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プレジャー・ランドへようこそ_第2話

↓ 第1話




11月11日(土)12時。

気分が悪い。悪夢を見たせいだ。
ノキアはテーブルについて、大きくため息をついた。

今日もノキアは部活に行く気にはならず、朝食を食べた後、再びベッドに転がってうたた寝をしてしまっていた。朝食を食べながら見ていたローカル番組のプレジャー・ランド特集のせいだろうか。夢の中のノキアは、行ったこともないプレジャー・ランド内にいた。

薄暗い遊園地の中にピノがいた。支配人が娘のように可愛がっているというピエロの女の子の操り人形。ピノは甲高い声で「あそぼ」とノキアに声をかけてきた。ピノがノキアに手を差し出して、ノキアはピノの手をとる。

ピノがノキアに話かけてくるのを、ノキアは返事もせずに聞いていた。夢の中の音声は無音で、さながら無声映画のようだった。ピノはずっと一人で喋っている。音は聞こえないのに、ピノが話すことがノキアにはわかった。まるでテレパシーのように頭の中に言葉が響く。けれどもその声は古びたテレビの音声みたいで、ところどころ声にノイズが入った。切れ切れのピノの話の全てを理解することは難しい。

「パパ….役…立..たい」
「アク…….ま…い」
「人…に……たい」
「カラ……か…..て?」

夢の中のノキアは目の前のピノの顔をキョトンと見た。ピノはにこりと微笑むとポケットからトランプをサッと出した。手に持っていたトランプを宙に放り投げる。

モノクロのトランプは、バサバサとノキアの頭の上から雨のように降ってきた。トランプに描かれているアルファベット。キング、クイーン、ジャック。トランプが落ちてくる映像がスローモーションになる。イラストが目に入る。ノキアの悪口を言っていた先輩たちの顔。ジョーカーはピエロの格好をしていた。よく見るとイラストに書かれていたジョーカーはピノだった。ゆらりと夢の中の映像が揺れて、トランプの中のピノがにやりと笑う。ノキアはハッとした。さっきまでピノだったジョーカーの顔が別人の顔に変わっている。皐月だ。ミニバス時代の親友。皐月の口がパクパクと開く。

ーーパパ活してるの? ノキア。

無声映画だった夢の中で、懐かしい声が響く。ノキアは慌ててその声で飛び起きた。


追いかけられる夢よりたちが悪い。
今日の部活に皐月が来ているかもしれないと考えただけでノキアは吐きそうになった。絶対に部活はいかない、とノキアは誓う。

目をつぶると脳にこびりついた夢の残像を見てしまう気がして、リモコンを手に取りテレビをつけた。
YouTubeのボタンを押して、好きなアーティストのMVを流す。土曜日の自分しかいないがらんとしたリビングに音楽が流れて、次第に生活音も聞こえなくなった。頭の中の声は、アーティストの声でかき消されていく。

ノキアは朝残しておいたサラダを、冷蔵庫から取り出した。食パンにはマヨネーズをたっぷりと塗り、その上にたっぷりとチーズを乗せてトースターでこんがりと焼く。スープはコーンスープ。冷蔵庫から取り出したサラダには、レタスの上にトマトとツナ、それにコーンが乗っていた。

テーブルに並べられた昼食はどれもノキアの好きな食べ物だった。母親が体調の悪いノキアを気遣って用意してくれたことが、ノキアにも流石に想像がついた。ノキアは両手の手のひらを丁寧に合わせた。薄く目を瞑る。

「いただきます」

母への感謝の気持ちを、少しだけ込めてノキアは呟いた。

本人が目の前にいない時は、母親への感謝の気持ちが湧いてこないこともない。しかし、母本人を目の前にするとどうにもこうにもノキアはイライラして仕方がなかった。父親に対してもノキアは同じように苛立った。これはノキアの意思ではなく、本能的なもののような気がした。両親の顔を前にすると脊髄反射のように苛立つのだ。

これを反抗期と言わずしてなんというのだろうか。間違いなくノキアは反抗期の真っ只中にいる。本当はプレジャー・ランドにも行きたいし、部活にだって行きたい。友達が欲しくないわけがないし、親とも上手くやりたい。上手くやれる人が大半なのに、自分が上手く立ち回れないのが情けない。バスケのパス回しが上手くたって、ドリブルが上手くたって、生きていくのには何の役にも立たない。

頭の中で鳴っていた音楽が、ダムダムと鳴るドリブルの音へと切り替わる。

「次期部長は、ノキア」
顧問の安田が、部活終わりに部員を集めて言い放った。気の利かない50歳過ぎのでっぷりとしたお腹が揺れる。ノキアは目をまん丸に見開き、部員たちは顔を見合せた。ここでも外ではじーじーと蝉が鳴き、部員はざわつき始めた。

