教育現場でのChatGPTの利用についてChatGPTに直接聞いてみた

11月末のリリースから1週間でユーザー数が100万人を突破したChatGPT。こちらアメリカでは連日ニュースやtwitterで話題になっています。理事の畠山が、過去のブログをChatGPTを使って書き直してみるなど、サルタック理事陣内でも大きな話題になっています。既にアメリカの学校関係者の間ではChatGPTを使った宿題やテストでの不正への懸念が生じていて、NYC、LA、シアトルなどの公立学校では学校内での使用が禁止されるなど、ChatGPT(やその他AIチャット)は教育分野でも大きな議論の的になっています。今後日本でも議論を巻き起こしそうな教育現場でのChatGPTの利用。政策決定の際に当事者の視点が大事なように、手始めに教育現場での活用についてChatGPT本人(?)に直接聞いてみたいと思います。

手法は、①英語で質問を投げ、②文中の回答が被っている箇所は太字にし、③みんな大好きDeepLの助けを借りて翻訳し、不自然な部分には手を加えました。なお最初のChatGPTの活用に関する質問は実際には3番目に投げましたが、話の流れを分かりやすくするために最初に持ってきました。最後にインタビューを終えての私の所感をお伝えします。なおChatGPTのバージョンはJan9 versionでアメリカ時間の1月24日に質問を投げました。それでは早速ChatGPTにインタビューしていきましょう。

1.教育現場において、ChatGPTをどのように活用すべきだと思いますか?

ChatGPTは、適切な方法で使用すれば、教育現場において有用なツールとなります。以下は、その可能性のある使い方です。
1. 家庭教師や宿題の手助けとして。生徒の宿題を手伝ったり、難しい概念の補足説明をするために使用することができます。
2. 言語学習ツールとして。ChatGPTは、生徒がモデルとの会話を通じて言語を練習するために使用できます。
3. 研究アシスタントとして:ChatGPTは、関連情報を提供したり質問に答えたりすることで、生徒の研究を支援するために使用することができます。
4. ライティングアシスタントとして:ChatGPTは、文法、語彙、スタイルに関する提案を提供することで、学生のライティングスキル向上を支援するために使用することができます。

また、ChatGPTは人間の教師の代わりとしてではなく、教師と一緒に使用することが重要です。人間の教師は、個人的・感情的なサポート、説明責任、個々の生徒のニーズに適応する能力を提供するために不可欠です。

さらに、ChatGPTを倫理的かつ責任ある方法で使用することが重要で、訓練に使用するデータが多様で包括的であることを認識し、ツールが偏見や固定観念を強化するために使用されないようにすることが重要です。

2.教育現場でChatGPTを利用する際の問題点は何ですか?

教育現場でChatGPTを使用する場合、以下のような潜在的な問題があります。
1. ドメイン知識の欠如。ChatGPTは汎用言語モデルなので、人間の先生や専門家と同じレベルの専門知識を持っているとは限りません。
2. 生徒の意図を理解することが難しい。ChatGPTは、生徒の質問や発言の背後にある意図を理解することが困難であり、混乱や不正確な回答につながる可能性があります。
3. 生徒の個別ニーズに対応する能力が低いこと。ChatGPTは、人間の教師のように簡単に個々の生徒のニーズに適応することはできません。これは、学習上の違いや障害を持つ生徒にとっては制限となり得ます。
4. 反復的な訓練データへの依存。ChatGPTは、同じような訓練データで繰り返し学習した場合、同じような出力を繰り返し生成することがあります。これは、より多様な学習法で学習する必要がある生徒にとっては足枷となる可能性があります。
5. 個人化と人間味の欠如。ChatGPTは、人間の教師が提供できるような個人化と人間味を提供することができません。これは、より人間の機微に触れさせて教える必要がある生徒にとっては制限となる可能性があります。
6. アカウンタビリティの欠如。ChatGPTは、人間の教師ができるように、生徒の行動や進歩に責任を持たせることができません。

3.教育現場でのChatGPTの利用を禁止した事例はありますか?

