アート界の闇を暴く!欲望まみれのミステリー・ノンフィクション!『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』【スタッフブログ】
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アート界の闇を暴く!欲望まみれのミステリー・ノンフィクション!『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』【スタッフブログ】

サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

510億円という史上最高額の値がついたレオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる油彩画「サルバトール・ムンディ」を巡るドキュメンタリー。

事のはじまりは2005年、ニューヨークの美術商ロバート・サイモンがニューオーリンズの競売会社のサイトで見つけた「サルバトール・ムンディ」を1175ドル(13万円)で購入したのが切っ掛け。(本当はもう一人との共同購入)

かつてイングランド王のもとにあった「サルバトール・ムンディ」 (Salvator Mundi=世界の救世主)は1763年以降100年以上にわたって行方不明となり、その姿はヴェンツェスラウス・ホラーによる版画によってのみ知られていたとのこと。

ロバートは仕事仲間であるダイアン・モデスティーニに修復を依頼、後世に描き足された絵具を取り去ると、右手の親指の下に別の親指が現れた・・・

ロバートはこれがダ・ヴィンチによる真筆と確信、ロンドンのナショナルギャラリーに連絡して鑑定を依頼した。

絵が“再発見”されて再び世間の注目を浴びるようになる経緯は驚きの連続。

映画のテーマは件の「サルバトール・ムンディ」が果たしてダ・ヴィンチによる真筆なのかといった真贋論争の他に、この絵を巡るさまざまな人々の思惑や利害関係が次第に露わになっていく、驚くべきドキュメンタリーなのでした。

それによって絵の値段が次第に高くなっていくプロセス、その理由が明らかになっていきます。

ロンドンのナショナルギャラリーでセンセーショナルな展示を果たし、一躍注目を浴びた「サルバトール・ムンディ」になかなか値段が付かない理由、ロシアの新興成金が一目惚れして入手に至る経緯、購入を巡る訴訟問題など、ここらへんまでは富豪の趣味、財産としての保有という、ある意味では想像の範疇ではある。

この絵の場合、値段が徐々に上がっていく、というのではなくて、階段状に突如として値段が文字通り桁違いに吊り上がっていくのが特異なところ。

もちろんそこには“ダ・ヴィンチ作”という美術史上のというより、最早人類史上の重要物件である、というプライスレスな“付加価値”が加わっていることによるものだと思いますが、2017年にクリスティーズのオークションで4億5000万ドル(約510億円)もの価格で落札された背景には、その背後にある国家レベルの威信や思惑が絡んでいることが明らかになるのでした。

しかし一方で、この絵に纏わる問題はそうした絵を所有したい、と願う国家指導者らの意思とはまったく別の、根源的な問題を孕んでいるのでした。

その問題とは“修復”を巡る不可逆的な改変に纏わるもの。

ニューオーリンズで発見された当時の絵は後世の上塗りで“のっぺり”した印象となっていて、特に顔以外の衣服などは素人目に見てもなんとも杜撰な印象。

元の絵は5つに破れていたものをキャンバスの裏側から木で繋いで上塗りされていたとのことですが、初期の修復過程で上塗りを除去したときの画像を見ると、顔の横に上下に走る大きな破損個所や全体にわたる傷など、オリジナルな部分の損傷はかなり酷いことが分かります。

ところが、ナショナルギャラリーで展示された絵をみると、まるで“新品”のように綺麗に修復されているのです。

これは所謂“修復”というよりダイアン・モデスティーニによる新たな“描き足し”ではないか?

“デカいヤマ”と踏んだロバート・サイモンら、初期の“発見者”が功を独り占めして絵をセンセーショナルな形で発表するために過剰に手を加えてしまったことの問題が浮かび上がってくるのでした。

クリスティーズで4億5000万ドルで落札されたのち、ルーブルでの展示がお流れになったのも、結果としてその後一回も展示が行われず、その所在すらも公的には明らかになっていない、という事実は、この絵の価値という根本的な部分において、疑義が示されていることの左証というべきでしょう。

つい先日(11月15日)プラド美術館は「サルバトール・ムンディ」をレオナルドの「帰属作品、工房、またはレオナルドが許可・監修した作品」と認定した、とのニュースが流れたばかり。

真贋論争の再燃や500億円超の価格がその絵画に見合うのか?という根本的な問題からすると、その価値は急速に萎んでいるように感じられます。

映画の最後にその後の顛末もクレジットでも触れられていますが、「サルバトール・ムンディ」を巡る物語はこの先もさまざまな形で目にする機会があるかと思います。


人の欲望や国家の威信といった巨大すぎるパワーゲームに一枚の絵が翻弄される過程は絵の本来の価値や目的とはまったくかけ離れたところにあるのですが、ある意味滑稽とも思える事態の推移には今後も注目していきたいと思います。

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』静岡シネ・ギャラリー上映情報

2021/12/24(金)~1/6(木)まで上映

12/24(金)~12/30(木)まで
①11:45~13:30

12/31(金)~1/6(木)まで
①10:05~11:50
(1/1のみ①の回休映)


スキありがとうございます!!
サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー
静岡市葵区御幸町にある、サールナートホール/静岡シネ・ギャラリーです。 定期的に演奏会、講座などのイベントを開催。3階には、映画館・静岡シネギャラリーを併設。 当館で開催するイベント、上映する映画の情報などを発信します。 http://www.cine-gallery.jp/