3年生引退後の練習終了時のことだった。
もちろん実力的にはノキアが一番上手いことは言うまでもない。上級生を差し置いてスタメンに選ばれるノキアにもその自負はあり、仲が良くなくとも部員たちもそれは理解していた。

だからと言って、ノキアが部長はありえない。みんなをまとめるだけの能力やコミュニケーション能力が、ノキアにあるわけがなかった。ノキアもそれは十分に理解していたし、部活内では周知の事実だった。

一方で、同級生のチームメイトのエリは実力はノキアに劣るものの、先輩たちともうまくやり、後輩たちからの信頼も厚かった。2年生も1年生も、みんな、エリが次の部長に選ばれるものと思っていた。
空気の読めない顧問の安田を除いては。

ノキアはその場で安田に断りを入れた。
「エリが適任だと思うので、辞退します」

ざわついていた体育館に突如静寂が訪れる。蝉がじじじっと鳴き、どこかに飛んでいく羽音が聞こえた。
エリが、「え? 私?」とわざとらしく高めの声を上げた。部員たちは再びざわつき始め「エリがいいよね」だとか「ノキアにはちょっと無理かも」だとか、そんなことを口々に言い始めた。

少し戸惑い始めた顧問の安田の額に汗が滲む。
「先生、みんなもエリがいいって言ってますよ」
ノキアのダメ押しの一声に、安田が安堵する。

「そうか。じゃあ、みんなの意見を尊重して次期部長はエリ。俺は元々エリを副部長にするつもりだったんだ……」
と濁すように言った。

結局、副部長はエリと仲の良い優花が任命された。二人は顔を見合わせると「がんばろうね」と笑いあった。うまくまとまってノキアも安心していたのだが、なぜかノキアの部長辞退騒動はそこで終わりを見せなかった。

「なんでノキアってあんなに上から目線なの?」
「えらそうだよね。もうちょっと申し訳なさそうな顔すればいいのに」
「笑ってるの見たことないし、表情筋ないんじゃない? バスケばっかりやってるし、脳筋?」

陰口こそがノイズなのに、なぜこうも自分の耳はクリアに陰口を拾うんだろうかとノキアは肩を落とす。慣れっこにはなっているとはいえ、聞きたいものでもない。

ノイズのような陰口が小さくなり、聞きなれた音楽のボリュームが大きくなる。ふと現実に戻り視線をテーブルに向けると、ゆらゆらと揺れるコーンスープの湯気が鼻の穴をくすぐった。スプーンを手に取り優しい色合いの黄色がかった乳白色のスープにスプーンを落とした。くるくると混ぜると、カップを口につけてずずっとすする。口の中にほわっとコーンの甘みが広がる。

「うま」

部活には行きたくないけど、バスケはしたい。
体育館をバッシュでキュッキュと音を立てながら走り周り、バスケットボールを強く体育館の床に打ちつける。誰よりも先にゴールの前まで走り、目の前の白いゴールにバスケットボールをシュートする。パスっという音を立てて、ゴールを抜けてボールが落ちる。ゴールが揺れる間もなく、コートの中を走り回る。そんな空間が好きだったのに……。

中学校のコートの中には、余計なものが多すぎる。


歯を磨いて顔を洗う。鏡に映った顔を見る。
ノキアは短く切り揃えられたショートヘアの髪を、サッサっと整えた。

幼少期は長かった髪も、小学5年生の時にショートにしてからもう3年経った。初めは見慣れなかった髪型も、今ではすっかり馴染んでいる。幼少期のノキアは黒髪のロングヘアだった。父親似の細い直毛を恵美はいつも羨ましいと言いながら櫛でとかした。女の子は長い髪が可愛いしそれにノキアの髪は本当に綺麗だから、と言いながら頭を撫でる様子は、さながらラプンツェルに出てくるゴーテルみたいだとノキアはいつも思っていた。

恵美の髪は癖毛だが、ふわふわとしていて柔らかく手触りが良い。小さい頃のノキアは母の髪を触るのが好きだったし、羨ましいとさえ思っていた。長い髪自体はノキアも嫌いではなかった。母親に頭を撫でられるのも気持ちが良かった。

けれども小学生も高学年になると、やたらと男女の区別をつけたがる女子が出てくる。ノキアはとにかく女子っぽく見られるのが嫌になった。男子と遊んでいたら男好きだと揶揄われるし、女子の会話についていけなければ仲間はずれにされる。

めんどくさいと思ったノキアは、バッサリと髪を切った。

これでいちいちめんどくさいことを言われることは無くなるだろう、と。しかしそうは問屋が卸さない。ノキアが陰口を叩かれるのも、仲間はずれにされるのも、どちらも見た目の問題ではなかった。髪が長かろうと短かろうと、強調性がないとみなされる女子はコミュニティには属せない。それだけのことにノキアは気づいていなかった。

