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英語小論文(Essay)の書き方

はじめに

私がまとまった英文を初めて書いたのは、IELTSライティングの試験の時でした。その次は大学へ提出する自己推薦文(なぜ医学部を志願したかについて)、それから大学の学部時代に書いたサイエンス的なエッセイでした。それから学部3年の終わりにそれまでやっていた研究の卒論をかき、去年博士1年のレポートをかきました。来年は博論に取り掛かります。

一見して全く違うように見える文章ですが、これらには全て共通点があります。そしてそれは、英文の書き方というよりは「わかりやすい文章を書く」ということにつきます。一貫して言えるのは、読者に自分の文章の構造をわかりやすく伝える、そのために随時読者に「今からこの内容について話しますよ」「今から話すのは一つ目の論点ですよ」「この論点で最終的に言いたいのはこういうことですよ」などとを明確に示すということです。

書くことはアカデミアにおいて最重要項目の一つであると考えます。知識があっても伝える術がなければ理解してもらえません。逆に言えば、書き方を知るだけで評価が上がることも多くあるということです。書き方の癖などは一朝一夕に慣れるものではないので、この文章が少しずつ意識していくきっかけとなればと思います。

1)第一段落:売り文句、なぜこの文章を読む意味があるのかを伝える

2)間の段落:結論を導く根拠を段落ごとに一つ挙げ、トピックセンテンスに明示する

3)最終段落:結論を述べ、さらにそれを拡張する

4)小論を書き始める前に

1) 第一段落:売り文句、なぜこの文章を読む意味があるのかを伝える

長い文章があると、読者はそれを読むかを決めねばなりません。誰も時間を費やして、自分に必要のない文章を読みたくはないですよね。第一段落はその文章の存在意義を伝えます。これによって読者の興味がそそられるかどうかが決まるため、とても重要です。

私がオーストラリアでIELTSのライティングの勉強をしていた時、先生は「最初のパラグラフの1文目では、問題文の言い換えをしなさい」と教えてくださいました。例えば、IELTS問2の問題文で「変化を嫌う人もいれば、変化はいいものだとする人もいます。意見を述べなさい」とあれば、第一段落を「世の中には、身の回りや自分が変わっていくことをよしとする人もいれば、変わることを嫌がる人もいることが知られています。このエッセイではそれについて考えていきます」という風に書くのです(注)。

(注)この時、問題文と同じ語彙をなるべく使わないことがIELTSの試験では重要になります。ここでは語彙力を見られるからです。また、英語では全く同じ言い回しや単語を使うことが好まれませんので、「言い換えができる」というのは長い文章を書いていく上で重要なスキルです。文章を推敲する際には同じ言い回しを繰り返していないかチェックするようにしましょう。

この場合、この1段落目はその文章が「何について」書かれているか明示する役割を持っています。読者はその内容を見て、その文章全体を読みたいかどうか考えるわけです。理にかなっていますね。

ただ、これではそのトピックについてすでに興味のある読者しか読んでくれません。つまり、この一文だけ読んで、その題材を面白いものだと思えない、または面白いかどうかわからない人は読まないわけです。あなたはこの文章を書く価値がある、読む価値があるものだと思ってわざわざ時間を割いて書いているわけなので、この文章がどうして面白いのかについて一般の人よりも知っているはずですよね。その価値を少しでも共有し、この文章をもっとたくさんの人に「面白いかも」と思わせるにはどうしたら良いのでしょうか。

まず、「なぜそのトピックに興味を持つに至ったか、どうしてそのトピックについて論じることが大切か、あなたの知っている必要性をとく」ということです。例えば、「今現在、こういった社会問題があります。この社会問題の原因の一つには、変化を嫌う人と好む人との対立があると思われます。なので、これらの相反する意見について考えることはこの問題を解決する一助となります。」という風な感じです。たくさんの人が興味のある「社会問題」に自らの論点を結びつけることによって、より多くの読者に読んでもらおうという狙いです。

