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過不足、なし。

内面も外見も、とにかくコンプレックスが多い。
特に外見に関しては、思春期の頃は鏡を見ては泣いていたほど。
だから、大学生になって友人から「アイプチ」や「メザイク」などの二重メイクを教えてもらった時は本当に「革命だ!!!」と思った。

最初のうちはうまく二重まぶたにならなかったり、アイプチの成分にかぶれてまぶたがパンパンに腫れ上がったりすることもあった。
それでも試行錯誤を繰り返していく中で、自分には「アイテープ」というテープタイプのアイテムが合っていることを知り、少しずつ二重メイクも上達。
それから12年、人と会う日は欠かさず二重メイクをし続けてきた。

それが突然、ここ最近になってメイクをしても綺麗な二重まぶたにならなくなってしまった。
目頭の方からうっすら剥がれてきて、アイテープが見えてしまう。
それならば、と剥がれやすい部分に糊タイプのアイプチをつけてみると、そこだけまぶたが引き攣ってなんとも不自然だ。


こうなったらもう、埋没手術をするか、一重界の頂点を目指して邁進するかの二択しかない。

埋没手術はお金がかかる。ある程度の年数が経つと糸が取れる可能性もあるし、永遠ではない。それに、必ず理想の二重になれるとは限らない。

一重界の頂点を目指すのも、非常に険しい道のりだ。
頂点は冨永愛。
二重か一重か以前に、あの身長、そして手足の長さ。
あのスタイルとオーラを前にして、まぶたに線が入っているかどうかなんて取るに足らないことだ。
このルートにはもちろん安藤サクラも存在する。
あのアンニュイで洒落た雰囲気はどうだ。
そもそも安藤サクラの手足も見てみろ。長すぎるだろ。

(※あくまで個人の見解です。そもそも2人とも奥二重かも)

悩んだ。そもそもどちらが良いか、という話ではない。
私が毎朝鏡を見て、泣くか泣かないか。そういう話である。
二重メイクがうまくいかなくなった今、剥がれかけのアイテープを見ては、鏡の前で「誰にも会いたくない。きっと皆私の顔を見て笑うんだ」そんな妄想まで湧いて出てくる。
悩みすぎて、一旦一重の状態でフルメイクをしてみることにした。
そもそも、一重でフルメイクをしたことなど人生で数回、12年前のことだ。
二重メイクを覚えてからは一重=すっぴんで、一重メイクの自分の顔など想像すらできない。

恐る恐るメイクをする。
まぶたにアイテープをするという工程を省略することが怖かった。

メイクが完成して、あれ、と思う。

目が小さい。まぶたが重い。
二重まぶたの時と違って、目に光が入らない。
目つきが悪い。

そう。それはそうなのだけれど…。

まじまじと鏡を見る。

まぶたが二重になっていない分、下まつ毛が際立って見える。
そのせいか、面長が少し緩和されているように思えた。

これ、なんと言うんだろう。
自分の中で言葉を探して、ひとつぴったりのものが見つかった。

「過不足なし」

そう、私の心に浮かんだのは、
「やっぱりこんな顔…」と言う嫌悪感でもなく、
「一重の私も可愛い!キャンメイクトーキョー!」と言う高揚感でもなく、
「うん、過不足なし」と言う「納得」だった。

当たり前なのだが、私の顔ってこんなだったなと思ったのだ。
それに、12年でメイクが上達したことや、歯列矯正を行ったこともあり、なんだか顔のバランスが取れている。

でも本当にそうだろうか?
だってあんなに嫌だった自分の顔なのだ。
12年経って急に受け入れられるようになるなんてことがあるだろうか。
そんな戸惑いを抱えたまま会社に行き、優しい上司のMさんの反応を伺う。

「言われてみれば確かに目は小さくなったね。いやでも…なんて言うんだろ…なんていうか…」

「過不足なし、ですか?」

「そう!過不足なし!!!!!!!!!」

上司のMさんは優しい。優しいからこそ、不要な嘘はつかないでいてくれる。
自信がないメイクをした時、「変じゃないですか?」と聞けば「ちょっと違和感あるかも」と教えてくれる人なのだ。

だから本当に、特に良くも悪くもないのだと思う。
その後、数人の友人に一重メイクで会った時も、「顔は変わるけど、雰囲気に合ってるから違和感が全くない」と言う反応だった。

一重メイクの私の顔は、特段綺麗じゃない。
でも、過不足なく、しっくりくる。

それがなんだか嬉しくて、鏡を見る回数が増えた。

それは「私の顔、おかしくないかな」と言う不安からではなく、
「なるほどね」と言う、なんともフラットな確認。

私はこれから、ありのままの一重で生きていこう。

そう決意し、二重メイクを辞めて1週間。

なぜか突然、メイクなしでも二重まぶたになる日が増えてきた。

こうなってくると、二重まぶたの自分が「過不足の『過』」のような気がしてくる。

あれだけ望んだ二重まぶた。

ランダムで変わる自分の顔を、今度はどうやって受け入れていこうか。

人生はままならない。

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