とはいえ、ノキアはショートヘアを気に入っていた。もちろん恵美は残念がったが……。思いつきで切った髪だったが、シャンプーは楽だし、朝のセットも楽だし、とにかくノキアは自分にはショートヘアが合っているなと思った。

しんとした誰もいない家にこのまま一人でいる気にもならず、ノキアはパジャマがわりに着ていたスウェットを脱いで、洋服に着替えた。スウェットとTシャツを脱ぎ、ぴっちりとしたブラトップに胸を押し込む。ノキアは胸ができるだけ平らになるように、カップが小さめのものを着用していた。 

恵美はノキアに対し、「苦しくないの?」とよく尋ねた。ノキアは「部活する時に邪魔だから、小さいくらいがちょうどいい」と説明していた。大して大きい胸でもないが、わざわざ胸を強調するようなひらひらした下着なんかには興味がない。

苦しいとか苦しくないとかではなくて、できるだけ強調したくないというのがノキアの本音だった。すっきりとしたブラトップの上からアディダスのXLのTシャツを着て、アディダスの二本線のジャージを履く。上からすっぽりとメンズのXLのグレーのパーカーを着た。

ノキアの最近のお気に入りのスタイルだ。楽でいて動きやすい。
ノキアはワイヤレスのノイズキャンセリングイヤホンを耳にはめ、ジャージのポケットにスマートフォンを入れた。お気に入りのハイカットのスニーカーを履いて、家を出た。ノキアの家はカードキーだ。母親が家の鍵を落としても、位置情報でわかるようにとカードが入るスマホケースを買ってくれた。

位置情報を親と共有しておかないといけないのは煩わしいが、中学生という身分である以上、ある程度、親のリクエストには答える必要があるとノキアは思っていた。それにもし、スマホをなくしたとしても、親が位置情報を検索すれば見つけることもできる。特段、どこかにこっそりと出かける予定のないノキアは、位置情報をオンにしていたところで、何も困ることはなかった。

スマホ一つで全てが行えるのはとにかく楽でいい。
クラスの女子たちは、どこのバックを買っただの、この化粧品がオススメだのという会話を、いつも教室で、そしてわざとらしく誰かに聞かせるように大声で話している。きっと出かける時は大荷物なのだろう。女子はやっぱり大変だ、とノキアは思う。

ノキアはお気に入りのナイキのスニーカーを履いて、カードキーで玄関を閉めた。

目的地は特に決めなかった。とりあえず近所のコンビニに立ち寄ろうと思い、進路をそちらに向ける。そして数歩歩いたところで踵を返した。

ノキアの家から最寄りのコンビニでは、皐月の母がバイトをしていた。皐月はミニバス時代の親友とも呼べる友達で、ノキアがこれまで一番仲良くしていた友人だ。何故か中学入学を機に疎遠になっている。皐月の母と顔を合わせたらバツが悪いとノキアは思った。今では皐月と仲も良くないし、部活をサボっていることがバレてしまう。

皐月は小柄な女の子で、バスケが大好き。皐月には歳の離れた兄がおり、兄の影響でバスケを始めていた。活発で元気な皐月は男女ともに友達が多く、ノキア以外にも友人はたくさんいた。ノキアにとっては唯一に近い友人だったが、皐月にとってはそうではない。

屈託なくキャハハと笑う皐月の笑い声の周りには、いつも沢山人がいた。その輪にいてもノキアを見つけると皐月はノキアに駆け寄った。不器用なノキアも、当時は皐月がいたから皐月以外の人とも上手く話ができていた。

ノキアも皐月も、二人とも大好きなスラムダンクの漫画を一緒に読んでは、どのキャラが好きだとかそんな話をよくしていた。皐月の右目の下には黒子があって、ノキアの左の目の下には黒子があった。おしゃれには特別興味のない二人だったけど、「これってニコイチだよね」なんてよく二人で言っていた。

それだけ仲が良かったのに疎遠になった理由はノキアにも分からなかった。中学では交友関係も広がるし、クラスも変わってしまったから仕方がないのかもしれないとノキアは自分で自分を慰めるしかなかった。

皐月の母に会うのが嫌なのは、話を聞かれることだけが理由ではない。特別な友達だと思っていた皐月と疎遠になっていることを思い出してしまうことも、ノキアの気持ちを粟立たせた。今だって、皐月の母に会ったわけでもないのに、ノキアはすでに皐月のことを思い出している。ノキアの胸は、ぎゅうっと締め付けられるように苦しかった。

その時、ジャージ姿の中学生が目に入った。ノキアの胸が跳ねた。とっさに下を向いて顔を隠す。じわりと目線を上げて、チラリとジャージ姿の中学生を確認した。

ーー野球部だ。

ノキアはジャージ姿の中学生が、バスケ部ではなかったことに安堵する。そして、足早に歩きだした。一気に校区から出てしまおうと、ノキアは若干小走りで歩いた。誰かに会うとバツが悪い。誰も部活をサボったことを責めたりはしないが、誰にも会いたくなかった。

