政策研究大学院大学@秋学期の講義を紹介します

秋学期ももう少しで折り返しなので、後期の授業の紹介
小規模な大学なのでいろいろ工夫の余地は感じるのだけど、
やっている内容や構想は共感するので、地方公務員主体だけではなく、もっと中央官庁も増えて、医療関係者も含め、政治家や実業家、NPOの人などいろんな人が出入りする大学になるといいな、と思っています。
GRIPSについて考えていることはまた卒業が近づいてきた時点にしますが。

前期の講義については別記事。

<夏学期>・医療政策特論I医療政策コース必修。夏の短期研修の方向けの授業を合同。厚生労働省の局長係長級の方が各政策分野についての話が8割、医師や看護師など現場や自治体などの実務家の話が2割(印象)。オムニバス形式だが網羅性は高い。1日4-5コマ、平日3週間くらいと短期集中で講義数を行う。

<秋学期>
・医療政策特論II
医療政策コース必修。医療経済学、学生各自の修士論文テーマに関連する講師による講義、修士論文のゼミ形式での検討会など内容は様々。テキストとしては河口洋行先生の「医療の経済学」

・財政政策
財政学で著名な井堀先生による講義。だが、受講生は僕一人。財政やマクロ経済の計算をするだけではなく、日本で問題になる社会保障と税についてや政治経済学に関係する分野も触れる。マクロ経済学とあわせて受講することで相乗効果がある。

・日本経済の現状と課題
元経済財政担当大臣である大田弘子学長の講義。経済産業政策についての講義と週ごとのテーマによる討論で構成される。規制改革の推進役であった先生だが授業ではどちらが正解、というよりも意見が対立する「根本」にある価値観の相違に目を向けるように促される。Uberの解禁や農地規制、最低賃金などで議論を行った。

・都市学の理論と実践
そもそも都市とは?という話が1/3、都市計画についてが1/3、都市にまつわる政策テーマのディベートが1/3。担当教員は、渋谷再開発や東日本大震災後の復興計画などに関わる都市やインフラ分野の著名な先生である岸井先生と家田先生の2名が担当している。道路の拡張や再開発をする際などにどのような事業手法を用いているかというような実務的な話もありつつ、「ひとにとって暮らしやすい都市とはなにか?」という概念的な話まで扱う。

・国土政策と社会資本整備
こちらも土木、国土計画分野で著名な森地先生による講義。人口動態やグローバル市場など踏まえ、どのような国土利用をしていけばよいのか、人口、都市計画、観光、交通など様々な分野にわたって解説する。工業地帯として栄えて栄えた太平洋側の都市はいまは製造業からサービス業に移ってきており、製造業などは中国韓国などのほうが日本より有利なため、海上輸送は日本海側を経由するようになってきており、これを踏まえて日本国内の都市や港湾をどのように整備していくか考える、などといった話題。

・食料農業農村政策特論II
農林水産省高級官僚を引退された先生による授業。農業や畜産業を中心に、政策や行政とはなにか、自然を利用する産業としての一次産業をとらえる文明論、環境とどのように向き合っていくのか、という公共哲学的な内容。他の分野でも同様に感じるが、気候変動/環境問題も含め近代/現代国家としての役割や機能は西洋文明を前提に積み上げられていて、それをどのように日本社会に着陸させるのか、ということが繰り返し指摘される。

・The Making of Modern Japanese
前JICAの長の日本外交政治学者である北岡先生による英語開講科目。主に外国人留学生対象にしている。今学期は聴講にした。江戸時代末期から近代日本を成立させるに至った経緯を主に思想史の観点から話している。福澤諭吉の「福翁自伝」「文明論概略」、中江兆民などがいまのところの課題図書。

・政府と市場
ミクロ経済学の授業。「やばい経済学」などをベースにして各受講生が興味のある話題についてミクロ経済学的に解釈してプレゼンをする授業。各自の専門分野があるので業界内部の話がきけて面白い。僕自身は医師の不足と偏在+医局講座制+医師のキャリア形成+医師の労働市場というテーマで。

・International Relations
英語開講科目。留学生がほとんどだが、日本人もあり、昨今の政情もあいまって受講生があふれ、大講義室へ移動。テキストはジョセフ・ナイの「国際紛争 理論と歴史 第10版」。聴講として参加。

・医療経営論
医療政策コース必修科目。内容は経営学の授業であり、主に病院経営などをテーマにしている。対話的な講義のときと、ケースディスカッションのときがある。

・マクロ経済学
これはタイトルそのままの科目。内閣府などで経済分析をしていた教員による講義。別講義の財政政策とあわせてとることで理解が深まっている。2コマ連続なので11月いっぱいで終了

・エマージングテクノロジーのもたらす社会変革と公共政策
電磁波、AI,ビッグデータ、宇宙、量子コンピュータなどの新しい技術と社会実装について、各分野の専門家が講義するオムニバス形式の授業。産業や科学技術だけの話かと思っていたら、安全保障関係の話も多く、そのような回のレポートにちょっと苦戦 ただ内容は自分で勉強するには大変な分野なので、知識を仕入れるのにはよい。

ほか、以下の科目は興味があったけれど、時間割の関係などで登録できなかった科目。
・地方行政特論:総務省官僚による地方自治についてのオムニバス形式の講義
・自治体改革論:こちらは各地域における先駆的な取り組みについて、行政官やNPOなど立場を問わない方から講演をうけるオムニバス形式
・食を通じた地域振興:農業関連の授業。農業や食品産業による町おこしや新規事業開発の事例などのオムニバス形式。
・新興国における科学技術イノベーション政策:英語開講科目
・安全保障論:英語開講科目。前期ですでに安全保障論をとっていたので。
・東アジアのInternational Relations:英語開講科目。東アジアの国際関係論を通じて「国家戦略」「大戦略」について学ぶ、という内容らしい。面白そう。

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