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前期授業@政策研究大学院大学


『21世紀博物館工学』
文化政策コースは必修らしい。そのため、ほかのクラスだと関わることの少ない文化政策コースの学生と接点ができる。東大博物館の先生が担当。ものの見え方、みせ方、「なにかを展示保存する機関」としての博物館の在り方などを扱う。あまり考えたことのない内容であり、またそもそも文化関係の学問分野がどういう分野なのかを知りたくてとってみた。現地見学もあって、今年は東京タワーの展覧会にいって音響インスタレーション作品の解説やその技術的な話をしてもらった。各自が「これは展示としての価値があって博物館の一種だ」と思うものを紹介する、という発表がある。

『日本政治と理論分析』
高名な政治学者である教授。選択科目だが、必修にしてもよいくらいいまの日本政治の状況を掴ませてくれる内容で今期でもっとも満足度の高い授業のひとつ。
制度の解説、戦後〜現代の政治史、政治家個々人のキャラ、選挙戦術や族議員、野党のあるべき戦略などを講義していく。個人的には、歴史的経緯から派閥への流れがわかったことや、参議院に強い権力があること、野党の大戦略(第二の保守政党を目指すのか、中道リベラルを目指すのか)あたりの話が特に面白かった。レポートと期末試験とダブルで評価があり、これから負荷がかかってくる科目。

『経済理論と展開』
元大蔵官僚の先生による、人口動態と経済政策/労働政策/都市+地方政策/福祉政策の授業。2000年代に人口減少と経済予測のような分野でベストセラーを出した先生らしい。いまはひたすら講義だけど、後半はグループごとに経済政策を考えて発表して議論する。

『中小企業経営と地域経済』
タイトルとはちょっと違って、中小企業社長がそれぞれの体験談を語るオムニバス形式の授業。ハマるかどうかは来た講師の社長にもよるけれど、東大ベンチャーの話とか聞けたのはよかった。昔ながらのおっちゃん的ひと、革新かつ努力家のひとなどいるのもわかりつつ、ここ10年を生き抜いてきた社長たちに、「新自由主義的」「働いて稼いだものが偉い」という価値観を感じることがときどきあって、それには違和感。

『社会保障総論』
医療政策コース必修科目。元厚生労働省官僚による講義。行政にとってやっぱり大きな課題なのかかなりたくさんの受講生がいる。人口動態、医療、介護、社会保険、年金、生活保護、障害者福祉、児童、労働などレビューしていく。情報量が膨大で授業内でスライドを解説しきれないほどなので、スライドの予習があるが、それも結構量がある。国会答弁や委員会での議事録から法律改正などの意図を解説してくれるところが非常に面白い。授業コメントを出席確認としてメールするが、その質問に対する教授からの返答がめちゃめちゃ丁寧。医療職以外の立場として、一般の人や行政のひとがどのように社会保障をとらえているのかと、それに対する教授の認識が読み取れてとても勉強になる。

『災害リスクマネジメント』
防災コース必修。昨今の日本や世界での災害の概要と、建築や都市計画面での防災についてを前半で扱い、後半は事業継続計画について扱う。自治体関係者のほか、インフラ関係の会社からの受講生が多い。災害医療にばかり目が行きがちだったが、行政や世の中的には防災というのは大きな分野でそのなかでもハードというのがメジャーな分野であることがよくわかる。BCPについても安房で災害会議にでるようになって初めて知ったことだったので勉強したかったので。

『計量経済学』
何かと思ったら内容としては、生物統計学とかなりかぶる。周りは文系出身が多いのでみんなかなり苦労している。ただ…疫学と用語が違うのと、因果関係に対する認識が根本的に異なる。穿った意味ではなく、経済学理論の頑健性の弱さがよくわかった科目。基礎科学と応用化学、基礎医学と臨床医学と疫学、科学と社会科学の違い。数式と統計を社会に適用するときに考えることを改めて考えさせられる。疫学や医学統計とは似ているようで、根のふかいところで異なると感じる。

