見出し画像

初期の地球環境の記録〜最古の鉱物〜

約46億年前、地球は太陽系周辺の微惑星の集積に伴って形成された。形成当初の地球は度重なる隕石衝突のエネルギーが熱として蓄積されることによって溶融しており、地球全体がドロドロに溶けて「マグマオーシャン」と言われる真っ赤なドロドロ団子状態だったと考えられます。

その当時は今の地球のように密度に対応した固体金属や液体金属からなる核(主に鉄-ニッケル)やケイ酸塩(ケイ素と酸素の骨組みに様々な元素が入り込んだもので、多くの岩石鉱物はケイ酸塩鉱物からなる)のマントルへの分化が進んでいなかったと考えられている。

それらが真っ赤なドロドロ状態から冷えていく過程で、重い鉄やニッケルは地球深部に落ちていき、残り物のケイ酸塩はマントルに分化し、揮発性のガスは脱ガスして大気が出来上がって行った。ガスは地球重力に引っ張られ地球表面にとどまっている。このガスは地球に降り注ぎ原子の海が出来上がる。

しかしこのような初期の地球の様子はどうやったらわかるだろう。

それを教えてくれるのが「石」である。

石はいわゆる岩石で、その岩石は鉱物からなっている。鉱物とは一般的には一定の化学組成を有した無機質結晶質物質のことを指す。つまり二酸化ケイ素(ガラスとか石英)、のようにある一定の組成を持ったものが規則的に配列している固体、である。これがたくさん集まったものが岩石である。

ちなみにガラスは実はアモルファスと言って、規則的な構造を持ってないので鉱物ではないし、雪はH20(水)が規則的に配列して結晶を持った固体なので鉱物と言える(はず)。

雪の結晶を想像すればわかるように、ある鉱物の形成は出来上がる環境の温度や圧力、周りにある元素の濃度などに支配されているから、鉱物、ひいては石は形成当時の環境を逆算して推定することを可能にするタイムカプセルと言えるのである。(鉱物は連続的に姿を変えるので様々な検証が必要なのはもちろんだが。)

前置きが長くなったが、初期地球で形成された石があれば、当時の環境を窺い知ることができるのではないか.

ということで発見されたのがジルコン(ZrSiO4)という鉱物!

直径が1mmにも満たないジルコンは、ウィスコンシン大学のジョン・バレー教授が率いる研究チームによって2001年に西オーストラリアのJack Hillsと呼ばれる地域で発見された(実は僕が分析にお邪魔した研究室はこのジョン・バレーさんの研究室でした)。詳細な分析の結果、地球誕生から1億6000万年前後、現在から42億年前に地中で冷えて結晶化したものであることが裏付けられた(Wilde, SA; Valley, JW; Peck WH; Graham CM. 2000. Evidence from detrital zircons for the existence of continental crust and oceans on the Earth 4.4 Gyr ago. Nature. 409, 175–178.)。

さらに同じくウィスコンシン大学の研究チームはU-Pb (ウラン‐鉛年代測定)からそれらが44億年前には結晶化していたことを報告した(Mojzsis, SJ; Harrison TM; Pidgeon RT. 2001. Oxygen‐isotope evidence from ancient zircons for liquid water at the Earth’s surface 4,300 Myr ago. Nature. 409, 178–181.)。

ジルコンは花崗岩(現在の陸を形成する主な岩石)などシリカに富んだ火成岩を構成する鉱物であり、花崗岩を構成する石英や長石などのほかの鉱物に比べて風化作用や変成作用に強いために残っていた。つまりジルコンの存在は大陸地殻がすでに形成され始めていたことも示唆している。

またこの鉱物の酸素同位体比からそのジルコンが低温の水との相互作用によって形成されたと解釈された。つまりこれは当時すでに海ができていたことを示唆するものでもある。

このように、太古の岩石の中の1mmにも満たない鉱物から、地球形成後わずか数億年で大陸や海が出来始めていたことがわかってきたのである。このJack hillsとジルコンは地球史における大変重要な位置を占めていることは確かである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

U-Pb法についてはまた別の記事で説明します。

酸素同位体比の議論についても。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?