭から離れずにいた。昨年病気をして花屋を退職し、専業主婦としてのんびり過ごす中で、今ならあまり気負わずにそれを作れるのではないかとふと思い立つ。商業としては成立しないけれど、自分のために作って、写真で残すくらいなら、と。

葉っぱだけと言いながら、うっかりシロツメクサを摘んでしまう。まぁ春らしくていいかなとか思いつつ束ねてみる。

野草を束ねたあと、街路樹の徒長したドウダンツツジ、ベランダで育てているミスカンサス、冷蔵庫で眠っていたサニーレタスなどを気ままに足していく。

朝日新聞の某連載のパクリのようでいまさら逃げ腰に…次回からは気を付けます…。

とりあえず、記念すべき第一号はこんな感じに。以降、季節折々に「葉だけの花束(葉束?)」を作ろうと思う。

20160523
ホソムギ・ヒメコバンソウ
シロツメクサ・ミスカンサス
リシマキア・ドウダンツツジ
サニーレタス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?