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#144 Fuck-you Money より、 Fuck-you Skill を、 上司の罵声には論理を✨

note の街は日本にあるので、このタイトルは許されると思っています。もし note 事務局からご注意を受けたら、全箇所を上品な表現に変更します(笑)3部作エッセイの3本目は、来週月曜日から新天地での生活を始める大切$${^{100}}$$な友人へ送るメッセージです。



Fuck-you Money って何だ?

みなさんはこの表現を聞いたことがあるでしょうか?難しいことではなく、主に職場で上司との意見が合わず、あるいは不適切な扱いを受けているような時に、

この無能上司が!こんな会社、辞めてやる!

ご経験ある方、いますか?

と言って飛び出しても、「次の職を得るまで問題なく暮らしていけるだけのお金」という意味で、この表現を生んだアメリカの感覚では、おおよそ年収一年分くらいを意味するようです。もちろん年収は人によって違いますが、日本の場合だと大体500万円前後くらいの感覚でしょうか。

これは、その程度の金額があれば、いつでも上司に「この馬鹿野郎!」といって会社を辞められるからいいですよ、という意味というよりはむしろ、「いつでも辞められる状態を準備しておくことで、冷静に自分の職務適性を判断できる」と考えるのが良さそうです。そんな Fuck-you Money、確かにある方が良さそうですね。でも、それを貯めている間は、どんな風に過ごしますか?

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AI 研究者の前は、 BI 担当者だった

僕は現在、オランダの大学で「AI の教育応用」の研究をしています(下記記事をご覧ください)。オランダに来る前はドイツにおりましたが、それ以前は日本で普通に会社員をしていました。そして、僕が最後に担当していた業務は、AI ならぬ BI(= Business Intelligence)ツールの保守管理でした。長年の会社員生活の中で、ほんの少しだけ海外営業・マーケティングを外れた時期があったのです。

勤めていた会社は規模が微妙で、在籍していた途中まではいわゆる「基幹システム」が導入されていませんでした。経理は会計ソフトを使う一方、営業はエクセルシートで営業実績を管理するという、今思えばかなり危ないやり方をしていました。日本国外での売上比率が高い会社だったので、後に基幹システムを導入した際にも、国際基準での売上管理をシステム上で実現するのはかなり難しく、業務委託したシステム会社のSEさんも頭を悩ませていました。

基幹システムが無事稼働し始めた後も、社内の各部署が「どうやって必要な情報を基幹システムから引き出すか」の部分で課題が残りました。ここで注目したのが BI ツールでした。基幹システムに含まれる各種データのうち、必要なものを必要な形式で、「ダッシュボード」としてプログラムして可視化するツールです。この記事の読者の方も、多くの方が日々会社でそんな「ダッシュボード」を活用されているのではないでしょうか?

手を挙げるか、下ろすか

基幹システムの導入が一通り終わり、「次は BI ツールの整備だ!」となった頃、社内で一つ疑問が出ました。それは、

BI ツールで可視化したいのは特に営業および資材のデータ。しかし IT 部門は営業や資材の業務を十分に知らない。誰か、BI ツールの構築をできる人はいないか?

社内でどこからともなく出てきた疑問

でした。当時、BI ツールを扱ったことがある人は社内に誰もいませんでした。IT 部門の責任者は急いで勉強を始めましたが、プログラミングの部分は大丈夫として、ドメイン知識である営業と資材のことは素人です。両方できる人材がどうしても必要になりました。もちろん僕が在籍していた営業部にも声がかかりました。

営業部の他のメンバーは全員、「私は、僕は、そういうのは分かりません」と手を下げました。僕はそれを見計らって、

僕がやります!