中学校と反対の方向へと歩いた。
ノキアは同じような住宅が並ぶ住宅街を抜けて、大通りへ出る。大通りの向こう側へ行けば、隣の学校の校区へ出ることができる。ノキアは交差点の信号が変わるのを待った。なかなか変わらない信号機にイライラしながら、体を上下へ揺らす。

信号が赤から緑に変わる。ノキアは信号が変わった瞬間、パッと駆け出した。
11月の冷たい空気がノキアの耳の横を通り抜ける。

ノキアはまっすぐまっすぐ、中学校からも家からも逃げるように走った。5分ほど走ってノキアは立ち止まる。肩は上下に激しく動いた。大きく息を吸って、大きく息を吐いて周りを見渡す。

よく知らない景色。

ノキアはポケットに入れておいたスマートフォンを取り出して画面を確認した。右上の電池のマークを一瞥する。充電は82%。

これで迷子になることはない。困ればマップを開けばいい。ノキアは知らない道をグングンと進んだ。見たことのない景色に、ノキアの胸は躍った。いつもより速い鼓動。どこか落ち着かない感じがして、ノキアは一旦立ち止まる。気持ちを落ち着けようと、大きく息を吸った。

空気が喉を通ったとき、ノキアは喉がカサッと音を立てた気がした。ノキアはそこでやっと、自分の喉が渇いていたことに気づく。11月の乾燥した空気がノキアの渇いた喉に張り付いた。

ノキアは思わず唾を飲み込む。
口の中がベタベタしているような気がして気持ちが悪い。辺りを見回しノキアは50m先にコンビニの看板を見つけた。ノキアはコンビニへと急ぐ。

コンビニのドアを開けた瞬間、中から、
「イラッシャイマセ〜」
と、若干イントネーションが日本人のそれとは違う声が、イヤホンの音楽を抜けて耳に飛び込んできた。ノキアは店内にいる店員が外国人だと気づく。

最近は外国人の店員が増えた。みんな日本語が上手ですごいよな、とノキアは思う。小学生の頃から英語を習っているが、一向に上達しない英語力に今更ながら意味があるのだろうかとノキアは思った。

ノキアは外国人の店員を一瞥すると、店内をぐるりと見渡した。ペットボトルのコーナーを確認し、一直線で冷蔵庫まで向かう。冷蔵庫の扉を開けて、赤いラベルを確認するとコーラを手に取った。

コーラを手に持ったままレジに向かう途中で、お菓子のコーナーコーナーに立ち寄る。ガムのコーナーで立ち止まり、駄菓子のガムを手に取った。フルーツの味の丸いガムが4つ入った箱型のガムをいくつか選んだ。オレンジとブドウを2つと、いちご味。

コーラとガムを持って、ノキアはレジへと向かう。レジでそれを外国人店員に手渡した。
「お支払いは?」と聞かれ「ポイポイで」と答える。スマートフォンの画面を店員に見せると、店員がバーコードを読み取った。「ポイポイ♪」と間の抜けた音を鳴らして支払いを済ます。

ノキアはお小遣いを電子マネーでもらっている。残高は2,000円程度あった。昨日までは1,500円くらいだったが、今朝、恵美がノキアに500円送金してくれていた。食事が足りない可能性を心配したらしい。「昼食が足りないといけないから」というメッセージ付きだった。

自分のお小遣いでお菓子を買ったりジュースを買ったりするのは、なんだか勿体無い気がするが、こう言う時は何も気にしないでお金が使える気がした。
ノキアはお金を払い店員から商品を受け取ると、ガムをパーカーの前ポケットにしまう。コーラのペットボトルはそのまま手に持って、ノキアはコンビニを後にした。

店を出てすぐにペットボトルの蓋を捻る。ジュジュっと炭酸が蓋と本体の隙間から漏れる音がする。
ノキアはコーラが溢れないように、ゆっくりと蓋を捻る。蓋を開けると、炭酸がシュワシュワと溢れそうになって、ノキアはペットボトルの口を自分の口で塞いぎ、そのままコーラを喉に流し込んだ。

コーラがシュワシュワとノキアの喉を刺激する。ピリピリと喉から体全体が冷えていくのがわかる。渇ききった喉に潤いが戻る感覚があった。コーラの蓋を閉めると、ふぅと息を吐いた。

蓋を閉めたペットボトルをパーカーの前ポケットに入れる。同じく前ポケットから、ブドウのガムを取り出した。外袋をピリッと破り、箱を開ける。箱の中に入っている丸い小さなガムを四つ全て口の中に放り込んだ。外側のカリッとした部分を噛むと、中から柔らかいガムが出てきて、口の中に唾液がじわっと広がった。

