筋トレのコツ39:筋肉の合成と分解を制御する「mTOR」
この記事は、私が数年前に「まだ真剣に勉強していた頃(笑)」に書いていた「個人的なメモ」が元になっています。
現在でも私は、細胞及び蛋白質がどのように合成され、どのように分解されていくのか・・・という事を完全には理解できていません。
というより、私自身「どうして蛋白質を十分に摂取しても、筋肉は分解されてしまうのか?」の理由について、ある程度の仕組みが理解できていればそれで良いと思っていたので、細かい過程とか、酵素の名前とかにはあまり興味がなく、当時も途中で投げ出した部分です。
また何より情報が古いので、間違っている部分も多々あると思われます。決して鵜呑みにしないようにお願いします。
エネルギーが十分あれば筋肉は成長しやすくなる
筋肉などにある蛋白質は「mTOR」という酵素によって、その合成・分解が管理されています。
この「mTOR」は細胞内のシグナル伝達に関係する「プロテインキナーゼ(セリン・スレオニンキナーゼ)」の一種で、複数の蛋白質による「複合体(complex)」を形成し、「mTORC」として存在しています。
そんな「mTOR」ですが、インスリンや各種アミノ酸(特にロイシン)、腸内細菌などによって活性化され、それによって蛋白質の合成を促してくれる共に、蛋白質の分解を司る「オートファジー」の機能を阻害する事ができると言われています。
特にその内の「インスリン」は糖を細胞内へ取り込ませ、血糖値を下げる作用があります。そのために必要な「糖」は「エネルギー」です。すなわち糖が十分にある状態とは「エネルギーが十分にある状態」という事であり、その状態の時に、この「mTOR」が活性化されるという事です。
また各種アミノ酸も、激しい運動を行った時、あるいは栄養として摂取された時、血液中に十分量存在する状態になります。つまり運動を行った時や、食事をした時にも、同じようにこの「mTOR」が活性化される訳です。特に「ロイシンが筋肉に良い」と言われるのはこれが一つの理由です。
更に腸内細菌が食べ物を分解する際には、短鎖脂肪酸が作られます。これによっても「mTOR」は活性化されると言われています。つまりやはり食事をする事が大きなきっかけとなっています。
そうして「mTOR」が活性化されると、蛋白質の分解を制御している「オートファジー」という機能が阻害されます。これによって筋肉が合成の方が上回る事になる訳です。
その流れとしては・・・
インスリン、またはロイシン、または腸内細菌が作る短鎖脂肪酸等による刺激(短鎖脂肪酸は脂肪酸受容体であるGPR41やGPR43を活性化。その結果、免疫細胞であるT細胞に影響し、免疫反応及び炎症反応を制御)
→それによりRag二量体が活性化(Ragは蛋白質の一種。RagAとB、RagCとDという組み合わせで二量体を形成、特にAとCがアミノ酸応答に関与)
→それがraptor(mTORC1を構成する因子)と結合
→細胞内にあるリソソームへリクルート(リソソームは細胞内外の分解機能を司る細胞小器官)
→リソソームの膜上にあるRhebによってmTORC1が活性化(RhebはGTP結合蛋白質及びG蛋白質の一種。GTPを結合する事で、細胞内情報伝達のスイッチとなる)
→オートファジーが抑制
という形になっているようです。
最初にも書いたように私自身は、この過程について、何ら理解できていません。またここにある一つ一つの用語も、私自身そこまで重要ではないと考えています。それよりも重要なのは「エネルギーが十分な状態になると、蛋白質が合成されやすくなり、逆に分解されにくくなる」という結果です。それさえ何となく分かれば良いのです。
特に「筋肉」は「蛋白質」のイメージが強いです。しかしそのように蛋白質の効率の良い合成には、エネルギーが必要なのです。そのため「蛋白質が十分量あっても、エネルギーが十分なければ、筋肉は大きくなりません」。ここからそれが分かります。
