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数字の幻惑

数字が苦手だ。
どのくらい苦手かというと、高校は自称進学校の特別進学クラスだったにも関わらず数学のテストで0点を採ったことがあるくらい。
しかも、ふざけて受けたわけではなく、しっかり全解答欄を埋めての全力0点である。
あまりの珍しさに隣のクラスからも0点答案用紙を一目見ようと人が押し寄せて、私の机の前に列ができたほどだ。
今でも友人に「あの時は他人事ながら恥ずかしかった。なんでか皆に写メ撮られて誇らしげなのも謎だった」と言われる。恥ずかしい友人でごめん。

そんなだから、私にとってオンラインショッピングはかなりハードルが高い。
ワンピースやスカートの丈がつんつるてんであまりの似合わなさに驚いたことも一度や二度じゃない。
サイズが事細かに記載されているというのに、それが大体どのくらいの丈感なのかリアルに想像ができないのだ。
流石に服に関しては失敗を重ねすぎて、ワンピースの着丈は120〜132センチまで、スカート丈は90〜95センチまでがベストだと学び、今はほぼ間違えることも無くなった。

ただ、インテリアアイテムはそうはいかない。
形もサイズもあまり規格というものはないし、長さだけでなく奥行きも見なければならず、間違えると服よりもさらに酷いことになる。

フランスアンティークの棚を買った。
アールデコ調の木製で、風合いがそれはそれは素敵な棚だ。
雑誌や服なんかを陳列するのにぴったりなサイズ。
アイアンフレームのベット脇におけば、木とアイアンのコントラストが最高だと思った。
そう、私の頭の中では、そうだった。
実際はまさかの卓上サイズで、雑誌も服も入らない。
届いた時から、やけに箱が小さいと思ったんだ。

花瓶を買った。
両サイドに取っ手がついていて、コーラルピンクとターコイズグリーンで描かれた花がフレンチポップで可愛くて、一目惚れだった。
スタバのベンティくらいのサイズ感だと思った。
花を5〜6本飾ったら、きっと可愛い。
届いた箱を見て驚いた。
ウォーターサーバーのボトルくらいでかい。
呆然とした。
商品到着に合わせて買っておいた花束を生けてみる。
花たちがそっぽを向き、重力に流されて思い思いの方向にしなだれる。
解散寸前のバンドの楽屋風景のようだ。しっかり顔を突き合わせて話し合った方がいい。

こんなのは一例で、これまでにサイズ感を間違えなかったことの方が少ないと思う。
友人たちはいつも「いい加減、ちゃんとサイズ測れって」と呆れるのだが、測っている。
メジャーを出して、うんうん、大体このくらいかって、シミレーションして、この有様なのだ。

「測ってない方がまだよかった」という友人たちの悲しい顔を、後何回見ればいいのだろう。

数字は裏切らないというけれど、私はずっと数字を裏切り続けている。




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