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信頼のブランド 米澤穂信「黒牢城」

打率ナンバーワン作家

人気・実力ともに誰もが認めるミステリー作家の米澤穂信さん。個人的には、最も信頼できる「打率の高い」作家だ。

ミステリーは、自分に合わない、満足できない作品に出会ってしまう頻度が高いジャンルだと感じる。謎解き要素があるためか、同じ作家の作品でも、でき不出来に差があるのだ。

そうしたなかで、米澤作品には『ハズレ』がないと強く信頼している。
なので、書評や口コミを読まなくても安心して手を出せる。

舞台は戦国時代

その新作「黒牢城」の舞台は戦国時代の摂津国(兵庫県)。織田信長を裏切って籠城する荒木村重と、使者として村重のもとを訪れ、捕らえられた黒田官兵衛とのやり取りが軸になる。


史実に迫る短編連作

織田軍の攻撃が迫るなか村重の周辺では厳重に警固していた人質の殺害を皮切りに奇妙な事件が次々と起こる。

解けない謎。城内で一番の頭脳を持つと自負する村重が頼ったのは、土牢に閉じ込めたあの男だった……。

もちろん物語はすべてフィクションなのだけれど、史実が織り交ぜられることで、そういうこともあったかも、と納得させられる。さらに、最後まで読むと歴史の謎に迫る内容にもなっている。

アニメ化作品も

というわけで今作もおすすめなのだが、米澤さんの作品としては異例というか、たぶん歴史ものは初だと思う。

では、米澤さんの作品を最初に読むなら何かと言われると、あまりに幅が広く迷ってしまう。

ファンタジーとミステリーを融合させた長編「折れた竜骨」(日本推理作家協会賞)や、山本周五郎賞を受賞した短編集「満願」は代表作と言えるだろう。

一方、ライトノベルと呼ばれるジャンルでも、「氷菓」に始まる〈古典部〉シリーズがマンガ化、アニメ化もされる人気作品となっている。

私自身は、古典部シリーズと同じく「日常の謎」を追う〈小市民〉シリーズから作品に触れた。

春期限定いちごタルト事件 小市民シリーズ (創元推理文庫)

「ハズレ」はない 作品を手に

ミステリー好きはもちろんのこと、少し苦手という人も含めて誰にもおすすめできる米澤作品。
これからも読者であり続けたい。
(古典部シリーズ続きをはよ)


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