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自己肯定感の育て方
仕事中だというのに兄から電話が来て、何かあったのかと慌てて出てみればテレビ電話。
「何」と要件を尋ねる私の口元に光る歯列矯正ゴムを見て「うわ!!なんかついてるやん!!」と騒ぐ兄。
エフェクトでぼかされた背景から突然現れる父と母。
「なんか最近音沙汰ないからみんな騒ついてんねん」と兄が言い、なぜか無言のままの父と母がこちらを見つめてくる。
「仕事中やし切るよ」と電話を切ろうとすると、「最近一番困ったことは?」と兄。
思わず考える。まあ、ないことはないけれど、家族に言うようなことでもない。
強いて言うなら己のあまりの自己肯定感の低さだろうか、と思った。
自己肯定感というのは「自分をどれだけ好きか」だと思われがちだが、実際は「自分の能力や行動に対する信頼度」のことなのだそうだ。
そしてどうやら、私は自分を全く信頼していないらしい。
最近自分にとってはかなりハードルの高い事柄に立て続けに挑戦しているものだから、「お前なんかにできるはずない」と見知らぬ誰かに言われる夢ばかり見る。
恐らくその見知らぬ誰かは私自身であり、物語のオチとしてはあまりにチープだなと思う。
私が「え〜…特にないかなあ」と答えると、つまらなさそうに「え〜」と兄が言うので、「じゃあね」と終話ボタンを押した。
『便りの無いのは良い便り』。
そのくらいのつもりだったが、どうやら心配させているらしい。
週末、出先で撮ってもらった自分の写真があまりに良い笑顔だったので、「元気ですよ」と伝えるために母にLINEで送ることにした。
母からの返信はすぐだった。
スマホ画面に「これ可愛いからさ、iPadの壁紙にした」と通知が表示されている。
なんと親バカな!!32歳にもなる娘の写真を可愛いからと待受にするなんて!!
いたたまれない気持ちになってアプリを開く。
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自分の写真かい!!と心の中で盛大に突っ込むと同時に、母の自己肯定感の高さに恐れ慄く。
『62歳なのにまだ背伸びして欲しいもの取ろうとしてる貪欲な母』。
母は自分なら手が届くと確信しているのだろう。
そして私も、母なら手が届いてしまうんだろうな、と思う。
到底手が届かなさそうなものに何度も手を伸ばし、挫折し、それでも手を伸ばし続けた母だから。
きっと母は夢を見る。
見知らぬ誰かに「お前ならできる」と言われる夢。
そしてその身知らぬ誰かは母自身だ。
オチとしてはあまりにチープだろうか?
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