音楽学を志す人へ、大学で少し音楽学に触れた人より


後輩にアドバイスを求められて考えたこと。
意外と考える気かっけになって面白かったからメモします。


Q1 先輩は大学で何を学びましたか?

私がどんなことを大学で学んだかについて。
まず西洋音楽史、日本・東洋音楽史、音楽民族学、音楽美学を通論的に1,2年生で学び、3年生から自分の希望する先生のゼミに入り自身の研究したい分野の音楽を自主的に学びました。
(語学や副科のレッスン、ソルフェージュなど音楽の専門的な教育も受けました)システマティックに説明すると楽理はこんな感じです。


フィールドワーク(現地に直接伺って行う演習)がとても楽しく研究をするなら文献を読んで卒論を書く、と言うよりは研究したい音楽の発祥の地に行って実践的に学びたいと密かに思っていました。自分はスティールパン に関する卒論を書いて卒業したのですが、直接いって現地調査をしました。すごく楽しかった。笑 詳しくは前のノートで。


まとめ

大学で何を学んだのかについて。それは音楽学の基礎を概論的に取り入れ、それらの専門知識を生かし、自らの「問い」を打ち立て、その「問い」に対して自分なりの考えで、自分なりの言葉で解決していくことなのかなと思いました。


そして音楽学というのは決して4年間という短い期間で習得できるものではなく、これからずっと自分にまとわりついてくる不思議な存在となりました。でもこの学問に触れたおかげで今まで思いもしなかった新しい世界が見えるようになった気がします。


Q2.先輩にとっての音楽観について知りたい
難しい質問…!
端的にいうと音楽を職業にしている身なので音楽とは「生きるためにやること」でありとても大事なものであります。表面的には。


でもそれだけではありません。


3歳の頃からピアノを、9歳から作曲を学んできて舞台に出ることで得た確かな快感や、人々の反応から「音楽には力がある」と漠然と考えていました。しかし「どんな力があるのか」こう言った問いに関してはあまり深く考えてきませんでした。
なぜなら私を音楽に力があることを盲信していたからです。


「音楽は人を感動させる」「音楽は世界の共通言語である」


などその「どうしてそう言える?」と言うプロセスを無視して自分が体験したことを一般論と考えてその結果だけで音楽を捉えていました。
後々考えると音楽は人を感動させる力はあるがそれが万人共通ではないこと、一定のクオリティがある必要があったり、小さい子の決して上手とは言えない演奏に感動したりもするし…
音楽は世界の共通言語ではなくそれが言えるのは西洋音楽だけじゃないか。そもそもドレミなんて概念はある特定の文化でしか通用しないから。
「音楽」と言うのはとても広く深い海のような概念で学問として「音楽」と付き合っていくには相当な覚悟がいることを知りました。
この世の中には色んな考え方、価値観があり、海を越えると音楽を演奏することが禁止されていたり、長調の音楽は葬式に流れる曲だから明るい曲を聞くと悲しくなる民族がいたり、そもそも音楽という概念は存在せず私たちが毎日歯を磨くような当たり前で軽い行為のように音楽が生活の一部になっている民族がいたり。自分の尺度で音楽を語るなんて傲慢だよね。だから学問があるんだよね。大学があるんだよね。そう考えると大学めっちゃ楽しい。

「音楽」は人間について、歴史について、哲学について、社会について考えるきっかけをくれたものでもあると思います。こんだけじゃないし、考えたら膨大さに昼寝したくなる。


まとめづらいですが「音楽」は一生の問いになる!


私が受験する上で必読だと思う本を紹介します。
1.『キーワード150 音楽通論』久保田慶一著 2009 ARTES
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この本は音楽を専門的に学びたいと考えている人には是非読んで欲しいです。
キーワード別に書かれています。音楽を専門分野として学ぶには専門用語を用いてよりコミュニケーションを円滑にする必要があると思うので。
(しかしICUは英語だからまた違った能力が必要になるかもしれない…)

2.『芸術学[改訂版]』 渡辺護著
「芸術とは何か」という問いから「芸術の概念」、「どこからが作品なの?」「美しい料理ってあるよね?あれって芸術作品と言う場合あるよね、その場合作品って何?」「芸術の感動ってどこからくるの?」「芸術作品の自律性、他律性」
など音楽に限らず芸術全般について書かれている名著です。
これを読むことで小論文の話題の幅が広がるかもしれません。
https://www.amazon.co.jp/%E8%8A%B8%E8%A1%93%E5%AD%A6-%E6%B8%A1%E8%BE%BA-%E8%AD%B7/dp/4130820818/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E8%8A%B8%E8%A1%93%E5%AD%A6+%E6%B8%A1%E8%BE%BA&qid=1595756916&s=books&sr=1-1

長くなりましたがこのご時世体調にはお気をつけてくださいね。

健闘を祈ります。


和久井沙良

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