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S_mmer


また
今日も僕は空を見て
遠い君の髪を思う
あの頃は肩までだったけど
今は伸びたのか 切ったのか
ほら
僕はあの頃と同じまま
それでも背丈は少し伸び
足首が見える学ランと
夏服の中の青い花

近く見える花火の下
君の色香が翻る
それでも隣はいないまま
うしろで彼岸の花揺れる

ラムネの中のA玉を
取り出し そこに君を眺む
少し残った泡沫の
思いは遥か 藍のそばへ
無色透明の夏の気が
どこかでそっと黄に染まる
蛍が連れるあぜ道で
僕の名がどうか 君に咲け

ねえ
こちらは土砂降り夕立ちで
露草は雫をのせてる
君はどこかで雨に濡れて
風邪をひいたりしてないか
もう
君がいた日を懐かしみ
世界は蒼に泣いている
泥に塗れたスニーカーと
机の上の借りた本

瞼の裏の暗闇で
消えない音が胸に沁みる
掌の中につかまえた
君の背中の温もりよ

天に花開く朝顔の
その青なぞり君を描く
窓から映る自分の手の
小ささをふと思い知った
蒼く光った星がまるで
嘯くように背を向ける
脳裏に焼き付いた君の名へ
永遠に愛を届けようか

願っている 届きますように
願っている 叶いますように

空に架かった光る川に
僕は祈りを捧げたんだ
遠い君に僕の名が
鮮やかに咲きますように

君がいた日を辿ろうと
この街を歩き続ける
今はまだ泣きそうな気持ちも
いつかは忘れ去るのならば
それまで僕はあの夏の
朝顔 露草 彼岸花が
咲くのを見ては君の名を
心にきっと咲かせよう


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もう夏じゃないけど、そういう気分だったのであげちゃいます
タイトルは君が去った夏ってことでひとつ

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誰かのどこかに刺されば嬉しいです