ただし「オートファジー」は、細胞及び蛋白質を分解・除去する機能を持っています。それが阻害されると、今度は「余計な細胞、あるいは異常のある細胞も増えてしまう可能性」があります。つまりこの状態のままでは心身の健康は維持できません。ではどうするか。
エネルギーが十分ない場合、筋肉は分解されやすくなる
前述のように、エネルギーが十分量あれば、蛋白質の合成が促されます。つまりそれが逆になれば、当然蛋白質の合成は阻害され、分解が促される事になります。簡単に言えば「mTOR」が抑制され、「オートファジー」が活性化されるという事です。
その流れとしては・・・
エネルギーが不足した状態が長期間続く
→エネルギーセンサーとなるAMPK(AMP活性キナーゼ)が活性化
→TSC1-TSC2複合体(前述のRhebを不活性化させる因子)を活性化
→mTORC1が不活性化
→オートファジーが活性化
という形になっているようです。
これについて簡単に説明すると、つまり「食事を制限し、摂取されるエネルギーが少なくなると、余分にエネルギー消費する筋肉の合成を後回しにするようになり、筋肉の分解が進んでしまう」という事です。
これが「蛋白質を十分に摂取しても、エネルギーが十分でなければ、筋肉は大きくならない」及び「食事を制限すると筋肉が落ちてしまう」事の理由です。
一方、これによって「オートファジー」は活性化されているので、「余計な細胞、及び異常のある細胞はしっかりと除去され、心身の健康は維持」されます。特にメディアでは「エネルギー制限=長寿」という事を紹介する事が多いのですが、それはここに理由がありそうです。
エネルギーが十分な状態と不足している状態を交互に繰り返し、心身の健康を維持する
前述のようにエネルギーが十分にあれば、蛋白質の合成は促されます。しかし余計な細胞も増えてしまいます。また逆にエネルギーが不足した状態では、蛋白質は分解されやすくなりますが、余計な細胞は増えにくくなります。
一方、無理に食事を制限しようとしなくても、後者の「エネルギーが不足した状態」にする事が可能です。その方法とは何かと言えば単純に「運動をする事」です。実は「運動を行ってエネルギーを消費する」事で、後者の状態を意図的に作り出す事ができるのです。
つまりそうして運動をし、一旦はエネルギーを消費した状態にしたとしても、すぐに食事をし、エネルギーを十分に摂取できれば、再びエネルギーが十分ある状態に戻す事ができます。
それを交互に繰り返す事こそ、「真に心身の健康の維持に繋がる」と私は考えています。
蛋白質が分解される経路
蛋白質の分解経路は他にもあり、蛋白質に「ユビキチン」が結合し、酵素である「プロテアソーム」に取り込まれて分解される経路や、細胞内に存在する「カルパイン」という酵素が、カルシウムイオンやナトリウムイオンの刺激によって分解される経路などがあるようです。
この内、「HMB(ロイシンの代謝過程でできる物質)」などがユビキチン-プロテアソーム系に影響、前述のように「ロイシン」などがオートファジー-リソソーム系に影響、一方、カルパインは「筋肉の激しい収縮(筋肉の収縮にはミネラルが使われる)」などによって活性化されるようです。
ここから分かるのが「HMB」と「ロイシン」の役割です。特にHMBやロイシンは「筋肉の合成を促し、また分解を抑えてくれる」と言われていますが、それにはこの事が関係していると思われます。
また激しい運動によって筋肉が分解されやすくなるのも、ここから分かります。運動前~運動中、あるいは運動後に栄養・エネルギーを摂取した方が良いとよく言われるのは、それを最小限に抑えたいからです。
更に筋肉が収縮する際に取り込まれるカルシウムは、マグネシウムによって追い出されます。またナトリウムはカリウムによって追い出されます。つまりミネラルをバランス良く摂取する事も、筋肉の合成と分解に関与している事がここから分かります。
以上です。間違っている部分もあると思うので、お役に立つかどうかは分かりませんが、「メモ」としてここに残しておきます。
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