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横浜FM戦:また会う日まで

開幕からカップ戦含めて6試合目にしてようやくキャンプを終えて本拠地に帰ってこれた我等が札幌。数年前なら3月第2週がホーム開幕戦だったし、ドームが出来る前(ノノが選手だった頃)は3月の末から4月にかけて室蘭で開幕するのが普通だったよなあ。年々前倒しになっていく日程は雪国クラブにとってどんな負荷になっているんだろう。

今年はキャンプに加えて序盤チーム内のコロナ発生もあったから、コンディション調整が遅れている選手もいるよとノノがラジオで話してた。そうだよなあ。キャンプから戻ってきて暖かくなって落ち着いてくるまでの苦しい間をどう乗り切るかなあ、と思いながら見ていた序盤戦は3連続引き分け。

そんな中で迎えた横浜FM戦。
ノノが最後の試合ということもあったし、それ以上にやはりリーグ戦今季初勝利がほしかった。けど、去年の話で言えば結果的に3位までに入ったチーム(川崎・横浜FM・神戸)との対戦成績は6戦全敗で、力のあるクラブに対してはまったく歯が立たなかった。今季も、ACLの関係で消化試合数が違うとはいえ川崎も横浜FMも昨年通りの強さを携えていそうで、そういうチームから勝ち点3を奪うのは、いくらやる気に満ち溢れていてもそう簡単じゃないだろうなあと、予想はしていた。

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2週間前よりは雪山の高さが低くなったドーム前。それでも例年に比べたらたいへんな量。
一般入場の始まる頃合いにたどり着き、今季は先行入場の枠があるから一般の列に並ばなくてもいいなって思ったら、そもそも一般の列はすでにドームの中に吸収されたあとで並びの列が存在しなかった。拍子抜けと同時に、今日もあんまり動員多くないのかなって思ってしまった。

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この布は都合4枚用意されていた

ノノ会長にメッセージを送ろうということで設置されたブースに行くと、10cm角程度の小さなスペースに収まるように書いてくださいとお願いをされる。早い時間に行ったはずなのにその指定された小さなスペースすら見当たらないほどにはたくさんの長文メッセージで埋まっていた。思いの丈が溢れてる。

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会場内ではこの日もたくさんの「久しぶり」の人達に会った。大半の人達はSNSでも繋がっているから言うほど久しぶり感はないんだけど、それでも実際に顔を合わせると「会ったな~」って気持ちになる。
空いてる席をギリギリで買っちゃうよね、やっぱりなかなか怖くて来たい気持ちにならないよね、去年は半分も来れなかったかな、アウェイなんてとてもとても。

自分が会うような人達はみんなそれまでホーム皆勤か皆勤に近いレベルで足を運んでいる熱心なファンがほとんどだ。そんな人間の足をすら遠ざけるコロナを今日も呪うも、こんな生活が2年も続くと元の世界にはもう戻らないんだろうなという諦念も芽生えてくる。

人との距離を取るのがあたりまえになって、自分自身周囲に人のいない席を選んでる。声を出す応援に戻って欲しいと願いながら、大声を出す人達が後ろに来るといい気はしない。
2年前までは会場でボランティア活動を共にしていた人達と会っても「今やれることがないよね」「人も入ってないし」「レジャーとして気軽に選んでもらえる場所じゃないよね、リスクあるし」なんて苦笑いする。Jリーグを含め、大勢の観客で賑わうのが楽しかったイベントにとってはとても難しい時代。


それでも会場に足を運ぶ体験は、家のテレビで見るものとは全然違うもので。
大勢集まった横浜のサポーター達の叩く太鼓の音の厚さ。前の席に座った親子連れは男の子達がおそろいのシャツを着ている。そのシャツを脱いだら下には赤と黒のレプリカ。周囲のお客さん達のなにげない会話。溜息。マスクの下の控えめな歓声。

横浜FMとの対戦は、ここ数年勝つにしろ負けるにしろ「とても面白い試合」になることが多い。この日の対戦もそう。変な言い方をすれば「作画がいい」。相手の良さを消すのじゃなく、どちらがより魅力的であるかを競うような、そういうポジティブな対決。「サッカーが好きな」人達の作った試合。

