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街眠る5:29特等席

おはよう今日、今530
わたしの誕生日と同じ時間になりまして、ちょっぴり良い気分。

一度付けた電気を消して、少し開けたカーテンの隙間から道路を挟んだ正面のマンションの階段に、星座みたいにお行儀良く光る電灯を何故だか薄目で眺めてみる。マンションの後ろはまだ深い夜。深海みたい、うん、良き良き。
実際に後ろの方から大きめサイズのアンコウとか出てきたらちょっと嫌だな。と有りもしないゾクゾク感で脳を刺激して遊んでみる。

そういや、そんな感じの映像がDragon AshのMVにあったような。昔好きでよく観てたのよね、そうそう。この映像の雰囲気が好きで。「運命共同体」だったかしら。船が空を飛んだり潜水艦になったりしててロマンチックだった!

昨日も書いたのに今日も日記を書いてみる。
いつも全然書かないのに、この気まぐれ、そしていずれ全く書かなくなる。間違いない…
飽きっぽいわたしの新しいこと初めては飽きての繰り返し黒歴史が今後どう変化していくか淡い期待をしながら、未来の自分に託しましょう。

AM4時頃、わたしのすきな人が仕事で目覚める。毎日じゃないけど一ヶ月に数日そういうのがあって、決まってその日は彼にとってとてもハードで大変そう。
アラームかけても携帯が振動する前に目覚められる、わたしには絶対できない彼の凄い特技!を披露してくれる頼もしい朝でもある。

低血圧で朝が弱いわたしがその後、なんとなくノロノロと起きて慣れない手つきで下手っぴな珈琲を淹れる。お香を立ててライターで火を付ける。コーヒーとインセンスの香りを朝の冷たい空気と一緒に吸い込んで、2杯目の少し薄い珈琲(それが好き)を飲む。それでわたしの仕事はおしまい。残りの時間は、まったり人の準備を観察するだけ。

わたしがこの時間起きたら二度寝で寝坊して支度でバタバタするオチだ、と本気で彼が心配してくれている。その忠告を耳の導線から頭にBGMかの如く流しつつ、朝の心地良い香りたちと、彼の吸った煙草の匂いをブレンドしてまだ眠い脳みそが夢見心地で自分勝手にその話をスルーする。

わたしの感情の方は呑気に、そんな優しい彼は今日も今日とて格好良い。と謎の再確認を済ませて心をぽかぽか満たしてご機嫌でお見送りをする。

そして電気を消してベットにごろん。お布団をきちんと掛けて暖かくして窓から街を見てる、ここからはひとり。好きな時間を独占する。

わたしの完璧な特等席(いや寝てる)の完成。この有意義な時間を味わえるのは彼のお陰なのだ。だけどわたしがここまでこの朝に幸せを感じて優越感に浸っていることを、どう説明しても君にはわかってもらえないのかもしれないね。君はいつも仕事だから、愛おしいひとを見送ってその人を想いながら浸るこの時間は味わえないね。可哀想…朝出勤の遅い人の特権さ。

そして色々物思いに耽る。
正面のあのマンション、最上階までの階段の側面が滑かな形状で綺麗。とか、一番上の恐らく十何階くらいかの高い位置から転落したらどのくらいで気を失うのかな、あの高さじゃ気なんて失えないまま地面に着いちゃうんじゃないかしら、わたしって何にもそういう事に何も関心が無かったから、転落時科学的に人が気を失うまでどのくらいの時間が掛かるのかも全然知らないんだなぁ、とか。知らない何処かの転落事故や架空の遺族の哀しみ、自分の愛する人を失ったときのこととか、不意に思ってみる。

最近、大岡信を教えてもらって、詩を読んでみたのだけど、こういうのんびりとした瞬間に彼の詩を思い出すことが多い。感情の起伏が無くて穏やかな時は特に。
谷川俊太郎選の茨木のり子の詩集の最後の方に大岡信との対談が載っていて、そのやり取りから大岡信の紳士的、内側の優しさ、言葉選びの慎重さ、そういった節々から甲斐見える人柄を知れてより好きになってしまった。

個人的には、彼の詩は刺さるものが多くていつも泣いてしまうのだけど。毛並みの良い犬みたいにきちんと並んだ言葉が美しくて。優しい雰囲気。静かな怒りの恐ろしさ。上品でいてあえて品の無い言葉も作れる大岡信は正義っぽい、でも汚く聞こえない。とても格好良い人なのです。

女性目線の感情をとても繊細に表現していて素敵…いや、ちょっと女性が思うよりも繊細じゃない…?とはっとするところもしばしば。見習わなければなりませぬ。

深いところまで落ちたり、存在意義がわからず迷子になったり、頑張れと言われても頑張りたく無い我儘な衝動に駆られた時にさっとページを開くだけで何か必ず得られる不思議さと、きちんと浸透してこころを潤してくれる魅力。だからわたしは沈んだら定期的に、清潔な彼の紡ぐ言葉で汚れた部分をお掃除することにしてる。

おっと、もう明るいじゃない。

このままの寝落ちが気持ちいいんだ。
今日も二度寝。起きてからバタバタしないことを祈るとしよう。

宇宙も世界も優しさで溢れてグルグルダンスして、愛おしい人の一日がご機嫌になりますように。

おやすみ。始まったばかりの朝。

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