何を書きたいのか。

 思うところがあって小説を書き始めた。長編で、ファンタジーで、『小説家になろう』というサイトに掲載されているものと親和性がありそうだと思って、そこで書かせて頂いている。

 長編小説を書くのはこれで2回目になる。もう一つは数年前に何かの賞に応募した時で、どんな話を書いたかはもう覚えていない。正直に言うと冒頭部分は頭の中にあるのだが思い出すのも恥ずかしいほど稚拙な代物だったように思っている。

 書いてみてわかったのは、世界観を細かく設定しなければならないことと長文を書く大変さ、ロングブレスというか、文体の質を一定以上保ちながら先を見て途方もなく先が見えない何万何十万という文字をタイピングしていかねばならないというプレッシャーみたいなものは結構感じた。

 私は一度の投稿で4000時前後の文章を書いている。もっと少ない人もいれば、多くかける人もいるので何とも言えないのだけれども、とりあえず、これが今の自分の精一杯だ。それ以上書こうとすると文体が乱れて疲れが文章に出てきてしまうので、そんな時は作業を休んで好きな作家さんの短編小説を読む。

 今日は数年前に購入してちびちびと読み始め、ようやく読み終わった村上春樹氏の「職業としての小説家」について書いてみたいと思う。村上春樹氏の作品は昔から好きでよく読んでいる。長編小説はまだ未読の者も多いが、短編小説は『風の歌を聴け』から順次繰り返し読んでいる。

本著『職業としての小説家』はいわば小説家:村上春樹の舞台裏について語り口調で書かれている。あの文体はどのようにして誕生したのか、様々な文学賞についてどう思っているのか、村上流の長編小説の作り方についてなど、結構全出し感覚でさらっときわどく書かれている。

 私は好きな人がその人の好きな人について語っているところが好きなので、河合隼雄氏について言及されているところを読むことができたのは嬉しかった。

 長編小説を書くことについては本当に途方もなく気の遠くなる作業のことを指してをニコニコしながら喜んで語っているように感じたので、小説家は職人なのであるなぁと読んでいてしみじみ思った。

 この本を読んでいて、私が個人的にずっとぐるぐるもやもやしていた”自分の書くものの中身のなさ”や”何を書けばいいのか”みたいな悩みがバリンと音を立てて砕けていったのは、

【それをしているとあなたは楽しい気持ちになれますか?というのが一つの基準になるだろうと思います】という一文を読んだときだった。この文章の前後には村上氏の個人的な思いが書かれているのだけれども、この一文だけはとても自分の中の問いにヒットした。

 文章を書きたい人は私を含めてとても多い。中には書き方の向上を求めたり、何を書けばいいのかわからない人だっていると思う。そんな人達に本著は優しく時には突き放しながら背中を押してくれる。”本当のところはどうだか分からないけれども、とにかくやってみたほうがいいんじゃないかな。結果はどうなるかは分からないけど”みたいな、彼の小説の主人公の様な語り口で。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?