「オキャクさん!」
コンビニの中からさっきの外国人店員が出てきた。手には白い紙をひらひらさせている。
「コレコレ!」

何? レシート?  わざわざレシートを届ける? とノキアは思ったが、仕方がないので駆け寄ってきた店員からレシートを受け取る。手に取ったものを目視で確認。よく見ると、それはレシートではない。

外国人店員がノキアに話しかけているが、上手く聞き取れないのでノキアは仕方なくイヤホンを外した。
「コレ、イマ、チュウガクセイにクバッテル。オキャクさん、チュウガクセイ?」

「はい。まあ」
ノキアが頷くと、「ジャア、アゲル」と言って、外国人店員はコンビニの中に帰って行った。よくある割引券か何かかな、とノキアはそのままもらった紙をパーカーの前ポケットに仕舞い込んだ。

ノキアはブラブラとその辺りを散歩した。知らない住宅街に、知らない道。出会ったこともない猫が、ツンとした表情でノキアの前を横切る。
大通りを一つ隔てただけなのに、ノキアは新しい世界にいるように感じた。空気すら新鮮な気がする。それに、誰もノキアのことを知らないのがいい。ノキアはいかに普段、小さな世界に縮こまって生活しているのだろうかと思ってしまう。

ノキアは、歩いた先で小さな公園を見つけた。ブランコと小さな滑り台、そしてちょっとキャッチボールができるくらいの広さの広場。人気のない公園なのか、誰も遊んでいない。土曜日の昼間なのに、とノキアは思う。

ノキアは寂しそうな公園に入り、ポツンと暇そうにしていたベンチに腰掛けた。

「あそぼ!」

甲高い幼女の声。よく通る声がイヤホンの音楽を押しのけて、直接ノキアの頭の中に響いた。ノキアは驚く。誰もいないと思っていた公園に人がいたのか、と辺りを見回した。

「あそぼ!」

頭に直接話しかけてくる大きな声に思わずビクッと体が跳ねる。ノキア目の前に5歳くらいの女の子。

「ねえ、あそぼ?」
女の子はスっと手を差し出した。どこかで見たことのある光景だとノキアは思う。
ノキアはイヤホンを外し、「お父さんか、お母さんは?」と尋ねた。どう考えても小学生にはなっていなさそうな小さな女の子だ。迷子かもしれないとノキアは考えた。

「お姉ちゃんと遊びたいの! ねえ、あそぼうよ!」
女の子がパッとノキアの手を取ろうとして、ノキアは思わず手を振り払った。

笑顔だった女の子の顔が歪む。

「あ、ごめん。今は遊べない」
特に理由はなかったが、ノキアは妙な違和感を覚えて断った。

女の子の眉間にぐっと皺が寄る。ざっと突風が吹き、周囲にあった落ち葉が宙を舞った。ち、と低い舌打ち聞こえる。

「夢の中では体貸してくれるって言ったのに。この体ちょっとちっちゃくて動きにくいんだよ。貸せよ、体。どうせ生きててもつまんないんなら、ピノが使ってやるから」
甲高かった幼女の声が、ぐっと低いものに変わった。

ノキアは思わずぎょっとする。明らかに別人の、そしてノイズのかかったような声。背筋が凍りつくような不気味な。ノキアは引きつった顔で、ベンチに背中を押し付けて体を仰け反った。

「まあ、体借りるの、別にお前じゃなくてもいいか」

女の子は再び舌打ちした。
まるで舌打ちが突風の合図みたいに、ざざざっと風が吹いた。落ち葉が宙を舞う。視線が遮られる。

バサバサと落ち葉が地面に落ちた頃、公園は再び静寂を取り戻した。外したイヤホンから音楽が聴こえるくらいに、公園は水を打ったように静かだった。


再び一人になった公園で、ノキアはポケットに入れておいたコーラを取り出した。頭を左右に振る。あまりに現実離れしていて、頭が混乱している。鳥肌が立っているが、寒さのせいかもノキアよくわからない。さっきの出来事は夢だったのかもしれないとノキアは思った。

コーラを飲もうとして、ペットボトルに何かがくっついているのに気づく。コンビニ店員からもらった白い紙。冷えたペットボトルの水滴でくっついてしまったらしい。

ノキアは紙の端を親指と人差し指でつまんだ。ぺりぺりと、そしてゆっくりと、白い紙が破れないように慎重にペットボトルから引き剥がした。

「ノキア?」

背後から声をかけられ、ノキアの心臓は跳ねた。驚いた拍子に、ノキアは親指と人差し指でつまんでいた剥がしたばかりの白い紙を手放した。

その瞬間、ブワッと風が吹く。

「あ」

ノキアが間の抜けた声を口から出したのと同時に、ペットボトルから剥がした白い紙が宙を舞う。その紙めがけて、ノキアの背後から手が伸びてきた。にゅっと出てきた手が、紙をぱしっと掴んだと思ったら、ノキアの視界に急に懐かしい顔が現れた。