やられt まで思ったシュートは数知れず。エウベルの前に広大なスペースの大恐怖。鞠上手いなあ強いなあ。なにひとつ入るなと願う相手CK。全部入れと願う自軍FK。凌いで凌いでその先に菅ちゃんのキャノン炸裂。ゆりかごは誰だ。交代でガブシャビが出てくるなんてどうしよう贅沢。ロスタイム何分だったか見逃した。ベンチで「早く!終わって!もう終わりでしょ!」と言わんばかりに大きく手を振っていた選手達の姿。もう終わるのかな、次の瞬間目の前のゴールラインを見事に割ったボール。

サッカーファンのわたしの満足と、サポーターのわたしの不満足。
一日経ってもそれはそのままだけど、そうはいっても応援しているチームの試合が「面白い」と思えるのはすごく誇らしいことで。暖かくなれば結果も必ずついてくるだろうと思うそばから天気予報に雪マーク並ぶのなんで。

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試合展開に半ば呆然としたままでもこの日はそれで終わりじゃなくてセレモニーへと続いていく。明後日にはもう札幌の野々村じゃなくってJリーグの野々村になる。村井さんとノノ。並んでみると双子かってくらい双子だった。

ノノが社長になってすぐに札幌は一丸となって真っ直ぐに成長したかといえばそうでもない。そこには価値観の変化があったしその中には納得出来ないこともあった。自分自身ノノに最初から全幅の信頼をおいていたわけじゃない。だからこれからのJリーグでも全てが順調に進むとは思わないし、軋轢も出てきたりはするだろうと思う。クラブとは違って範囲が広くなるから、一方的に「あいつはこういうやつ」と決めつけて好き放題言うアンチみたいな人達だって出てくるだろう。

だから今のうちに言っておく。
この人話すこと胡散臭いけど間違いなく「サッカーが」好きな人ですよって。
サッカーの敵じゃないですよって。
自分のクラブさえあればほかはどうでもいいと本気で思う人にはごめんなさいですが、サッカーのためだったら多分なんでもできちゃうくらい、サッカーを大好きな人ですよって。

ノノがJリーグに行っても札幌の私達はたぶん特別態度を変えることなく、これまでと同じように、信頼を置きつつ、リーグに対して言いたいことは言う。リーグの話を聞く。こちらの話も聞いてもらう。そうして初めて作れるものがあると、あったと知っているから。

前述したようにコロナによってここ数年の隆盛を支えたであろう「レジャーとしてのJリーグ」を保ち続けることはとても難しい状況ではあると思う。そんな中でクラブとサッカーが生き残っていくためにこれからノノは尽力していくんだろう。

去年の暮れからこちら「そこにいて当たり前だった人」「支えのようだった人」がいなくなることを体験し続けているけど、試合の後にこの前の試合はーって解説してもらえなくなるのすごく寂しいし心細いけど、もうそういう支えみたいのをなくても、自分達の力で、今ある力を伸ばしながら生き残っていく時代なんだと無理矢理背筋を伸ばす。


ノノさん9年間ありがとう。
あなたが来なかったとしても私たちはそれなりにJ2で楽しく暮らしていただろうとは思います。J1での惨敗を自虐のネタにして笑って、抱えた傷に気づかないふりをして。

でもお陰様で昇格して残留出来て、少しづつ力をつけて、見たことのない世界をたくさん見ることができて。社長をチェアマンとして送り出すというのもまた新しい世界の続きだし、この先にもまた違う世界が待っていると信じているし、自分達で作っていければと思ってもいます。

サッカーファンの私とサポーターの私が同時に満足するようなものを作りたいけど、どう考えてもたぶんそう簡単には行かないと思うので、悪戦苦闘をどうぞ生暖かく見守っていてください。

サッカーが好きな人が作ってきたチームであること、サッカーを好きだということ、それはこれからも大切にしていきたいです。
サッカーで繋がってるのでさよならと言う必要はないでしょう。
行ってらっしゃい、また会う日まで。

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