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なぜ社長はコンサルの言うことは聞くのか

「どうして先週来たコンサルの言うことは信じるのに、20年以上一緒に働いてくれている社員のことは信じてあげないんですか」という現場猫の画像を見たことがあるでしょうか。

個人的にはこの現場猫の画像はすごく好きで、言わんとしていることはよくわかります。

今回はなぜ社長はコンサルの言うことは信じて、従うのか?という問いに対して、なんちゃって社会学的な視点から考えてみたいと思います。

まず(珍しく)結論から言うと、コンサルの提案・提言の後ろには不確実性があるからだと思っています。

※今回の話は、僕の好きなランドル・コリンズという社会学者の書いた「脱常識の社会学」という本から着想を得ています。

まず社会には権力というものがあります。
権力の定義はなかなか難しいですが、今回は人や組織を動かす力とします。これは職制に基づく指揮命令系統の話というより、本質的に人を動かす力だと思ってください。

ではなぜ、いち専門職であるコンサル(今回は経営コンサル)が社長を動かす権力を得ることができるのでしょうか。

ここで以前先輩(外資系の戦略コンサル出身)に言われたことを記載したいと思います。それは「営業段階では論点をとにかく沢山挙げて、検討は無理だと根をあげさせろ」ということでした。

経営コンサルが〇〇会社の経営に関して論点を上げるとは、だいたいこんなイメージ化と思います。

イメージ:まず、5Force・PEST分析で外部環境分析をして、3C・STP分析で自社・戦略策定して、4Pで細かく戦術に落とし込んでいきましょう。。。。みたいな。

 それぞれの分析結果やそれに基づく戦略策定が有機的に連携するようにまとめていくことは、非常に論点も多く、不確実性が高い中で高度に専門的なことをしているように見えます。

ここでいったん権力に話を戻します。どのような人が権力を持つのかという問いに対して、ランドル・コリンズは著書の中でこのように言っています。

しかし問題が高度の不確実性の中にある場合には、問題が何であるかを規定する専門家は大きな力を持つようになる。

ランドル・コリンズ著 "脱常識の社会学"

 具体例として、この本では自動車整備工と医者が例として挙げられています。分野は違うものの問題のある個所を直す(治す)という意味では、いずれの業務も類似していると言えると思います。しかし、直る(治る)ことへの期待値・実績としては圧倒的に自動車整備工の方が高いにもかかわらず、一般的には医者の方が尊敬を集めていることは理解いただけると思います。

これは、専門用語や医学知識の神秘性に要因があるとランドル・コリンズは述べています。つまり、自動車工学より医学は神秘的であり、治せないかもしれないという不確実性がより高い医学の領域において、専門家(医者)への尊敬の感情が隠然とした権力に変わるということだそうです。

なんとなく話の流れが見えてきていると思いますが、ここでようやく経営コンサルの話に戻ります。

要するに経営コンサルの扱う領域は、社会環境・内部環境・法規制・競争・技術予測等々あまりに広く、故に不確実性が高いのだと思います。(もしくはそのように印象付けている側面もあると思います)

社長だけではとてもその不確実性に対処できない。一方で、対処しきれるかどうかはわからないが、その不確実性の中で一定の進むべき方向性としての提案や提言を経営コンサルは(自信ありそうな感じで)持ってくる。

 そんな経営コンサルの提案に対して、医者の提言に従うが如く、社長は信じて動いてしまうのではないでしょうか。

※上記は社会学的な1つの視点から見た考察です。実際にはコンサルの提案や提言は内容が評価されて動いてくれることもあるはずです。また方向性みたいなものを出すときには、役員陣の意向を相当反映したものを作るために、採用されやすいという側面もあると思います。
(実際にはコンサルの提言というよりは、社長の描く方向性をビジュアル化したものといった感じです。。。)

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