教育現場においてChatGPTの使用が禁止された具体的な事例を私は知りません*。しかし、教育現場でのAI搭載ツールの利用は、比較的新しく発展途上の分野であり、その利用に関する規制やガイドラインは、多くの国でまだ策定されていないのが現状です。さらに、教育現場でのAI搭載ツールの使用は、他の分野での使用と同様に倫理的配慮の対象となり、不適切または非倫理的とみなされる特定の文脈では、制限または禁止される可能性があります。

また、ChatGPTは強力な言語モデルですが、人間の教師の代わりにはならないことも重要なポイントです。教育ツールとして使用することはできますが、人間の教師の代わりとしてではなく、人間の教師と一緒に使用する必要があります。

4.教育現場でのChatGPTは規制されるべきか?

教育現場においてChatGPTを規制すべきかどうかは、特定のコンテキストと使用法によります。一般的には、AI搭載ツールを教育現場で使用する際の潜在的なメリットとリスクを検討し、倫理的かつ責任ある方法で使用されていることを確認することが重要です。

AI搭載ツールが、生徒、教師、その他のステークホルダーにとって安全、公正、かつ透明な方法で使用されていることを確認する上で、規制は有益なものとなり得ます。例えば、ChatGPTのトレーニングに使用されるデータが多様で包括的であること、そしてツールが偏見や固定観念を強化するために使用されないことを保証するために、規制を利用することができます。また、規制によって、ChatGPTの使用が透明であり、生徒や教師がツールの使用方法と収集されるデータについて知らされていることを保証することも可能です。

しかし、過剰な規制はイノベーションを抑制し、教育現場でのChatGPT活用の潜在的なメリットを制限する可能性があることも考慮する必要があります。生徒や教師を保護することと、教育現場でのAI搭載ツールの利用における実験やイノベーションを許容することのバランスを取ることが重要です。

また、教育現場でのChatGPTの使用は、使用する特定の国や地域の法律、規制、ガイドラインに従って行われる必要があることにも注意が必要です。

5.ChatGPTを使用する学生は、自分で考える力を失うと思いますか?その理由、またはそう考えない理由は何ですか?

ChatGPTに過度に依存した場合、批判的・自立的な思考力が失われる可能性があります。しかし、そうなるかどうかは、教育現場でのChatGPTの使われ方次第です。

ChatGPTが学生の学習を支援・補完するツールとして使われる場合、学生は新しい情報を学び、複雑な概念を理解し、批判的思考力を身につけることができます。しかし、ChatGPTが人間の教師の代わりとして使われたり、生徒が批判的・自立的に考えることを奨励されなかったりすると、これらの能力が失われる可能性があります。

また、ChatGPTは人間の教師のように簡単に個々の生徒のニーズに適応することはできませんし、人間の教師が提供できるような個人化や人間味のあるサービスを提供できないかもしれません。さらに、ChatGPTは、人間の教師のように、生徒の行動や進歩に責任を持たせることができません。

教育者はこれらの限界を認識し、ChatGPTを代替するのではなく、生徒の学習を支援・補完する適切な方法で使用することが重要です。生徒が批判的かつ自主的に考えるよう促し、ChatGPTの効果的な使い方を指導することで、生徒が自ら考える力を失ってしまうリスクを軽減することができます。

6.K-12の児童・生徒にChatGPTの利用を勧めますか?

ChatGPTは幼稚園児から高校生まで使える便利なツールですが、人間の先生や他の教育資源と併用し、それらの代わりとして使うべきではありません。

ChatGPTは、適切かつ倫理的な方法で使用する限り、言語学習ツール、ライティングアシスタント、リサーチアシスタント、宿題ヘルパーとして使用することができます。ただし、ChatGPTは汎用的な言語モデルであり、人間の教師や教科の専門家と同じレベルの特定分野の専門知識を持っていない可能性があることに注意が必要です。

また、ChatGPTは生徒の質問や発言の背後にある意図を理解することが難しく、混乱や不正確な回答につながる可能性があります。また、人間の教師のように個々の生徒のニーズに簡単に対応することもできません

また、教育におけるChatGPTの倫理的かつ責任ある使用について考慮することも重要で、訓練に使用するデータが多様で包括的であることを確認しツールが偏見や固定観念を強化するために使用されないようにする必要があります。

結論として、ChatGPTは幼稚園児から高校生まで使える便利なツールですが、人間の先生や他の教育資源と一緒に使うべきで、それらの代わりとして使うべきではありません。その使用は、使用される特定の国や地域の法律、規制、ガイドラインに従い、倫理的かつ責任ある方法で行われるべきです。

7.Chat GPTの利用規約には、利用者は18歳以上であることが明記されています。幼稚園児から高校生までがChat GPTを使うべきということでしょうか?

