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クリスマスイブに愛犬を想う

きらびやかな街。
いつもよりワクワク、ソワソワしてる人々が行き交う。

そんなクリスマスイブに、私は毎年、愛犬を想う。

彼の命日だから。

悲しみはもう乗り越えたし、この数年は涙を流すこともなくなったのに、今年はこんなにも切なくなるのは、あの時の気持ちをはき出したくなったのは、今日があの時と同じ土曜日だからかもしれません。

あの時と同じ場所から、同じくらいの時間に同じ路線に乗り、同じ方面に向かって帰る。

そんなことをしていると、あの時の記憶がありありと蘇ってきて、心がぎゅっとなりました。


2016年12月24日土曜日。

私は、午前中〜夕方まで習い事がありました。

その日もいつも通り行って、帰りにスマホを見ると母からメールが入っていました。

「動物病院に来て」

このたった一言。
受信は1時間前。

メールを読んだ時の私は、調子悪いのかなくらいにしか考えていませんでした。

動物病院の最寄駅に着き、同じ駅にあるケーキ屋さんで予約していたクリスマスケーキを受け取り、病院へ向かいました。

到着すると、待合室に愛犬の姿はありませんでした。

私はまだ気楽に考えていました。
点滴中なのかな?としか思わなかった。

ところが、私に気づいた父が放った言葉。

「ダメだった」

一瞬、何を言っているのか理解できませんでした。

でもすぐに、母の姿を見てわかりました。

母が泣いている。

泣き顔を見せたことがない母が。

それからは涙がとめどなく出てきました。

私たち以外にも人やわんこはいたけど、抑えることができませんでした。

対面した彼は、眠っているみたいでした。

呼んだら目を開けてくれそうなくらい穏やかな顔。

なのに、何度呼んでも起きてくれませんでした。

家に向かうまでの車の中。
街路樹を飾るイルミネーションが憎らしかった。
道行く人たちの笑顔が憎らしかった。

私たちはこんなに悲しいのに、どうしてキラキラしているの?
どうして笑っているの?

私たちだけ真っ暗闇の中にいる気分でした。

家に着いてからも涙は止まりませんでした。

人間用のケーキなんてあげたことなかったけど、「今日は特別だよ」と切り分けたケーキを、タオルの上に横たわる彼の鼻先に母が置いてあげました。

いつもなら飛び起きるのに、やっぱり目を開けてくれなくて。

私が頑張って明るい声で「わー!よかったねぇ!」と言っても、やっぱり目を開けてくれなくて。

一緒に食べたケーキは何の味もしませんでした。

一晩中泣いて、翌朝も泣いて。

涙って枯れることなんてないんじゃないかって思うくらい泣きました。

泣いている間中、私の中にあったのは後悔でした。

彼が亡くなった日、私は出かける前に彼に声をかけました。

その時から具合は悪そうだったのに、私は習い事に行くことを選びました。

その結果、最期に一緒にいられなかった。

どうして習い事なんか行っちゃったんだろう。
どうして側にいてあげなかったんだろう。

本当は、いつ亡くなってもおかしくない状況だってわかってました。

けれど私は現実から目を逸らし、根拠もなく一緒に年を越せると思っていました。

そんな浅はかな自分を呪いました。

他にも、どうしてもっと遊んであげなかったんだろう、どうしてもっと一緒にいる時間を大切にしなかったんだろう、と様々な後悔が押し寄せてきました。

彼がいるのが当たり前すぎて、いつまでも一緒にいる気がしてました。

そうではないと気づいた時には、遅すぎました。


今でも、後悔は消えていません。

けれど今は、感謝の気持ちの方が大きいです。

ひとつは、家族を繋いでくれたこと。

私は万年反抗期で、両親と話すことはあまりありませんでした。

しかし、彼が来てからは、両親と直接何気ないことを話すことはないけど、彼を介してなら話せました。

例えば、私が「今日は寒いね」と彼に声をかけたら、母が彼のセリフみたいに「そうだね」と返す感じでした。

また、話題が彼のことなら両親と話すこともできました。

家族がバラバラだったわけではないけど、彼が潤滑油になってくれました。

一番感謝していることは、一緒に過ごしてくれたこと。

正直、イライラすることもありました。

初めの頃はトイレをなかなか覚えられず、部屋のあちこちでしてしまうし、成犬になっても布団の上にあてションされることもありました。

クッションやケータイ、デジカメ、柱、色んなものをかじられたこともありました。

それでもやっぱりかわいくてかわいくて、少し時間が経つとイライラは飛んでいきました。

学校や仕事から帰ってきた時に玄関の扉を開けると、首を傾げながらちょこんと座る姿があって、名前を呼ぶと駆け寄ってくれる。

ベタベタ触っていると、迷惑そうな顔を向けてくる。

みかんやりんごを食べている私の姿を、キラキラした目で見つめてくる。

そんな小さなことを繰り返す毎日が幸せでした。

一緒に過ごした13年間は、私にとってかけがえのない時間でした。

今でもうちの子が一番かわいいと思っています。

毎年クリスマスイブに伝えていることを今年も。

幸せな時間を本当にありがとう。
大好きだよ。



クリスマスに願い事をするものかわからないけど、もしも願っていいのなら、

どうか全てのわんこやにゃんこが幸せに暮らせますように。

無責任な飼い主や悪徳ブリーダー、業者がいなくなりますように。

彼と暮らし始めてから知った残酷な現実。

毎年の数万頭のわんこやにゃんこが殺処分されていること。
ペットショップで命が選別されていること。
売れ残った子たちの行く末。

これから動物を飼おうと考えている人は、真剣に考えてほしい。

最期まで一緒に暮らせるのか。
思っていた性格じゃなくても愛情を注げるのか。
根気強くしつけできるのか。
お金は充分にあるのか。
自分にもしものことがあったら、誰が引き取ってくれるのか。
保護犬/保護猫を迎え入れる選択肢はあるのか。

ぬいぐるみやファッションではないから、「かわいい」とか「流行ってるから」だけでは一緒に暮らせません。

「命」だということを理解して、迎え入れてください。

そして、すでに動物と一緒に暮らしている方へ。

一緒にいられる時間は思っているより短いです。

どうか後悔の無いよう、思う存分一緒にいる時間を楽しんでください。

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