「翔太?」

小学5年生の時にノキアと同じクラスだった谷石翔太たにいししょうた。サッカー部在籍。小学校の頃からサッカー少年で、色黒でモテるタイプ。ノキアは昼休みに翔太たち男子に混じってドッチボールをしたりして遊んでいたが、翔太ファンの恨みを買い呼び出しを食らった覚えがあった。その谷石翔太が何故ここに、とノキアは目を見開いた。

「やっぱりノキアだ! こんなところで何してんの?」 

翔太はキャッチした白い紙をノキアに手渡しながら、どかっとベンチに腰掛けた。
「何って翔太こそ」
「俺? 先輩がこの辺りに住んでるからさ、ちょっと遊びに来た帰り」

先輩? 何の? と思ったが、ノキアは特に何も聞かなかった。風の噂で耳にしたことを思い出した。翔太が部活を辞めて、悪い連中とつるんでるという噂だ。翔太は小学生の頃からサッカーをしていて、中学校ではサッカー部に入った。確か小学校の卒業文集の将来の夢では「サッカー選手」と書いてあったような気がする。自分の夢だったはずのサッカーをするための部活を辞めた理由。きっとそれには、それなりのものがあるのだろうとノキアは思った。

翔太から手渡された白い紙に視線を落とす。翔太もノキアの持っていた白い紙に視線を落とした。

「あ、俺もこれもってる! さっき先輩にもらった」
翔太は黒い大きめのアウターのポケットから財布を取り出すと、財布の中からノキアが持っているのと同じ白い紙を取り出した。

「ノキア、行くの?」
翔太が顔の前でひらひらさせている白い紙を、ノキアは覗き込んだ。
「何なのこれ?」

プレジャー・ランド限定無料チケット
 11月13日(月)午前2時開場 
対象者|悩める中学生
※悩める中学生以外は使用できません

「これさ、プレジャーランドの限定チケットらしいよ」
「え? このペラペラの学校のプリントの切れ端みたいなやつが?」

ノキアはチケットと思われる白い紙をまじまじと見た。どう見ても学校で配られるプリントの切れ端みたいな安っぽいコピー用紙に、必要な内容が印字されているだけの紙切れ。デザインもクソもない、ただの文字の羅列。大きさ的にはA4サイズの用紙を横に四等分にカットしただけであり、心なしか切り口も定規を当てて切ったのではなろうかと言うくらいに、切り口が不揃いで手作り感満載。これのどこがチケットだろうかとノキアは思う。

「ちょっと面白いもん、見せてやるよ」

翔太はそう言うと、プレジャーランドのチケットをつまんだ。チケットの真ん中あたりを両手の親指と人差し指でつまむ。すると突然、ビリビリとチケットを割いて見せた。

「何してんの? 破いたら……」
とノキアが言いかけた時、翔太が割いたチケットの切れ込みから不思議な光が放たれた。オーロラみたいに宙に色が浮いている。その時、プレジャーランドのチケットは光を放った端から、切れ目が音もなく元通りにくっついた。まるでチケットは最初から破られてなかったみたいに、完全に元通りになった。ただの学校のプリントの切れ端が翔太の手元にあった。

「すごくね? このチケット。偽物も出回ってるらしいけど、本物だと破っても元に戻るらしいんだ」
翔太がドヤ顔で、ノキアの前でチケットをひらひらさせた。

「ノキアのが本物かどうか、確かめてみ?」
ノキアは言われるがまま、チケットを割く。行く気はないから、破れたってどうだっていい。だけど、ちょっとだけ、さっき見た不思議な光景に興味が湧いた。

ノキアが恐る恐るチケットを破くと、チケットは不思議な七色の光を放った。翔太が持っていたチケット同様、割いた先から元に戻っていく。ノキアはその様子を目にして、思わず翔太の顔を見た。

「何これ、手品? 翔太、さっき触った時、なんかした?」
怪訝な顔のノキアの顔を見ながら、翔太は首を横に振った。
「なんもしてないって。ガチだって」

ノキアは、腑に落ちないと言う表情を浮かべる。だって、どう考えたって破った紙が元に戻るなんておかしい。手品じゃないなら、一体これはなんだと言うんだ。

「でもさ、このチケットおかしいでしょ。午前2時って。こんな時間に中学生が外出するって、無理じゃね? それにさぁ、プレジャー・ランドって日曜日までじゃなかったっけ? なんで月曜日に開いてんの? 絶対おかしい。全部、怪しい。おかし過ぎ。それに何このチケット。破っても元に戻るって、マジで怖いんだけど」