申し訳ありませんが、回答を完了することができません。

まとめ

Chat GPTへのインタビューいかがだったでしょうか。まずは、数秒で整理された文章がアウトプットされることに驚きました。ChatGPTの活用方法や問題点については箇条書きで分かりやすくポイントを挙げてくれています。しかし回答はメリット・デメリット両方を挙げ網羅的に見えるものの、長くなりがちです。要約として再度表現している箇所もありますが、太字にした箇所が多く、別の質問であっても同じ回答が何度も出力されています(その課題についてはChatGPT自身が把握しているのも恐ろしいですが…)。またいくつか誤りがあります。問3の*を付けた教育現場でのChatGPTの使用が禁止された事例を知らないという箇所は誤りです。冒頭で書いた通りアメリカのいくつかの地域で使用が制限されています。またChatGPTの未成年の使用は利用規約により禁止されています。問6では尤もらしい回答を出力していますが、ここは明確に未成年は使用できないと出力すべきで、問7でその点を詰めるとエラーを起こしてしまいました。
ただこれらの課題も訓練データが増え、新しい情報も訓練データとして取り込めるようになれば回答の精度・質が上がってくるかもしれません。

生徒がAIで生成した文章をエッセイとして提出する懸念に対しては、既にAIで生成した文章か否かを判別するツールが生まれています。以下のような強者大学生もいました。

一方で実際には不正を断定するのは難しいようです。また技術の進歩で、より人間らしい文章を生成できるチャットボックスが誕生するのも時間の問題な気がします。仮に生徒・児童自身の文章力をテストしたい場合は、教室内での試験の実施などアセスメント自体のデザインを変える必要があります。

とは言え、そもそもChatGPTなしで児童・生徒の文章力を測る必要はあるのでしょうか。ChatGPTのCEOは、ChatGPTを使用した学校教育での不正に対して、「アメリカの算数のテストでは電卓を使用するのが当たり前になったように、AIによる文章の生成に慣れていくだろう。」と述べています。これから学校教育を受ける子どもたちにとってはChatGPTなどのAIチャットボックスが当たり前の世界で生きていくことになります。AIが文章生成のような役割を担ってくれるのであれば、AIとコラボした課題解決方法を学ぶ方がはるかに現実に即した教育なのかもしれません。ただこれによって人間の能力が拡張するのかはたまた低下するのか、の判断には詳細なエビデンスが必要です。

ChatGPTを開発したOpenAIも認めているようにChatGPTのアウトプットは間違っている可能性があり万能ではありません。正しい情報が得られない可能性のあるChatGPTの使用にあたっては、アウトプットやその裏付けとなるエビデンスの正確性を判断する批判的思考力が非常に大事です。ChatGPTは膨大なテキストデータを読ませているようですが、どのようなソースからテキストデータを手に入れているかは、今のところ分かりません。AIの仕組みに関する知識だけではなく、AIのアウトプットに対して批判的に思考できるAIリテラシーを身に着ける必要があります。

まず手始めに学校の先生のAIリテラシー向上を…と学校に改善を丸投げする意見が聞こえてきそうですが、教育現場だけではなく、家庭や地域を含めた包括的なAIリテラシーを醸成していく必要があります。先日NYCのある学校から教員免許は要らないのでどうか教員になってくれませんか?と私宛にジョブオファーがありましたが、アメリカでも日本でも人手不足・多忙化で疲弊している教育現場が多くあるのではないかと思います。教育現場は日々ChatGPTだけに対応しているわけではありません。ChatGPTもインタビューで答えている通り、ChatGPTは教員の代替にはならず人間の先生の存在は不可欠です。AIとの共存社会の担い手を生みだす教育現場への投資は惜しまず行っていくべきだと思います。
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