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親と親じゃないはざま

曇り空、自律神経が乱れているのか右耳に閉塞感を感じる。ダウンコートの首元をキュッと寄せながら、少し足ばやに歩く。向かったのは世田谷区、羽根木の花屋で開催されているフリマ。

店に入ると、色とりどりの少し先をゆくあ季節の花。少し進んだ奥まったスペースに洋服がぎっしりハンガーに吊るされ、並ぶ。どの服も持ち主の個性を表し、ブランドものやデザインの凝ったものたちが次の持ち主を待っている。

大人の洋服には目もくれず、私が向かったのはキッズ服コーナー。IKEAの三段ワゴンと一つのラックに小さな服が重ねられている。ポポちゃんの着せ替え服みたいだなと思いながら、一つひとつを手にとり、みていく。実感が湧かなくてわからん。でも、どれも可愛い。手放したら他の人が買ってしまうかもという不安感から、数着をキープする(ちょっと恥ずかしいフリマ根性)夫と服を手にあーでもないこーでもないと言っていたら、声をかけられた。「それ、お気に入りでよく着させていたんですよ」と屈託のない笑顔。初対面でも伝わってくる、周りを明るくするような人柄。「4月に生まれるんですけど、どれを選んだらいいかわからなくて」と伝えると、「可愛くても、着れないものは絶対買わないほうがいいですよ!」「4月だったら、これとかこれとか。これは生地感が気持ちいいんですよ〜」と押しつけなく、4月生まれでも着られる服を選別してくれた。その方のお子さんが着ていたときのエピソードも添えて。

結果私たちは、生後6ヶ月〜1歳半に着れそうな洋服を10着ほど譲ってもらい、帰った。

買ったものを手に取りまじまじと見ていたら、それまで全然生まれてこなかった「子が生まれるのだ」という実感が湧いてきた。洋服によって、子の輪郭らしきものが見えた気がした。その服を着て、泣いたり、笑ったり、走ったりする子の姿が浮かんだ。

この日を境にお腹に話しかけるようになった。そうしたら、子も胎動で声かけに応えてくれることが増えた(気がする)。「元気ですか?」「今日は疲れましたね」。距離感がわからず、敬語になる。

想像もしてなかった急激な身体の変化。終わりの見えないつわり。仕事と生活の両立。将来への不安。妊娠してから目まぐるしい日々に、自分のことで正直精一杯だった。まだまだ自分優先。こんなんで大丈夫なのか?と思う。と、同時に親なんだと認識するのはもっと先なんだろう。肩書きや役割を与えられても、急にそれにはなれないように。時間の積み重ねが必要なんだろうなと思う。


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