最初からその気でいた、というか「僕がやるから導入しましょうよ」と根回ししていた

と手を挙げ、勤務時間中に BI ツール構築の勉強をすることを認めてもらい、見たことも触ったこともないツールをいじくり、勉強を始めたのです。社外の研修にも参加させてもらい、いい刺激を得ました。半年も経つ頃には、各部署から「こんなデータを、こんな風にして見られると助かるんだけど」という要望をもらって、その要望に応えるダッシュボードを作る仕事をしていました。しかし、そんな僕を見ていた周囲の反応は冷ややかなものでした。それは、

これまでと同じ仕事をしていれば楽なのに、わざわざ難しいことを引き受けて……

こういう人たちはスルーしよう

というものでした。誰も手をあげなければ、仕方なく会社がお金を出して、BI ツールの管理を外注すると思っていたようです。

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Fuck-you Skill って何だ?

ここでタイトルに戻ります。僕は結局その後、会社の仕事よりも「AI の教育応用」の研究により価値を感じて会社を辞めたわけですが、それが可能だったのは BI ツール担当者として「データの取り扱い」の基礎を学べたことが大きかったです。

アメリカ人が言うような Fuck-you Money をちゃんと貯金して、これぞという時に、「この無能上司が!こんな会社、辞めてやる!」とやるのもいいですが、あまり知的で品がある行動とは思えません。それよりも、「いつ会社を辞めても次の仕事に活かせる」、言うならば Fuck-you Skill を磨いておけば、貯金の残額に関係なく、会社から精神的に独立していられます。

考えてみると、「毎日ひたすら我慢して、時折贅沢なディナーを自分にプレゼント」しながらどうにか Fuck-you Money 500万円を貯めたとしても、そのお金を使い切ってしまえば何も残りません。我慢する代わりに、「会社にいる間は、気に入らないながらも、その環境を利用して、他社へ行っても通用するスキルを磨く」という発想で毎日を送れば、その間に貯めたお金に「未来を生き抜くスキル」がついてきます。その方がずっと素敵だと思います。

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BI 担当者のさらに前は、CI 担当者だった

その会社で BI 担当者をしていた頃からさらに約10年前には、実は別の会社で海外営業の一環として、CI(= Corporate Identity)を担当していました。商品、広告など企業活動の全体を通して一貫性のある企業イメージを発信する仕事で、海外代理店の意見も聞きながら、カタログや商品発送の際の梱包箱のデザインを一新しました(一部は現在も使われているようです)。つまり、AI にくる前は BI を、そのさらに前は CI をやっていたんですね……

本当になりつつある冗談

こんな履歴の持ち主なので、周囲には、CI → BI → AI と進んできた。A がアルファベット1文字目だから、それより前はない。ということは、「AI の次は I だっ!」と話していました。当時は冗談だったのですが、オランダへ来てそれは現実になりつつあります。やはり言霊のなせる技でしょうか。

僕が今所属する研究室は Human Technology Interaction (HTI) 、直訳すれば「科学技術と人間の相互作用」、もう少し説明を加えるならば「人間が人間らしくあるために、科学技術とどう協働・共存するか」を研究する組織です。そしてここで言う「人間が人間らしく」の部分は、まさしく「 I 」(私自身)です。

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3部作のおわりに

6月からはおそらく僕の note 読者の方が思いもよらないような内容のシリーズを始めるので、これまでのようなエッセイはしばらくお休みします。
 そして、3部作最後のこのエッセイは、明日6月1日付で憧れの業界に就職し、全くの新天地に足を踏み入れる、「しあわせ探求庁」プロジェクトパートナーの miori @ しあわせの探究 さんに捧げたいと思います。第1作『眠り姫』の時と同じく、メッセージです🌱

Dear miori,
新しい世界は大変だと思うけれど、
きっと5年前に君が憧れた姿
君が僕にいつも言ってくれた通り、
どんな時もその瞬間を味わって
それでも、君の笑顔が曇りそうな時には、
いつでもその場所から抜け出せる勇気と術を

何があっても君の味方です

今日もお読みくださって、ありがとうございました☕️🍩🕯️
(2024年5月31日:エッセイは今日でしばらくお休み〜)

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