『地方自治と行政学』
地方自治体の話だけかと思いきや、国会や内閣のような中央の制度や中央/地方に共通する制度などを体系的、網羅的に触れていく授業。
行政学の歴史から始まり、自治体合併、議会制度や官民連携、公務員制度改革など。
地方公務員の受講生が多くて彼らが事例紹介してくれるのが面白い。

『Japanese economy』
英語開講科目。戦後日本経済の全体像を時代ごと、テーマごとにマクロ経済的にレビューしていく科目。
僕以外は、パキスタンとカンボジアの財務省的機関とマレーシアの労働省的なとこからきてるYoung leadership programというコースのひとが受講している。経済関係の英単語に苦戦。

『費用便益分析』
聴講のみ。ある政策にどれくらい費用がかかって、どれくらい利益があがるかをミクロ経済学を使って分析する方法。ほか授業との兼ね合いで一部出席できないので最後までついていけるか不明だけれど、日本語でよい資料がない分野なので配布資料と話をきけるだけで貴重。

『Japanese foeign policy』
英語科目。戦後日本の外交史を、国内政治との関係性を踏まえながら解説していく。この分野で著名な北岡先生の講義を受けられる。毎週英語の一次資料を課題に出されるのでそれが大変。日本人のほか、オーストラリア、フィリピン、台湾、チェコなど様々な人が受講。

『安全保障論』
おそらく体系的な講義を受ける機会がなかなかない分野。
自衛隊、海上保安庁、外務省、国際協力関係の受講生がほとんど。
孫子の兵法やクラウゼヴィッツから始まり、法制度や国際関係論、シビリアンコントロールや日本含む各国の軍事、核、サイバーなどについて触れていく。

『医療政策論』
医療政策コース必修科目。
元厚労省官僚の島崎先生が、明治以降の歴史経緯、制度ごと、国際比較などの切り口で医療制度を解説していく科目。いまの制度や課題だけにとらわれるのではなく、外国からの移植でもなく、日本での医療制度の歴史にきちんと整合した提案をするように叩き込まれる

『政策過程論』
個人的ベスト授業。政治学者かつ政権経験もある教員。社会課題に関心がある全員に勧める内容。
政治の内容ではなく、なにかが問題になり決定される「形」を学ぶ哲学ぽい内容の授業。「政策の窓モデル」やEBPM等は有名だが、モデルというより人間の意思決定と合理性や科学の限界を認識させられる。

『ミクロ経済学2』
春前期にあったミクロ経済学1の続き。実社会で市場がうまくいかない場合に限ったミクロ経済学を扱う。公共政策の大学院だからか、それに対する税や規制などの介入についての解説や過去の実例が中心。公害、交通、公共投資など含めて扱う。

『食料農業農村政策概論』
農業政策コース必修。
はじめ2回くらいは日本の農業政策史の講義があって、それから毎週2人農水省官僚が各分野の講義をしてくれる。受講生は地方自治体の農業担当のひともいて、講義後の質疑が充実している。家畜、農村イノベーション、米政策などテーマは様々。

『Energy policy in Japan』
英語科目。エネルギー安全保障、エネルギー政策、エネルギー関連科学技術の連続講義の中で1つだけ受講。周りの受講生はオーストラリア、パキスタン、カザフスタン、バングラデシュなどの政府出向。全体にエネルギー資源庁の視点だが全体を冷静に捉えられる機会は貴重

『地方行政論』
地域政策コース必修科目。地域史と法律の視点を軸に地方自治体の行政各分野を解説していく。法律論と現場の不整合の事例紹介や江戸時代からいまの自治体制度に移行するときの混乱などの話が面白い。

『外交戦略論』
安倍政権でNSC創設に関わった元外交官による授業。外交と安全保障の日本の大戦略についての講義が主眼。内容もだけれど、官僚がいかに政治家と付き合うべきか、とか、価値観外交のあり方についてなど概念の話が面白い。






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