さらに、論点を客観的な証拠、他者の書いた文章により補強することで、文章を社会的な文脈におき、かつ信ぴょう性を増します。「いま現在、こういった社会問題があることが知られています。この社会問題は、XX年ごろからXX人の人たちにXXといった被害を及ぼしています(社会問題の重要性の証拠)。なので、これを解決することはXXの人たちを救うためにとても重要です。この問題の根幹にある原因の一つとして、AとBとの対立があるという説がXXらによって唱えられています(社会問題と、自分の論題のリンクに関する証拠)。この二つのグループの相反する意見について考えることはひいてはこの社会問題を解決することに繋がると考えます。」といった感じです。

ここまでするとおそらくIELTSのライティングではやりすぎだと思います。IELTSのライティングのトピックは、もっとカジュアルな個人的な意見に関するものが多いですし、論文のように何かを引用することも求められていません。でも、例えば「最近こんなことがあり、この問題について考えるきっかけとなった」「この問題はこういったところにまで影響を及ぼしうるので、議論が必要だ」「この問題はこういった観点からもう少し細分化して考える必要がある」というような文章を挟むことで、第一段落に深みがでます。また、その後の段落の続け方を目次のような形で紹介しても構いません。「まずはじめに、XXの観点(第二段落)からこれを論じ、次にXXの観点(第三段落)から、最後にXXの観点(第四段落)からこの問題を考えていこうと思います。」といった風です。

最悪、言い換えだけで第一段落を終えてもいいのですが、英文は段落の長さを大体等しく揃えることがよしとされているので、アンバランスな文章になることを避けるためには4、5文は欲しいところだと思います。ケンブリッジ大学の試験で書くことを求められたエッセイでは、最初の段落に4、5文なければ毎回減点されました。論文だと、イントロだけで大抵複数段落になります。

2) 間の段落:結論を導く根拠を段落ごとに一つ挙げ、トピックセンテンスに明示する

間の段落は全て、最終的な結論に導くサポートとして使われます。IELTSのライティングの問2では大体3個の段落を入れることが求められています(字数制限は250wordsなので、1文が大体10wordsとして、一段落に5文(50 words)x 5段落の計算です。最初の段落は問題提起、最終段落はまとめに使われるので、残りの3つが間の段落となります)。その他の小論については、制限時間や字数制限によります。

まず、その複数の間の段落で何を述べるかですが、最終的な結論に導くための違う視点からの論点であることが一般的です。例えば、変化を嫌う人と好む人というトピックであれば、(例1)「良いところと悪いところ」というところを細分化して、「変化には良いところがある」という主張を第二段落に、「変化には悪いところもある」という主張を第3段落に置くことができます。また、(例2)「変化」というところを細分化して、それが例えばどういった変化であるか、「社会の変化」を第二段落に、「環境の変化」を第三段落に、「性格の変化」を第四段落におくといった形でも構いません。

次に、各段落の構成について説明します。まずは冒頭文の最初に、この段落は前段落とどのような繋がりがあるのかをはっきりと示す語を入れます。典型的なものは「まずはじめに(Frist)」などです。これはSign postingと呼ばれ、読者にその段落の内容を予想させ読む態勢を整えさせるといった役割があります。

次に、段落の1文目の内容です。第一段落が論文全体の問題提起であったように、段落の1文目はその段落の掴みとなる重要な文章です。第一段落と異なり1文しかありませんから、ダイレクトにその段落の結論を述べるのが一般的です。(第一段落でもその最後の部分で同様に結論を述べても構いませんが、最終段落まで延ばしても大丈夫です。)つまり、(例1)の場合は「変化には良いところもあります。」から文章をはじめ、(例2)の場合は「社会的なコンテクストにおいては、変化は良いものだと考えます。」というように第二段落を始めるわけです。この段落の結論を簡潔にまとめた1文のことを、トピックセンテンスと呼びます。