ノキアの眉間の皺が深くなった。
噛んでいたガムの味が薄くなっていたのに気づき、ノキアはポケットから空になったガムの箱を取り出す。箱の中にガムを吐き捨てた。

ガムを吐き捨てた箱をポケットにしまい、ポケットから新しいガムを取り出す。マルカワガム。手の上には三種類のガム。いちご、オレンジ、ぶどう味。

「翔太、食べる?」
ノキアは左手に乗せたガムを翔太に突き出した。
「お、このガム、久しぶりに見た! 懐かしっ。いいの? もらって」
「どれでもいいよ。好きなのとりなよ」
ノキアは左手をぐいっと突き出す。
「じゃあ、オレンジにしよ。サンキュー」
翔太はノキアの左手からマルカワガムのオレンジ味を受け取ると、ピリピリとビニルの包装を破った。そして、そのままガムを口の中にザラザラと放り込んだ。

「懐かし! 久しぶりに食べると美味いな」
翔太はガムをくちゃくちゃと噛みながら、ノキアに話しかけた。ノキアはイチゴの味を口に放り込む。いちごも美味しい。

ガムを風船にしようと舌で伸ばそうとしたが、ガムはまだ固かった。フーセンにするにはもう少し時間がかかりそうだ。フーセンガムはしっかりと良く噛んだほうが、綺麗に膨らむ。

翔太はガムを食べながら、チケットに目をやった。
「でもさぁ、興味わかね? チケットが元に戻るんだぜ? ありえねーって。しかもさ、閉園後の遊園地とか、絶対やばいって! 限定チケットだし。こんな機会一生ないって。行かないの勿体無いって! 絶対!」
興奮気味の翔太に、ノキアはふーんと鼻の奥の振動だけで返事をした。興味がないと言ったら嘘になるけど、夜中に家を出るなんて絶対にありえない。そもそも両親が許可するわけもない。それに、こっそりと家を出るのも不可能に決まってる。

「翔太んちって、そんなにゆるかったっけ?」
ノキアの質問に翔太は鼻で笑った。

「むしろ厳しんじゃね? ほら、ノキアも知ってるだろ? 俺の噂。部活やめて悪い連中とつるんでるっていう。別にさ、部活はやめてないし、悪い連中とも付き合ってないの。部活は行ってないだけ。親もそれはわかってるんだけど、世間体ってやつ? 気にしちゃってさ。なんか、厳しくなっちゃってんだよね」
翔太は肩をすくめた。

「じゃあ、なんでそんな噂が立つわけ?」
「さあね」翔太はまた、鼻で笑う。
「でさ、ノキア行かないの?」
ノキアは翔太の真似をして肩をすくめた。
「行かないって。出れないし」
翔太は何か思いついたような顔をした。
「ノキアって、家、一軒家じゃなかった?」
突然の質問に、何を言い出すんだとノキアは思った。思わず険しい顔になり、そして、翔太の顔を睨んだ。

「ほら、俺んちも一軒家じゃん? マンションだったら厳しいけどさ、多分、一軒家だったら、抜け出せると思うんだよね、ノキアも。ノキアもどうせ、毎日つまんないと思ってんだろ? 悩める中学生なんじゃないの? どうせ、今日だって部活サボってんじゃねーの? 一緒に行こうぜ」
翔太がオレンジ味のフーセンガムを膨らませた。ギリギリまで膨らませると、ガムは自然にパチンと弾け、ガムの中の空気がしゅうと抜けた。



「ただいま〜」
夕方の6時過ぎ、ノキアを除く山中家の面々が家に帰ってきた。裕司は大きな紙袋を抱えている。

「おかえり」
リビングのテレビでYoutubeを見ていたノキアが振り向いた。
「お土産買ってきたぞ」
へえ、とノキアはつまらなそうな返事を返そうとしたが、一瞬冷静になり「なになに?」と娘としての模範解答みたいな態度をとりながら、裕司に近寄る。

「プレジャー・ランドのお土産よ。食べ物も色々あってね。ノキアが好きそうなお菓子、いっぱい買ってきたのよ。あと、このぬいぐるみも! モンストロって言うクジラなんだって。悪い夢を食べてくれるキャラクターみたい」
恵美が横から割り込んで、紙袋の中身をダイニングテーブルに広げた。大きなクジラのぬいぐるみをノキアに手渡す。
「チョコクッキーに、いろんな味のフーセンガム。カラフルな砂糖がけのピーナッツに、パチパチ弾けるキャンディーだって! 楽しそうでしょ?」
よほど楽しかったんだろうか。恵美の顔がキラキラと輝いて見えた。

「あ、これぼくが食べたかったやつ!」
シオンがテーブルに広げられたお菓子の中から、さっとキャンディを掻っ攫う。
「お姉ちゃんも、一緒にこればよかったのに。めっちゃ楽しかったよ!」
シオンは楽しそうにプレジャー・ランドの様子を語った。

