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身長162.7cmの目線

一所懸命に手を伸ばし、キャビネットの上の書類を取ろうとする彼女を見て、私は可愛いなあ、と思う。

きっと150cm前後の身長の彼女にとって、キャビネットの上というのは背伸びをして、手を一所懸命に伸ばして、やっとこさで届く高さなのだろう。

手を貸そうかと一瞬考えた時に、やっと彼女の手は求めていたものに手を触れた。よかったよかった、と私は安堵しながら、頭の片隅で「どうせ手を貸すのなら、私じゃなくてイケメン高身長の同僚男性であれば、恋も芽生えるってもんだよねぇ。夢だよねぇ。そんな同僚いたっけかなぁ?」なんてことをチラチラと考えてみる。

私にはキャビネットの上にはどういうものが乗っているかがわかるけど、もしかすると彼女には見えないのかもしれないな、と思った。
多分、あの目線からだと見えないだろう、と。

身長によって、見える世界が違うかもしれない。
なんて当たり前のことを考えた。

そういえば!と、身長189cmの方のvlogを見たことを思い出した。
高えなと思った。みんなのつむじが見える。頭ひとつ分視界が開けている。
かと思えば、電車の天井が近かったり、吊り革が顔の前だったり。

私の知らない世界がそこにはあった。
絶対に私には体験できない世界だ。

そういえば、我が愛犬ポッキーは、どこからかいろんなものを拾ってくわえてくる。道路に落ちてるゴミを即座に見つけるし、私が落としたキャベツの切れ端とか、どこかに落として見つからなくなった洗濯バサミとか、どこで見つけてきたの?というものをくわえてくる。

これだけ地面スレスレだったら、見えてるものが違うよな、と思った。
落ちてるものに興味が湧くのも、草花の匂いを嗅ぎたくなるのも、そりゃそうだなんて思った。
だって、顔の前にあったら拾いたくなるってもんだ。

まだ自分の意思で動けない赤ちゃんの前に、ニコニコした顔が現れたり、突然いろんなものが現れる。自分では動けないから、新しいものが現れると面白いよね、って思う。

寝返りして、ずり這いして、立ちあがって。赤ちゃんは成長するたびにどんどん目線が変わっていくし、見えるものが変わる。興味が湧くのも当たり前。どれも触ってみたいし、どれも食べてみたい。その気持ち、わかる!!

崖からおりる動画。こんなとこ、私は自主的に行かない。
すげーな。チャレンジャー目線。
ゼッタイ怖い。人が降りる場所じゃない。

空飛んでみたい!なんて思ったらこんなの出てきた!空飛ぶってこんな感じか〜!
しかし、この距離でちゃんと飼い主のところに止まれるってすごいね。何を目標にしてるんだろ。何を見ながら飛んでるんだろう。世界って広い。


子どもの目線、車椅子の方の目線、視覚障害のある方の目線、ベビーカー目線、お母さんの目線、おじいちゃんの目線。

高さが違えば見えるものが違うのは当たり前のこと。
でもきっと、同じ高さでも、見えるものは違うだろう。
目にとまるものも違うんじゃないかって思う。

空の変化に気づく人もいるだろうし、足元の草花に気づく人もいるだろうし、街の変化や、標識や、飲食店や、みんなみんな違うだろう。
とにかく世界は情報で溢れている。

でも、いつも私の目に入ってくるものは限られている。
多分、それは気になるものや好きなものなのかもしれない。

目線は人の数だけある。
何を見て、何を感じて、何を覚えているか。

あなたが見えるものを教えて欲しい。
私が知らない世界を見てみたい。
そして私はそれを知って、明日はどんな目線で世界を見るのだろうか。
同じ162.7cmでも見えるものが変わるかもしれない。

多分私には、赤ちゃんが目線を変えるたびにワクワクするみたいに、まだまだ見えていないものがたくさんある気がしている。




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