それから、残りの文章でその証拠となる理由を述べます。論文などではトピックセンテンスの結論を支持する文献を引用したりします。IELTSのライティング対策を行なっていた時に受けたアドバイスとして、とにかく「例えば(For example/For instance)」を使って話題を膨らませろというのがありました。これは、トピックセンテンスを支持する文章に文献からの引用をもちいれないIELTSだからこそ、トピックセンテンスの具体例を上げることで信ぴょう性を上げる、という手法だったのだと思います。「例えば、私はこういう経験を通して社会的なコンテクストに置ける変化の重要性を感じました。」といった感じです。この「例えば」も、その後に支持例が続きますよ、という意味のSign postingです。

冒頭のSign postingとトピックセンテンスがあることで、読者は段落を読む前にこの段落の文章全体における位置付けがなんなのか、その段落から得るべき最重要情報が何なのかを瞬時に理解することができます。これによって「結局何が言いたかったの?」となる事態を簡単に避けることができるのです。また、こうしてはっきり書くことを意識すると、何が自分の一番言いたいことなのか自分の中ではっきりさせられるという利点もあります。

3) 最終段落:結論を述べ、さらにそれを拡張する

最終段落は、まとめの段落です。間の段落の主張をまとめて、最終的な結論を述べます。一番楽な方法は、In conclusion/To sum up,(結論として、)から段落を始める形です。(これもSign postingの一つです。)そして、ここでいう例で言えば、変化は良いものか、悪いものか、また場合によって異なるのか、そういった結論を繋げます。これが最終段落のトピックセンテンスとなります。

それだけでは1文しかありませんので、それをサポートする文章として、これまでの3段落をまとめた文章を後に繋げます。3段落の最初の文をトピックセンテンスにしているなら、その3つの冒頭文の要約を入れる形になります。論文などではここは結論の意味合いをより深く考察したり、今後考えていくべき課題などを述べるところでもあります。

4) 小論を書き始める前に

小論文を書くときは、書き始める前に、内容を構造に沿って書き出すことが有効です。その際、2つの違うタイプのグラフが便利になります。一つはbullet point、もう一つはmind mapと呼ばれます。見た目は以下参照してください。

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どちらを使うかは好みですが、やっていることは同じです。先にこういった大まかな構造を決めておくことで、書いてしまった後に、一つの段落が大きくなりすぎたり小さくなりすぎたり、言いたいことが系統立てて段落に分かれていない、などの事態を防ぐことができます。

終わりに

小論文の構造は、英文の書き方というよりは「わかりやすい文章を書く」ということだと「はじめに」に書きました。例えば、わかりやすくまとまったnoteの記事などもこの法則に乗っ取っています。まずは導入、その文章のテーマとなぜそれを書くに至ったか、そして文章でカバーする内容を大まかに述べ、各項目をカバーしてから最後に書いた内容をまとめます。各項目の最初に、一番言いたいことを持って来ることで、優先的に重要な情報を読者に伝えることができます。

もちろん、慣れてくるとトピックセンテンスが段落の冒頭だ、とか、一つの論点は一段落にまとめるだとか、そういったルールから外れた文章もうまくかけるようになってきます。大切なのは「わかりやすい」ということで、トピックセンテンスや段落分けなどはそれを果たすための手段に過ぎません。Sign Postingやトピックセンテンスのアイデアが理解できてさえいれば、多少複雑な構造でも読者を迷わせずに誘導することができるようになるはずです。

ここで紹介したのは文章のスタイルの一つで、主にアカデミアや英文で好まれるスタイルです。他人に自分の考えを端的に伝えるのに適した構造で、ニュアンスを重んじる小説などとは大きく異なります。どちらが良いも悪いもありませんが、普段生活している上であまり読まないスタイルの文章は、いざ試験や志願書を提出する時に急に書けと言われても難しいことも多いと思います。英文でなくても良いので、日頃から文章を読むことに意識的になる、またこういったタイプの文章を書くことに慣れておくことで、来たるべき時に抵抗なく書く一助となることを願います。



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