ノキアは中学生なのにぬいぐるみ? と思いながらも、フワフワとした肌触りのぬいぐるみを抱きながら、シオンのプレジャー・ランドの話を聞いていた。

入り口と中は完全な別世界。まさしく夢の中。外は昼間なのに、ドームの中は完全な夜。天井にはキラキラと夜空が煌めいて、大きな月が浮かんでいる。プレジャー・ランドは少し仄暗い雰囲気。少し不気味なダークファンタジー。

体の周りをうっすらと膜が覆っているような、そんな不思議な感覚。現実と非現実の間のような空間。ドーム内ではあちらこちらに風船が飛んでいて、ふわふわとしたバルーンの遊具がゆらゆらとゆらめいている。

ぱちぱち弾けるコットンキャンディーに、メガネの形をしたストローで飲むジュース。レインボーカラーの飴玉に、黒猫の形をしたチョコレート。道化師たちは、まるで浮いているかのような軽やかな足取りで園内を駆け回る。室内とは思えない大きさの観覧車に、ジェットコースター。おどろおどろしい館の中は叫び声が聞こえるお化け屋敷。

ノキアはシオンの説明を聞いているだけで胸がワクワクした。
「そんなに楽しいんだったら、お姉ちゃんも行けばよかった」
ノキアが呟くと「でしょ?」とシオンは残念そうに口を尖らせた。

「これ、一緒に食べようよ!」
シオンが紙袋の中から奪ったパチパチと弾けるキャンディーを外袋から取り出すと、一つノキアに手渡した。ノキアはキャンディーを受け取る。
少し半透明の、海みたいな色をしたキャンディー。中には気泡みたいなぷつぷつとしたものが入っていた。炭酸ガス入りのラムネか何かだろうか。

ノキアは海みたいな色をしたキャンディーを口に放り込んだ。表面に出ていた気泡に舌を当てる。舌が触れた部分にパチっと弾けるような刺激があった。
「あ、楽しい!」
「ね、美味しいし楽しいでしょ? ぼく、もう噛んじゃお」

シオンはそう言うと、ガリガリとキャンディを噛んだ。そして、ノキアに向けて大口を開けて口の中を見せてくる。キャンディはシオンの口の中でパチパチを音を立てながら弾けた。シオンが「痛い痛い!」と言いながらも、ゲラゲラと楽しそうに笑っているのを見て、ノキアは羨ましくなった。

ノキアも思わずガリっとキャンディを噛む。何味かわからないキャンディが口の中でバラバラになると、キャンディの中から、甘くて酸っぱくて刺激的な何かが弾け飛んだ。パチパチと弾けるキャンディは、口の中を縦横無尽に飛び回って、柔らかいほっぺたの内側の肉にぶつかった。じわじわと涎が溢れてきて、口の中の潮が満ちていく。

「なんか、海みたいな味がするね。よくわかんないけど」
ノキアがそう言うと、シオンは首を傾げた。
「そう? 海の味ってしょっぱいじゃん。これ、ソーダ味でしょ。お姉ちゃん変なの〜」
「たしかに」
ノキアはそう返して2人でゲラゲラ笑った。

ノキアは恵美が買ってきたお菓子の中から、カラフルな砂糖がけのピーナッツを選ぶと部屋に戻った。
ベッドに横になると、ピーナッツの袋を開けて、中から一粒手にとる。手に取った一粒を天井に向けて投げた。ピーナッツは放物線を描いて、ノキアのおでこにぶつかる。

「いて」

ノキアはベッドの上に転がったピンク色のピーナッツを指でつまむと、口の中に直接放り投げた。甘い砂糖をカリカリと噛むと、中から少ししょっぱいピーナッツが現れた。甘い砂糖のカリカリと食感と、ピーナッツのポリポリとした歯触り、そしてピーナッツの塩味が楽しい。ノキアは袋から緑色のピーナッツを取り出して、再び口の中に放り込んだ。

「なんだ、おんなじ味か」

そう独りごちてみたものの、ノキアの指はもうすでに自分の意思では止めることができなくなっていた。ノキアの意思とは関係なしに、指は次々にカラフルなピーナッツを口に放り込む。

「どうしようかな、明日。ーーじゃなくて明後日」
忙しなく動く指はピーナッツに夢中になっているが、ノキアの頭の中はプレジャー・ランドのことでいっぱいになっていた。

どうしよう。ものすごく楽しそう。

プレジャー・ランドには興味がある。でも……夜中に行くのはハードルが高すぎるし、諦めた方がいいのかもしれない。なんてことを考えつつも、ノキアは好奇心がむくむくと湧き上がってくるのを感じていた。





↓ 第3話






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