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助詞の獲得にも、やっぱり社会性が大事

影の薄い助詞の話


幼児期の子どもの言葉の相談に、「助詞の使い方がおかしいんです」と来られる保護者は、たまにいます。

でも大抵は、助詞どころではなく、二語文の発話でもあまり出ていなかったり、落ち着きのなさが目立ったりで、先にそれらの対応を優先するから、助詞そのものの練習をする機会は、あまりなかったかな。

構文の練習をする段階の子どもでは、文字学習と一緒に、絵カードやプリントで課題を組むことがあるので、その時に助詞が登場する感じ。

とはいえ、課題はパターン学習なので、一定の練習を重ねれば、助詞を適切に選択できやすい。自発話で助詞をうまく取り扱えるようになるまでには、ちょっと時間は必要。絵本などで文をすらすら読めるころには、気にならなくなる。

そんな感じで、幼児の言語相談では影が薄い助詞の話題。

でも先日、学生さんへの授業で、教科書の助詞のところを読み合わせたら、めっちゃ共感&秀逸な文章が。

引用しますね

『よくわかる言語発達』ミネルヴァ書房より

“終助詞
終助詞は話し手が聞き手や出来事をどのように感じ受け止めているかを表すので、これによってコミュニケーションや対人関係、語用の発達状態を知ることができます。

同意や共感を得たいとき、共感的に話しかけたい時に使われる「ね」が最も早く出現していたことは、文法発達の最早期に共感的コミュニケーションを指向する姿勢が発達していることを示しています。

「ね」は話し手と聞き手の間に共感の回路を確保する働きをするため、共同注意や「心の理論」の発達と関係しています。

同じ終助詞でも、聞き手にとって未知な事柄を述べたり自分の考えを言い張るのに使われる「よ」、相手に依頼するときに使われる「て」は、「ね」より少し遅れて出現します。“ (綿巻 徹 氏)

うんうん。やっぱり教科書の文章って、美しいわ。

定型発達児の特徴

すぐに思い浮かぶのは1歳児の姿。まだ語彙数は少ないから、身振り手振り、表情などで一生懸命に「伝えて」くる。

「見て見て」攻撃も、多い時は10秒ごとにあるくらい。

幼児相手に話す、大人の言葉の語尾にはもれなく、「よ」、「ね」がついているから、一番最後に耳に残るこれらの模倣が盛ん。

そんななか、言葉はなくとも目と目を合わせてにっこり、「ね♪」の出現頻度が一番高いのは自然な流れ。

1歳児に、首をかしげる可愛い仕草と共に、「ねー♪」と見つめられたら、、、なんでも買ってあげたくなる(笑)

2歳児ともなると、二語文、三語文を操りながら、口調も大人そっくりに、「ね」も「よ」も余裕で使いこなしてくる。

人と、目の前のことを分かち合う。
相手が見ているものを、自分も見たい。
自分が見ているものを、相手にも知らせたい。
一緒に、気持ちを感じたい。
なんでも真似してみたい。
でもだんだん1人で練習したり挑戦したりしてみたい。
その成果を、人に報告したい。

そんな姿が、ますます次の発達段階を呼び込む。

では、学びにくいタイプ子は?


学びにくい、気付きにくい、タイプの子どもたちは、助詞の話だけではなくて、もっと土台のところから環境づくりが必要で。

自分の興味あることだけは伝えてくるけど、相手の返事は聞いてなかったり。
相手から呼びかけられても、自分のしたいことがあればスルーだったり。
身振り手振りがほとんど出なかったり。
チラ見はしても、摸倣することは少なかったり。
好きな歌やキャラクターのセリフはエンドレスで喋るけど、日常使う言葉は真似することがなかったり。

1、2歳児でこのような姿を見せる子どもは、たくさんいます。

なので、

子どもにとって、今ここで相手を必要とするような場面を作る仕掛けや、
ハイタッチで、手を合わせたり、
子どもの興味ある遊び方に寄せて、一旦遊んであげる

そんな工夫をしながら、土台作り。

遊び終わった頃に、一瞬でもきらりんと信頼の眼差しを寄せてくれた時には、「またおいでねー」と、おばあちゃん気分(笑)


子どもの育ちのどこを優先するか

大人が「(子どもの)ここを伸ばしたい」と思うところと、
子ども自身が今、一番伸びるところは、ずれることがあるから。

「この時期には、これを優先することお勧めしたいな」
子どもに関わる仕事をしている人なら、おそらく大抵は感じるところがあります。

だから、迷ったらぜひ聞いてほしい。


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