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「今だから刺さるコンテンツ」日記|小野寺

昔は刺さらなかったものが、歳を重ねた自分にいたく刺さる。逆も然りで、「あの時」好きになれたからこそ、自分にとってフェイバリットな存在であり続けるコンテンツがたくさんあると思う。

ここ数日、アニメ「PSYCHO-PASS」シリーズが面白すぎて夜な夜な何話もぶっ通しで視聴している。昨夜で3日目、とりあえず2期の途中まで観ました。きっかけはXに流れてきた企業コラボの描き下ろしイラストで、「とんでもなく好みの顔のキャラクターがいるな」と強烈な興味が湧いて。

この作品は様々なメディアミックスがなされているが、大元のテレビアニメシリーズの1期は2012年に放映された。放映当時かなり話題になっていたので学生だった私も観ていたが、好きなキャラクターが途中で殉職してしまった記憶しかなく、正直そこまでハマらなかった。

これが今観てみたら、とんでもなく面白い!かの有名なニトロプラス・虚淵玄さんが手がける脚本は、とても10年前とは思えない。ヴァーチャル世界におけるアイドル=偶像に関する痛烈な皮肉とか、SF世界で国の制度に守られて育った人間の倫理が薄まって他責思考が強くなっている様とか、性的関係を含む女性カップルの登場とか。ハラハラする物語の中でこれらが描かれていて、2024年を生きるアラサーにさっさるのなんの……。どんな頭があったら、12年前にこれを書けたんだろう。先生・制作陣の皆さん、ほんと凄すぎる……(というのを、アニメイトに勤めていたくせに今になって痛感している。ニトロプラスストアでレジ打ちしてたのに。刀剣乱舞のキャラを覚えるのに必死だったもんで)。

でもやっぱり、今この歳になっていないと「PSYCHO-PASS」の面白さには気がつけなかったように思う。
私が好きなもの、この世界にはたくさんある。そのどれもが、その時の自分のステータスだったからこそ、好きになれた。グロテスクさと強烈な絆に夢中になれる幼少期だったからこそ、ダレン・シャンやペギースーシリーズにハマれた。生きる理由を必死に探していた中学生だったから、週刊少年ジャンプに。恋愛体質だったらボーイズラブを好きになる暇はなかっただろうし、毎日不安じゃなかったら、BUMP OF CHICKENを聴いてない。実生活で周囲の人間に理解してもらえていたら、理解されるくらいに適切な自己開示ができていたらきっと、獄本野ばら先生の「エミリー」や「シシリエンヌ」、本谷有希子先生の「生きてるだけで、愛」に心撃ち抜かれていなかった。

そもそも推しって言葉に抵抗感があるから「推しは推せるときに推せ」という言葉は好きじゃないけれど、言ってることはまったくその通りだと思う。好きだと思えるとき、好きになれるなら、自分なりに好きでいよう。

最後にこれだけは言いたい。PSYCHO-PASSの面白いポイントはたくさんあるんだけれど、新卒で主人公が着任する「公安局捜査一係」の人間関係が大変興味深い。
アニメシリーズの何期においても、知識は浅いが優秀な年下上司&手荒だが腕利きの年上部下のリレーションシップが見られる。この人間関係が、見ていて本当に飽きない。それなりに歳を重ねて、扱いに困るパート・アルバイトさんとの関係に悩んだことのある人間はもれなく「あ〜あ〜ああーッダメダメっ!あ〜〜・・・・っそれは言いたくなっても言ったらさああ・・・・あ〜〜〜〜〜(クソ〜〜苦い記憶が蘇る〜〜〜〜でも分かる〜〜〜)」と、年上側にも年下側にも共感できて楽しい(しかも最終的には、主人公が上手くやってくれるのでキモチがいい)。個人的には、現場監督(大工さんとの関係に悩んだことのある)とかに見てほしいな、と思っている。征陸さんみたいな大工、いそうじゃんね?

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